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03:『僕のパイルバンカー』

 再び意識を取り戻したのは清らかな泉の横。


 どうやら森の中の様だ。

 泉には小さな祠が有り、そこに来る人が居るのか、踏み固め垂れた道が続いている。

 そちらに向かえば人も居るだろう。


 周りの確認をしていると一冊の本が目の前に現れた。

 驚きながらも手に取ってみると、宙に浮いていた本は重みを持って僕の手に収まった。


 「女神指南書?」


 それが本のタイトルだ。

 近くにあった木に寄りかかって本を開く。

 まず飛び込んで来たのは手書きと思われるきれいな字。


 『蜂谷はちや貫一かんいち君へ。

 この本は違う世界に渡った人達に送っている物です。

 貴方の力になってくれると思います。読んで下さい。

                     水の女神』

 

 その後から印刷された様な文字が続いた。

 読み終わって幾つか判った事がある。

 まず、この世界はミールと呼ばれている事。

 世界は丸く無く、平面であり、端は水と共に下に落ちていくと言う事。

 魔物が存在する事。

 魔法が存在する事。

 魔法とは魔力を使ってイメージを具現化する事。

 僕は魔法が使えないであろう事。

 その代わりにパイルバンカーの力を得た事。

 それは固有魔法に分類される事。

 そして、この本は読まなくても良かったと言う事。


 「インストール。」


 本を両手に挟んで最後に書かれていた単語を発する。

 光の粒子へと変わる本。

 その粒子は僕の体へと取り込まれて行く。

 外面に変化は無く、変化は僕の頭の中。

 本に書かれていた知識が頭の中にある。

 さらには、こちらの言語がわかる様になるおまけ付きらしい。


 始めに書いておいて欲しかった・・・。


 気を取り直して、自分の固有魔法に付いて知っておく事にする。

 本にも書いてあったし。


 座ったまま拳を地面に当てる。

 イメージは試作機のレバーを引く動作。


 ドンッ。


 拳大の穴が地面に開いた。


 次に立ち上がって単語を唱える。

 

 「右手装着。」


 右手の外側に現れたのは正しくパイルバンカー。

 色は無く、透明、3Dに書かれた絵の様に見えるけれど、腕を振ってもそこに付いて来る。


 「ふふふ。」


 嬉しくて笑いがこぼれた。

 今度は木にその先端を当てて発射する。


 ガコンッ。


 木に穴が開いた。

 今度の穴は頭くらいの大きさがある。威力もこちらの方が上なのだろう。

 反動で飛ばされる事も無い。どうやら地面を踏みしめていれば大丈夫らしい。

 ジャンプしながらだと怪しいけれど、怪我をしたく無いので試してみる事はしない。


 拳の場合は密着。装着状態だと杭の届く範囲が有効攻撃範囲となるらしい。

 それに嬉しい事に連打可能だ。


 「ぐふふふ。」


 固いものにぶち当ててみたい物だ。


 と、言ってもここで自然破壊をするつもりは無い。

 この泉は聖域と呼ばれる場所らしいので、破壊するのは申し訳ない気がする。

 それに、魔物なんかが現れる事が無いらしいけど、水の中にも生物は存在せずに食べ物が無いので、移動しなければいけないだろう。


 踏み固められた道を行く事30分程。ようやく開けた場所へ出た。

 目の前には街道があるし、遠目に街の存在も確認できる。


 前方には馬車が二台連なって動いている。

 その馬車に続く様に移動していると、視界の端で動く物があった。

 それは森から飛び出しており、幾つも続いている。


 「猪?」


 猪と呼ぶにはあまりに巨大なソレはまるで乙◯主様おっことぬし

 五匹のそれは馬車に体当たりして転がすと、今度は周囲を走りながら護衛と思われる人達に突撃して行く。

 さすがに直撃を避けているけど、擦っただけで結構ダメージを食らっている様だ。

 人影は徐々に一カ所に固まり始めた。どうやら一台に皆で集って守るらしい。

 その様子を尻目に、もう一台の馬車に頭を突っ込んで何かを貪って居る乙◯主様おっことぬし

 

 (チャンスだ。)


 そう思った時には既に駆け出していた。

 駆ける速度は今までの僕の早さでは無い。

 まるで新幹線。地面を蹴っている感覚すらない。

 あっという間に一匹の乙◯主様おっことぬしの元へと辿り着くと、間髪入れずに撃つ。既にパイルバンカーは装着済みだ。


 飛び散る血と肉、それに脳漿。


 気持ち悪い。

 けれどもそれどころではない。

 仲間がやられたと見て他の4匹がこちらを向く。

 

 間髪入れず一番近くの敵に近づき、撃つ。


 「ぶぎぃぃ。」


 断末魔は猪のそれだ。

 その様子を見て残りの3匹は森へと走って行った。

 逃げられたけど、まぁいい。殲滅したかった訳じゃないし。


 「ふぅ。」


 魔法を解くと一人の男が近寄って来た。

 犬耳である。

 獣人というやつかな?


 「助かったよ。俺は冒険者のトウキ。一応この馬車の護衛だったんだが、役に立てなかった。」

 「いえ、トウキさんの指示が無かったら皆命を散らしていたかもしれません。助かりましたよ。」


 トウキさんの後ろから近づいて来たのは少しふっくらした男性。


 「私はこの馬車の持ち主、ナニル・クライブです。この度は助けていただきありがとうございました。お礼をしたい所ですが、まずは移動致しましょう。」

 「そうだな。仲間を連れて戻って来られると面倒だ。」


 僕の異論は無い。

 散らばった荷物を集めるのを手伝う。幸い馬車を引く二匹の鳥は怪我をしていなかったので、出発することができるだろう。


 この鳥はコボックと言い、大きな体と強い脚力を持ち御するのも簡単な反面、大人しく戦闘の役には立たないし魔物に対する威嚇にもならないらしい。

 トウキさんが教えてくれた。

 それと襲って来た乙◯主様おっことぬしの名前はビッグボア。その名の通り、大きな猪で魔物ではない。肉は美味しいらしいので、駄目になった荷物の代わりに積んで行く事になった。

 ちなみに駄目になった物は主に酒。

 ビックボアは酒を狙って来たのだろうというのがトウキさんの予想だ。


 お礼云々は街に着いてからということになり、僕も馬車に乗せてもらっている。

 その中でお互いに自己紹介をした。


 まず馬車の持ち主であり、クライブ商店の次期代表だというナニルさん。親父さんが現代表で、この仕入れが上手くいったら代表になる予定だったのだとか。

 それと商店の従業員が三人。

 護衛はいずれも冒険者でリーダーがトウキ。槍使いがケイン。二斧使いがマリル。弓使いがマルス。最後に神官のシェスタ。マリルとマルスは姉弟らしい。彼等のパーティー名が『光の共』。幼なじみだったシェスタに光魔法の才能がある事が判明して、皆でパーティーを組んだので、この名前になったのだとか。

 ちなみにトウキとマルスにも魔法の才能が有り、火と風らしいけど戦闘の約に立つ程ではないんだとか。


 主に皆の話しを聞いているうちに街へと着いた。

 門番に皆がカードを差し出す。

 これは各ギルドが発行している物で一種の身分証明になるが、僕は持っていない。

 だからといって入れない事は無く、預かり金を払い証明書を出してもらえば入る事ができる。さらに冒険者等に登録した後に戻ってくればお金も返してくれるらしい。

 もちろんお金も持っていないけど、ナニルさんが払ってくれたのでスムーズに入る事ができた。

 馬車の中で僕の事を聞かれた時に、田舎から冒険者になろうと出て来たのだけど人と話しているうちにいつの間にか記憶を失い、気付いたら泉で倒れていたと話したので、ナニルさんがお金を払ってくれる事になっていたのだ。


 良く信じてくれたよね。

 恩人補正でも入って好意的に解釈してくれたのかな・・・?






 

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