表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

07:『パイルバンカー!三点バースト!!』

 

 翌日、僕がどんな顔をしていたかは知らない。

 トウキだけでなく、マリルもケインもニヤ付いていたのでエアパイルバンカーを打ち込んでやった。


 ちなみに、エアパイルバンカーとは装着してない状態で空気を打ち出す技のことで、多分普通に殴るくらいの力はあると思う。


 街の移動を決めてからは早かった。

 無理に依頼を受ける事もせずに幾人かの知り合いに挨拶をして、出発の準備を。

 僕の場合、知り合いもナニルさんとギルドの職員、宿の女将さんくらいしか居ないのであっという間だ。

 それに、ナニルさんが王都へ向かう馬車に同乗させてくれる事になったので準備もほとんどない。護衛を兼ねてだけど、王都に近づけば近づく程安全らしいので乗っているだけでいいらしい。


 変わった事といえば、シェスタが僕の後ろにくっ付く事が多くなった事。

 たまに服の裾を摘んでいる。


 可愛い・・・。



 ニヤ付いていたトウキとマリルには、再びのエアパイルバンカーをお見舞いしてやったぜ。





 そんな訳で、旅路は順調。

 強いて言えば慣れない馬車にお尻が痛むくらい。

 明日にはトウキ達の村に着く。そこで一晩泊まったらマリル達とはお別れである。


 村へ向かう分かれ道に差し掛かった頃に異変が起きた。

 

 「黒い影?」


 築いたのは最後尾にいたマルス。


 「なに?」

 「竜だ!」 

 

 マルスの声で皆の動きが止まった。


 「なんでこんな所に?」

 「皆、隠れろ。」

 「こっちに近寄って来ているのか?」

 「王都へ向かっているのかもしれん。」

 「静かに!」


 ごちゃごちゃ言っていたのがトウキの言葉で静かになった。

 

 「通り過ぎてくれれば良いが・・・。」

 「高度が落ちて来ている。」

 

 トウキの願いはマルスの言葉で叶えられないだろうと予想がついた。

 こちらに用が無ければ高度を落とす必要など無いのだから。


 「腕慣らしである!」


 訳のわからんことを言って竜が火を吐いた。


 「くっ。シールド!!」


 馬車を守るのはシェスタの魔法。

 

 「あまり保たない。」


 既にその顔は苦しそう。

 それもそのはずで、神官たるシェスタは回復に特化している分、防御や攻撃は苦手で魔力を余計に消費してしまう。


 「くそっ!」

 「ナニルさん達は別れて逃げろ。俺達は足止めだ!」

 「ケインとマリルは村へ走れ!」

 

 トウキの指示にマルスが追加する。


 「でも・・。」

 「飛んでいる敵を攻撃できないお前達じゃ役に立たない!」

 「くっ。マリル行くよ。」

 「だったらトウキも・・・。」 


 それでも渋るマリルを抱えてケインさんが馬に飛び乗る。

 トウキは逃げる気が無いようで、竜を睨みつけている。

 

 「カンイチも逃げていいよ。僕が時間を稼ぐから。」


 マルスとしては皆逃げてくれても良いのだろう。


 分散して逃げる事によって少しでも生存率を上げる。

 それがマルスとトウキの出した結論なんだと思う。

 そしてそれは竜に出会った時の普通の行動。

 今回彼等が逃げないのは注意を引く人間が必要だから。


 「逃げる者を追いはせぬ!生きたい者は逃げよ!死にたい者は向かって来い!」

 

 勝手なことを言う竜だ。


 「ただし、そこの女は置いていってもらうぞ。」


 竜が指し示すのはシェスタ。

 シールドで炎を防いだ事が何か琴線に触れたのだろう。


 「私に用?」


 こんな時でもシェスタの口調は変わらない。

 でも足は振るえている。


 「我が嫁になってもらおう!」

 「嫌。」


 ちらりとこちらを見るシェスタ。

 もう逃げられない。


 「おい。クソ竜。」

 「なんだ?チビ。」


 竜の巨体から見たら確かに僕達は小さいだろう。


 「一対一タイマンだ。シェスタは渡さん。」

 「ほう。お前の番か。」


 ニヤリと楽しそうに笑う竜。


 「良いだろう。お前が倒れるまでは誰にも手を出さないでいてやる。」


 強者の余裕か・・。

 絶対顔にぶち込んでやる!


 「ガァッ」


 再び炎を吐いて来たが、その動作は見切っている。


 「なっ。」

 「取り合えず地面へ落ちろ。」


 炎が届く距離まで高度を落としていたのが幸いした。

 息を吸ったのを見て炎を吐くと判断。

 あとは吐くのに合わせて飛び上がっただけ。

 普通なら届かない距離でも今の僕なら可能。ビックボアの戦闘から不思議には思っていたけれど、直線上の動きなら結構色んな事ができるらしい。ただし円を描く様な動きは駄目で、無理に曲がろうとしたら吹っ飛んだ・・。

 既に装着しておいた右手でそのでかい体を殴る。


ガインッ! 


 弾かれた様な音がしたけれど、それなりに威力はあったはず。

 その証拠に竜は高度を落としている。

 

 「なんだそれは。」

 「パイルバンカーだよ!」

 

 竜が地に着く前に飛び降りて迎え撃つ。


 「フンッ!」


 目の前に迫り来るのは竜の尻尾。

 向こうから近づいてくれるとはありがたい。


 「おりゃっ。」


 左手でも撃ちその威力を弱めると、右手で尻尾の先を持つ。


 「放せ!」

 「嫌だね。」


 尻尾を振り回すけどその先は僕に握られたままだ。

 そしてその僕も振り回される事は無く、地面に足を付いている。

 おそらくこれも新しい能力。

 把握している限り、夢に見たパイルバンカーを持ったユニットの能力に寄せてくれているらしい。


 一撃必殺の高威力。

 高機動による接敵。

 自身の威力に吹き飛ばされないだけの安定。

 敵を逃がさない強力なロック。

 そしてそれらを生かした近接からの連打。

 

 一度捕まったら地獄あるのみ。

 それが僕が理想としたパイルバンカーという兵器。


 一撃で竜の鱗を貫けないのは先程わかった。

 では連撃はどうだろう?


 右手で尻尾を持ったまま左手のパイルバンカーを尻尾へ向ける。


 「止めろ!」


 止める訳が無い。

  

 自分の中のスイッチを入れる。

 イメージはベレッタのモデルガン。


 「喰らえ!」


ドンッドンッドンッ。


 同一箇所に打ち出される不可視の杭。

 二撃目で鱗が剥がれ、三撃目で肉を穿った。


 「ギャァ。」


 叫んだのは一瞬。

 こちらに顔を向けて噛み付いて来る。自分の尻尾ごとでも良いから僕を噛み殺すつもりらしい。

 だけどそれは良い手ではない。

 パイルバンカーにその顔を近づけているという事なのだから。


 「グガァァ」


 その顔を地面に叩き付けてやった。

 彼がするべきだったのは、僕から離れて届かない距離からのブレスだろう。


 「さぁーて覚悟は良いな。」


 竜の鼻面を左手で固定する。

 右手のパイルバンカーを当てるのは額。


 「待って。待って。」

 「辞世の句でも読むのか?」

 「辞世の句?」


 わかってないようだけど、何か言いたい事があるのなら聞いてやろう。

 パイルバンカーはどけないけど。

 

 「さっさと言う事があるなら言った方が良いんじゃないか?」

 「えっと、助けてくれない?」

 「それで?」

 「初めて外に来たからちょっと調子にのちゃって・・。」


 ちょっと調子に乗ったからという理由で攻撃されてはたまらない。

 それにしてもこの竜の口調こんなだったっけ?


 「あのー。」

 「で?」

 「謝るので許してくれないかなと。」

 「ごめんで済むなら警察はいらない。」

 「警察?」


 これも通じないか。

 既に殺す気はなくなっているけれど、どうしようか・・・。


 「カンイチ。また来る!」


 悩んでいるとマルスが教えてくれる。

 上空には先程と同じ様な影。

 それも先程よりも大きい上に三つもある。


 「げっ。」


 助けを喜ぶ訳でもなく竜が逃げ出そうとする。


 「暴れるな。撃つぞ。」

 「でも・・。」


 そんなやり取りをしているうちに影はドンドンと大きくなる。


 「お待ち下さい。」


 降りて来る竜がそんな事を言って来る。

 もう殺る気はないって。


 三匹の竜は降りて来ると人形に変わった。

 

 (竜は人形に変わると鱗の色が髪色に反映されるみたいだな。)


 目の前に立つ赤、白、青の髪を持つ彼等を見てそんな感想を浮かべていた。

 それが話しを聞いていない様に映ったのだろうか。

 再び声をかけて来る。


 「我が国の民が御迷惑をおかけしました。どうか命ばかりはお助け願えないでしょうか。」

 「はぁ。」


 たぶん我が国の民って僕が掴んでいる竜だよね。

 この真ん中に立つ女性は竜の王様なのかな?

 

 「お願いします。」

 「殺す気はないのですけど。」

 「そうでしたか。」


 安心してくれた様だ。


 「少し痛い目にはあってもらおうと思いましたけど。」

 「そうですか・・。」


 なんか悲しそう。


 「まぁそちらで罰を与えてくれるなら任せますけど。」

 「えっ。」


 すっかり大人しくなった竜が嫌そうな顔をするけれど、僕に殴られるよりマシだと思うよ?

 それに同族には同族のルールがありそうだし。


 「あと、被害への賠償もお願いします。」

 「わかりました。」


 すんなりと了承してくれた。

 なら僕がこれ以上する事は無い。

 左手を放す。


 「ぐっ。」


 逃げ出そうとした竜が赤い髪の女性に押さえつけられた。


 「この馬鹿者が。」


ゴンッ。


 岩をぶつけた様な音がなった。

 すげー痛そうだ。竜、涙目だしね・・・。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ