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06:『パイルバンカーで遠距離攻撃はずっこいです。』

 午前中に魔法ギルドで属性を調べると、火と水に適性があるらしい。

 固有魔法を使う人は適正属性が無い場合も多いらしいので、僕は運が良いのだとか。


 まぁ使える様になるかどうかは別問題らしいけど・・・・。


 昼を屋台で済ますと、待ちの外へ。

 少しだけ離れてパイルバンカーを装着。

 昨日の続きだ。

 今回は撃つという事もしてみる。


 「大分時間がたったかな?」


 日が落ちて来た。

 今日は魔力操作以外に一つ判明した事がある。

 

 「最後に一発。」


 離れた木に向かってパイルバンカーを撃つ。


パンッ


 軽い音がして葉が舞い落ちる。

 これが新しい発見。撃つ時に空気に密着していると頭の中で意識することで、空気を撃つらしい。

 一撃必殺では無いけれど、何かの役には立つだろう。

 それに魔力操作も進んだと思う。

 初級魔法は無理だったけど、時間をかければパイルバンカーに魔力を追加する事ができた。恐らく威力の上がっている。恐らくなのは、普段の状態ですら木や土を貫通してしまうので比較しようが無い為である。


 宿に戻って風呂に入ると、今日は宿で夕食を食べる。

 部屋に戻ると魔力操作の続き。

 

 真面目でしょ?


 僕はパイルバンカーの為には勤勉になるのである。






 それから暫くはパイルバンカー研究に勤しみ、少し落ち着いた所で依頼を受けてみた。


 トウキ達と一緒に受けたのだけど、基本的にDランクの敵は僕の敵にならなかった。

 ただし、依頼成功とは別問題。

 獲物の発見がなかなかに難しい。好戦的な敵なら問題ないのだけど、逃げたり隠れたりする敵は苦手だ。採取依頼についてはほぼトウキ達頼みである。



コンコン


 宿に戻って風呂から上がると来客があった。 


 「どうぞ。」

 「少し良いか?」


 トウキである。


 「勿論。」


 その手に酒瓶とコップ。

 何か内密な話しだろうか?

 今日も一緒に依頼を受けて夕食も一緒だったのに、部屋に来るなんて話しは聞いていなかった。


コポコポコポ 

 

 グラスに注がれたのはワイン。こちらでは葡萄酒と呼ばれているけれど、まぁワインだ。

 他のお酒と比べて少し高いはず。


 「どうかした?」

 「おう・・。」


 グラスに口を付ける。

 暫く沈黙が続き、一杯目が空いた所でトウキが口を開いた。


 「冒険者を辞めようと思う。」

 「それはトウキが?」

 「ああ。それにケイン、マリル、マルスもな。」

 「シェスタ以外皆か。」

 「ケインとマリルは田舎に帰って結婚する。マルスも一緒に戻って狩人になるらしい。」

 「トウキは?」

 「俺は衛兵を目指そうと思う。」

 「騎士じゃなくて?」

 「騎士を目指すけど、まずは衛兵からになると思う。」

 「そうか。」

 「ああ・・・。」


 短い間とはいえ、一緒に依頼をこなして来た仲間が冒険者を辞めるというのは少し寂しい。


 「シェスタは知っているの?」

 「勿論。話したよ。それに元々ケインはいずれ村に帰る予定だったし、そうなるとマリルも一緒に帰ることは予想できた。マルスはマリルや俺達に付合って冒険者をしている様な物だったしな。シェスタも納得してくれたと思う。」

 「いつ帰るのかな?」

 「あと、二・三回は依頼をすると思う。本当はあの護衛以来で最後にする予定だったんだけど、カンイチと出会ったからな。」

 「それは悪い事をしたね。」


 僕の所為で結婚が延びてしまったのなら悪かった。


 「いや、最後にカンイチと会えて楽しかった。俺達だけでは倒せない敵を軽々と倒してしまうし、これがCランクパーティーの狩りなんだと感じたよ。」

 「Cランク?」

 「気付いていなかったのか?カンイチのおかげで俺達Cランクに上がったんだ。最近の敵はCランクだぞ。」

 「気にしてなかったわ。」

 「まぁ出会えば全て一撃だしカンイチには変わらないか。」

 「その出会うのが僕には難しいのだけどね・・・。」

 「贅沢な悩みだな。でも一緒に依頼をこなしたから、結構金も溜まった。特に結婚する二人は喜んでいたぞ。」

 「それなら良かったかな?」


 マリル達にもメリットがあったなら気にしないでおこう。


 「それでカンイチはどうする。」

 

 僕の心配までしてくれるトウキは優しい。

 一緒に依頼を受けているとはいえ、同じパーティーではないのだから勝手に解散しても問題は無いだろうに・・。


 「そうだなぁ・・・。」


 トウキが入れてくれたワインを口にして少し考える。

 窓から見える空には月が二つ。


 「他の街に行ってみようかな。色々と見て回るのも良いかもしれない。お金はあるしね。」


 月が二つ在る様な世界。

 見た事無い物も多いだろう。


 「それにどれだけ固い物を貫けるか試してみたくもあるね。」

 「はは。それは俺も興味が在るな。鉄板すらも貫くもんなカンイチの魔法は。」

 「ゴーレムとか竜とか何処に居るんだろう?」

 「ゴーレムはダンジョンだな。竜は西の大陸。ただし討伐対象についてはランクBからじゃないと情報を貰えない。」

 「そっか。ならゴーレムが居るダンジョンを探しつつ、ランク上げが当面の目標かな。」

 「なら、俺と一緒に王都へ行かないか?」

 「王都ってユリアス王都だっけ?」


 確か、ここから北へ向かっていくつかの街を越えると着くはずだ。


 「そうだ。今度、王都で武闘大会が開かれる。まぁ毎年行われているのだが、ここでいい成績を残すと騎士への道が開ける場合もある。それに優勝するとAランク相当の扱いになるし、予選通過でも衛兵採用試験免除とかの特典がある。」

 「トウキはそれに出るつもりだと。」 

 「ああ。それに俺等の村もここから北へ向かう街道沿いにある。」

 「ならもう暫く一緒に居させてもらおうかな。」

 「皆も喜ぶだろう。」

 「そうかな?」

 「カンイチが思っているより俺達はカンイチの事が気に入っているのさ。」


 良い顔で笑ってそんな事を言いやがった。


 照れるじゃないか・・。



 「あと、シェスタの事も頼むぞ。」

 「シェスタ?」

 「彼女は冒険者を続ける。一緒に連れて行ってくれるだろ?」

 「まぁ良いけど、本人シェスタがそう言ったの?」


 回復できる神官は数が少ないので引く手が多い。

 その上、美少女といったら何処でも入れそうな気がする。パーティーを組んでいる今ですら勧誘があるみたいだし・・。


 「聞かなくてもわかる。」

 

 皆、幼なじみだしそんなこともあるのか。


 「シェスタはカンイチに惚れているからな。」


ブッ


 ワインがこぼれた。


 「汚ねぇな。気付いていなかったのか?」

 「気付くか!」


 シェスタは相変わらず無口だ。

 変わった事と言えばたまーに話しをするくらい。


 「彼奴アイツから話しかけるなんて、俺等にもほとんどないんだぞ。」

 「知らないよ。」

 「俺等は気付いた上で知らない振りをしているんだと思ったが、その様子じゃ脈有りだな。」


 ニヤリと笑うその顔はさっきよりも生き生きとしている。


 「顔真っ赤だぞ。」

 「くっ・・・・。」


 パイルバンカーをその顔に撃ち込んでやりたい。


 「おっと。残りは飲んでくれて構わない。ゆっくりと考えてくれ。」

 「ありがとよ。」

 「ぷぷ。」


 絶対、明日ぶん殴ってやる。



 ああ・・。



 どんな顔してシェスタに会おう・・・。










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