05:『パルバンカーは固有魔法です。』
ドゴンッ
用意された木の板に穴が開く。
ガキンッ
鉄の板にも穴が開いた。
ガキンッ
二枚重なった・・・・。
「もう結構です。」
「わかりました。」
パイルバンカーを消す。
クライブ家での宴の翌日、僕は魔法ギルドに来ていた。
固有魔法の情報を売る為だ。
ナニルさんからお礼とビックボアの買い取りのお金をもらったので、お金に困って居ないのだけど、今後もパイルバンカーを使って行くつもりだし、隠す事は無いので売りに来たのだ。
魔法ギルドで把握している魔法にパイルバンカーは無く、こうして発動を見せている。
「威力はB+以上ですね。ここではこれ以上の評価はできません。」
なんでも鉄以上の金属は用意してないらしい。
「固有魔法『パイルバンカー』。直接攻撃若しくは武器具現化系の魔法。威力はB+オーバー。消費魔力は不明。発現者、カンイチ ハチヤ。発現は生まれたときから。以上間違いは無いですか。」
「はい。」
正確には生まれ変わったときからなのかもしれないけれど、今は説明できない。
「ご協力ありがとうございます。受付にこちらの紙を渡していただければ報酬をお渡し致します。」
「わかりました。」
計測していた女性と別れて入って来た方へと戻る。
彼女達はまだ用事があるらしい。
「どうぞ。」
受付で渡されたのは金貨二枚と緑のカード。
ビックボアの買い取りが金貨二枚だったので、多いのか少ないのかよくわからない。
さっき買った串焼きが一本100セルだったから、串焼き2,000本か。多いな。
緑のカードは冒険者カードを受付に渡していたもの。
なんでも魔法ギルドのカードと統合してくれたらしい。
魔法ギルドの登録料は無し。ただし、魔法の発現ができる事が条件で、ランクはSからDまでの5段階。
研究や上位魔法の発現、研究成果の提供によりランクが上がるらしい。特典は情報公開範囲の拡大等。
僕のランクはC。
「すいません入門書みたいのありますか。」
「はい。入門書の場合販売もしています。閲覧でしたら二階の書庫へ、販売でしたらあちらの売店へどうぞ。」
「ありがとうございます。」
受付のお姉さんにお礼を言って、向かうのは売店。
まずは、魔力と魔法について知りたい。
パイルバンカーに魔力を込めると威力が上がるらしいので、他の魔法の訓練の前に魔力について知っておいた方が良いだろうとの判断からだ。
売店に居たおばちゃんにその旨を伝えると二冊の本を用意してくれた。
『魔法入門』と『魔力操作入門』である。
共に一冊銀貨1枚。この世界の本は値が張るらしい。
今回は金銭的に余裕があるので、両方購入しておくことにする。
「カードを出しな。」
先程受け取ったカードを出すと、お釣りをくれた。
どうやら会員割引が効くらしい。
お釣りは銅貨4枚。二割引か。
「まいど。」
「ありがとうございます。」
魔法ギルドを出て向かうのは宿。早速本を読むつもりだ。
宿はナニルさんの紹介してくれた『紅亭』。家に泊まっていて良いとも言ってくれたけど、さすがに申し訳ないので宿に移動した。
もっともナニルさんの紹介と言う事もあって割引してもらっている。ありがたい。
トウキ達曰く、普段トウキ達が泊まる宿と同じ値段でランクは二つ以上上らしい。
重ねて感謝。
ただ感謝。
「おかえりなさい。」
宿の女将さんとの会話もそこそこに部屋へと籠って本を読む。
まずは『魔法入門』から。
「ふむ。」
入門書だけあって読みやすかった。それに難しい事は書いていない。
まず基本となるのが属性と魔力操作。
属性は光・闇・火・水・風・土。これは個人の資質に因るらしい。調べるには感応石という物が必要だけど、魔法ギルドにお金を払えば使わせてもらえるとのことなので明日もう一度ギルドに行こう。
続いて『魔力操作入門』にかかる。
ちなみに『インストール』と言ってみたけど、頭の中に入って来る事は無かった。あの本だけの特別な魔法だったみたいだ。
まず魔法を使う為には魔力を操作できなければいけない。
多かれ少なかれ、人は皆魔力をもって生まれて来るらしい。そこで自己の内部に眠っている魔力を感じ、それを操る事ができる様になるのが魔法使いへの第一歩。その一歩を踏み出す為の方法にはいくつかあり、瞑想をする、一人前の魔法使いに体内に魔力を流してもらう、感応石もち魔力を流す等。
感応石は微量ながら魔力を吸い取る性質があるらしいのでその際に生じる魔力の流れを利用するようだ。
とりあえず一人でできる方法をということで瞑想をしてみる。
僕の瞑想のイメージは滝に打たれるか座禅。
今回は座禅を組む。その上でパイルバンカーの装着を繰り返す。
魔力を使用しているはずなので、装着の度に変化があると考えた為だ。撃てば更に使うのかもしれないけれど、宿を破壊したく無いので自重している。
暗くなるまで繰り返す事により少し感じる事ができたと思う。
なんとなく温い粘液が体の中を漂っている気がするのだ。感じ方は人それぞれらしいので正しいかどうかはわからないが・・・。
コンコン
「はい。」
「カンイチさん一緒に夕食でもどうですか。」
もうそんな時間か。
「今行きます。」
「下で待っていますね。」
宿の一階にはトウキ達が揃っていた。
彼等は同じ宿に泊まっていないのでわざわざ来てくれたのだろう。
宿で食事をとる事もできるけれど、今夜は彼等のオススメのお店へ。
『味所:ろくでなし』
そんな看板がかけられたそのお店は活気に満ちていた。
「冒険者の店って感じだろ?」
「うん。凄いね。」
食器の音と会話と怒鳴り声とと凄い。
「いらっしゃい。」
「ビールとツマミを適当に。」
「あいよ。」
開いている席に座ると早速注文を取りに来てくれた。
注文はトウキ任せだ。
「お待たせ。」
全然待っていない。
人数分のジョッキとサラダ、煮込み料理がテーブルに置かれた。
「では、乾杯。」
「「「乾杯。」」」
冷えたビールが美味い。
肉の煮込みもトロトロだ。
「安くて味が良くて量が多い。」
「低ランク冒険者御用達のお店だよ。」
皆がドンドン飲む中シェスタだけはちびちびと飲んでいる。
ビールがあまり好きではないのかな?
こっそりミルクを頼んでおいてシェスタのジョッキと交換する。
「ありがとう。」
皆の手前言い出しにくかったらしい。
皆の飲むペースは中々早い。食べるペースも。
話しも尽きる事が無い。特に武器や防具の店の話しは助かるし、依頼についての失敗なんかも為になる。
二時間も過ごすとケインとマリルが大分怪しくなって来た。
「そろそろ帰るか。」
「「えーーー。」」
酔っぱらい二人の意見は無視して会計を済ます。
トウキとマルスは苦笑い。
いつもこうなるのだと。
酒場からでると喧噪から出た為か、妙に静かに感じて少し寂しい。
「祭りの後の静けさか・・。」
独り宿へと向かう。
ドンドンと喧噪が離れて行く。
(月が綺麗だな・・・。)
二つの月が夜空に浮かんでいた。




