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20:『パイルバンカーぼっち』

遅れてしまいました。申し訳ない。

 「おーきーてーーーーーーーー」

 「カンイチーーーーー」

 「ほら安静にさせてあげなさい。」


 遠くで声がする。


 そう思ったのも束の間。


 「起きるから静かにしてくれ。」


 頭に響く声に顔をしかめながら体を起こす。


 「カンイチーーーー!!!」


 起きると同時に体に衝撃が走った。


 「まったく。大丈夫だとは思うけど安静にしておいた方が良いのよ。二人共離れなさい。カンイチがまた倒れちゃうかもしれないわよ。」


 矢胤さんの言葉でセイカと玄斗の二人が離れてくれた。

 僕が場所は玄斗の頭の上に建てられた家。既に三ヶ月程過ごしているので見慣れた物だ。


 「ここに居るってことは矢胤さんが運んでくれたのかな?それに怪我もしてない様だし・・。」


 軽く体を動かしてみるけれど、岩が直撃した様には思えない。


 「そうね。あの一撃で万州は倒れたわ。だけどカンイチは限界以上に魔力を使った為に魔力が枯渇して意識を失ったの。崩れ行く山の隙間を抜ってカンイチを拾ったのだけど、よく怪我無く連れ出せたと我ながら感心するわ。」

 「それはありがとうございます。」

 「良いのよ。私も無理させちゃったし。」

 「僕の状況はわかったのですけど、皆はどうなりました?」


 万州が逃げ出し、僕がそれを討ったという事は最大の脅威は無くなったはずだけど、神兵として侵入した敵は残っている。


 「みんなゲンキだよ。」

 「そうなの?」


 セイカの言葉を信用しない訳ではないけれど、セイカの言うみんなは知っている人だけな気がする・・。


 「そうですね。思っていたよりも被害は少ないです。順に説明しましょうか?」

 「お願いします。」


 ユミールさんの言葉に甘えて説明してもらう。

 玄斗と同じ存在であるユミールさんは、補佐という立場もあって世界に住む人達の把握はお手の物だ。今回の事を説明してもらうのにこれ以上の適任はいないと思う。


 「まずこちらに侵入した5名ですが、全て討ち取る事が出来ました。内訳は大和の国の精鋭で一名。竜達が二名。獣王が一名。ユリアス王国の信綱殿が一名。獣王と信綱殿は精鋭に逃がさない様に包囲させ、一騎打ちで討ち取りました。聖竜国で戦果が無かったのは侵入時にバラケナイ二人組があった為です。こちらは夫婦の様でしたが、竜達による一斉攻撃の前に倒れました。」

 「そうすると被害は?」

 「被害は死者が大和の国と獣王国で5名。怪我人はいずれも治る見込みです。また、一部土地が毒されたのですけど今回の勝利で玄斗がヨルムの『毒』を得たので治す事も出来るでしょう。」

 「うん。少しずつだけど治し始めてる。」


 既に玄斗は新たな力を使えるのか・・・・。


 「その玄斗の世界ですが、新たに四つの大陸を生み出す事が出来ます。」

 「四つ?三つかと思ってた。」

 「はい四つです。カンイチの考える通り、吸収した相手の数だけ陸地を増やす事が出来、それに比例して世界と玄斗が大きくなります。まず万州が逃げ出す時に分離したユミルとトールの陸地は作成済みです。」

 「それに私と万州の文が追加されるわ。」

 「矢胤さんがですか?」

 「ええ。毒も中々治らないし、万州をカンイチが倒した時に私が魔力を与えた所為か万州の力が私の所にあるの。玄斗は私の物にして良いと言ってくれたけど、どうも使うと飛ぶ事が出来なくなりそうなのよね。それに同意だったらユミールちゃんの様に意識を生み出せるから。あと、大陸の一つは私の世界の住人達の楽園にするのよ。」

 「万州を討ったカンイチには申し訳ないのですが、これは略決まった事と思って下さい。」 

 「うん。全然構わないよ。」


 世界を作る力をどうこうするつもり無いし出来る気もしない。


 「そのかわりに私の大陸にも入れる様にしてあげるわ。」

 「ありがとうございます?」


 なんでも矢胤さんが管理する大陸は空に浮かぶらしく、最初のうちは人間の立ち入りを基本的に認めないらしい。そしてそこに住むのは所謂精霊と呼ばれるモノ達。よくわからないけれど、僕が望めば精霊が大陸に連れて行ってくれるのだとか。

 万州の世界に住んでいた人達は、こちらの世界に居る人と大きく変わる事はないので混乱は起きないだろうとのことだ。唯一、毒を代表とする闇に特化した種族がいるけれどこちらは魔族として一つの国にまとめる予定。

 また、世界の統合による混乱はあまり無い様だ。竜達は以前起こった統合を知っているし、今回は同意による吸収ではなく戦いによる吸収な為、向こうの世界をこちらに合わせるという形となるからなのだとか。よくわからないけどそうする事により、こちらの理は変わらず、向こうの理が変わるのだと。ユミールさんが詳しく説明してくれたけれど、やっぱり良くわからない。まぁ問題がないなら良いか・・・。


 「最後にカンイチの事に付いて説明します。」

 「僕の事?」

 「はい。今回の戦いでカンイチは矢胤の魔力を得、万州を倒しましたね?」

 「そういうことになるのかな?」

 「カンイチは玄斗の世界に属します。」

 「うん。」


 元は地球だけど、今は玄斗の世界だろう。

 これは能力パイルバンカーが使える事でも納得できる。


 「カンイチが万州を倒した時、既にトールとユミルを玄斗は吸収していました。」

 「こちらの回復の為にも必要だったから急いだんだよね・・・。」 


 何が言いたいのだろう?


 「ユミルの『毒』という特性の吸収は新しい魔法の概念と種族の獲得でしたが、トールの『吸収』場合にはレベルと言う概念が生まれました。」

 「あー。」


 何となくわかった。


 「万州を倒してLvが上がったと?」

 「正解です。正確にはシステムエラーですが・・・。」

 「システムエラー・・・?」

 「ステータスと唱えてみて下さい。」

 『ステータス』


 目の前にA4程の半透明のウィンドが現れた。

 書いてある内容は・・・。


 =ステータス=

 ― 貫一・蜂谷 ―

 種族:人族(異世界人)Lv E

 年齢:24

 職業:大和国上級貴族,冒険者,

 スキル:『パイルバンカー』Lv10,『精霊魔術』Lv10,『剣術』Lv02,『体術』Lv06

 称号:『世界の守り手』『玄斗の友』『ユミールの友』『矢胤の友』『万州大陸の保有者』『精霊の友』『ダンジョンマスター』



 「種族の所にあるEってのがエラーなのかな?」

 

 他にも突っ込みどころはあるけれど、Eとなっているのはおかしいだろう。


 「はい。スキルの方に付いてはLv10が最大の様なので問題ないのですが、種族Lvの方に付いては経験値がパンクしたみたいです。そもそも世界を倒した場合のことを想定してないのでしょう・・・。」


 そりゃそうだろう。その生き物の基盤となるのが世界であり、それを壊した場合において、その生き物が生き残っているのがおかしい。


 「このLvE(エラー)はマイナスではなくプラス方向なので身体能力等の増加が凄い事になっていると思います。それと矢胤から過大な魔力を受けた事によって魔力の最大値もおかしい事になっています。ちなみに魔力の回復は万州が元になった大陸から供給される為、その速度も量もおかしいです。」

 「そう言われても・・・。」

 「万州を倒したあの一撃を何時でも軽く撃てる様になったと思ってくれれば結構です。」

 「え・・・・。気を付けます。」


 あの一撃は世界を壊す可能性があると思う。


 「是非ともそうして下さい。それと暫くはここで生活する事をお勧めします。」

 「えっ。帰ったら駄目なの?」


 家族にも会いたいし、色々と報告もした方が良いと思うのだが?


 「家族をその手で握りつぶしたくは無いでしょ?」 

 「そんなに・・・?」

 「おそらく。私達も初めての事なのでシステム上から手助けできないのでここに居る事をお勧めします。」 

 「わかりました。」

 「早く慣れる様にするから」


 連絡等もユミールさん達が請け負ってくれるというので、お言葉に甘える事にした。


 そしてユミールさんの懸念通りに水を飲もうとしたらグラスを割り、果物を食べるにも持つと破裂し、ベッドから立ち上がろうとしたら宙を飛び屋根を突き抜けた。勿論ベッドも破損済み。

 今の所壊さないで済んでいるのはロッキングチェアと竜酒が湧き出るコップだけ。おかげで竜酒以外は人に食べさせてもらう他ない。

 主に矢胤さんが世話焼いてくれるけど、玄斗やユミールさんも手があいている時は助けてくれる。

 ちなみにセイカは危うく尻尾を握りつぶしそうになって以来近づいて来ない。








 あれから約一半年。

 システムの統合と整理、そして力の加減を体に覚え込ませるのでなんだかんだで一年以上の時を過ごした。そこから寝ている間にも力を押さえられる様になるのに半年。

 三冬とシェスタはたまにサイカに連れられて来てくれる。子供は危ないので会えては居ないけど元気に育っているらしい。クリスティーナさんたちの報告では世界に大きな混乱は無いらしい。新しい大陸や住人についても大きな争いは起きていないそうだ。

 そもそもこの世界は人口に対して広いうえに、魔物等の明確な敵が居るので人同士で争う事は少ない。ゼロでもないけれど、世界が統合する前とそう変わってないらしいので大丈夫だろう。


 ちなみに能力も少し変わった。


 =ステータス=

 ― 貫一・蜂谷 ―

 種族:人族?(異世界人)Lv E

 年齢:25

 職業:大和国上級貴族,冒険者,

 スキル:『パイルバンカー』Lv10,『精霊魔術』Lv10,『剣術』Lv02,『体術』Lv06,『ステータス偽装』Lv10,『鑑定』Lv10,『世界魔法』Lv05,『魔力操作』Lv10,『封縛』Lv10

 称号:『世界の守り手』『玄斗の友』『ユミールの友』『矢胤の友』『万州大陸の保有者』『精霊の友』『ダンジョンマスター』『世界管理組合副議長』


 増えたスキルは、能力を押さえたりするのに役立っているものだ。『魔力操作』は自身に溢れる魔力を押さえる事をしているうちに覚えた。『封縛』は能力を下げることができる。

 『世界魔法』は大陸の管理に役立てる事が出来るらしいけれど、基本的にユミールさんと矢胤さんに任せているのであまり使ってない。あと、称号の『世界管理組合副議長』はそれに付随する物と考えてくれれば構わないらしい。

 他にもシステムが落ち着いた事によってゲームの様にSTRやらVITやら魔力(MP)やらが表示できる様になったけれど、基本的にE(エラー)が並ぶだけ。ちなみに魔力の値はEではなく「世界総魔力量1/6」と表示された。

 種族の疑問系は見ないことにした。

 もうどうにでもしてくれ・・・。


 『ステータス偽装』


 自分のおかしいステータスを偽装して準備は完了。

 ようやく皆のもとへと帰る事が出来る。


 「何時でも遊びに来てね。」

 「玄斗もな。」

 「あら玄斗だけですか。」

 「いえ。矢胤さんも勿論ユミールも来て下さい。」

 「考えておきます。」

 「それではお世話になりました。」

 「またねー。」


 三人に見送られて家を出る。

 迎えは居ないけれど特に問題は無い。


 『転移・大和の国封印の祠』


 言葉と共に視界が目まぐるしく変わり、見覚えのある景色に固定された。

 この転移は世界魔法の一種で、自分か感じる事の出来る力の元へと行くことが出来る。この信綱さんが封印されていた祠は、大和の国でも特に力が溢れている場所かつ普段は人が立ち入らない場所なので丁度良かった。

 そこからは身体能力を生かして池をひとっ飛び。足早に家へと向かう。


 「ただいまーーーー!!」


 家の中へ声をかけると幾つもの足音がこちらに向かって来た。


 「「「「「おかえりなさい!」」」」」



 人より遅れる事一年半。



 ようやく僕の中で世界防衛戦が終わったのである。





後一話の予定です。

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