18:『世界防衛パイルバンカー』
短いくて申し訳ないです。
三ヶ月。
文字にするとたった三文字の間に僕達がしたことはそれほど多くは無い。
多くは無いと言っても、世界を救うという目的の前にはと付くけど・・・・。
まず行ったのは世界の争いという物を理解してもらうという事。
これはサイカが呼んできたクリスティーナさんと信長さんに任せる形になった。国のトップに話した方が良い事だし、何処の誰ともわからぬ僕が説明するよりも良いと考えたからだ。もっとも時間が無いので世界を一つにまとめるなんて事はしないという方針だ。
その結果話しに応じてくれたのは、5国。これが多いか少ないかは意見が分かれる所だ。
竜王国、大和の国は君主である信長さんとクリスティーナさんのお父さんの竜王が直接玄斗から話しを聞いたので早かった。
他には竜王国・大和の国共に交流のあるユリアス王国。竜王国との繋がりが深い獣王国ゲイルカンデと聖竜国コストライス。
自由国家群の一部と冒険者ギルド・商業ギルドは完全な信用とはいかないまでも協力体制を敷いてくれている。
次に決めたのは敵の迎撃位置。
万州が5人の神兵を送り込んで来るのには訳がある。
目的は知的生命体の排除及び動植物の間引き。そうする事によって世界としての力が減り、玄斗を取り込みやすくなるんだとか。玄斗が言う所では結界や再生の力が弱まるため、万州の攻撃を喰らう様になるだろうとのことだ。
迎え撃つ数はこちらの方が多いので5人をなるべくバラバラにする。これは結界の綻びを5人それぞれに用意して誘導する。
一つは竜王国外縁部、荒野。一つは大和の国、僕達が制覇したダンジョン周辺。一つはユリアス王国、廃村。一つは獣王国、忘れられた森。一つは聖竜国、竜角岬。
いずれも人が住んではいないので暴れても問題が無いと判断した上に、街から物資を届ける事が出来る場所だ。竜王国の荒野だけは街から離れているけれど、そこに展開するのは竜達なので問題ない。
戦力としては竜王国は竜達。幼竜を除く全ての竜が参戦。彼等は各国に別れて迎撃に当る。
大和の国からは上級貴族及びその門下生達、一部冒険者ギルドから魔術師の派遣も有り。率いるのは信長さん。
ユリアス王国には滞在していた信綱さんと大会参加者、そして騎士及び王宮魔術師達。
獣王国は獣王率いる戦士達。彼等の身体能力と森魔法の組み合わせは凄いらしい。
聖竜国は竜騎士を中心とした飛行部隊と騎士団。勿論王宮魔術師達も含まれる。
各国の連絡は冒険者ギルドと竜達。また商業ギルドを通して自由都市国家群の一部から物資の支援がある。
相手が未知な存在でもある為、勝てるかどうかはわからない。また最大の問題は五人を分散せせる事が出来るかということだけど、それは玄斗に任せるしか無い。
矢胤さんからの報告では5人はそれぞれ競い合って力をつけたのであえて纏まる事は無いだろうとの事だった。もっともその情報を得る為に近づき過ぎた為、矢胤さんは攻撃をくらい玄斗の所で休んでいる。
竜達に乗って近づき魔法を撃つと言う提案もあったけれど、そもそも玄斗と同じ様な大きさの生き物に効く魔法を撃てる人間はいないし、万州の特性である頑丈をこえることは更に難しいだろうとうことで却下された。
また、精鋭部隊をもって乗り込むとも考えたけど、戦力が足りなくなるという理由で却下。もしやるならば迎撃が成功した後ということだ。
さて、何故一個人である僕が作戦を知っているかというと、玄斗に聞いたからだ。
以前、玄斗が言った様に彼には攻撃手段が少ない。なので専守防衛となるのだけど、少しでも攻撃をということで僕が選ばれた。それなりに強くなったとはいえ、素早い動きには対応しきれない僕は迎撃の戦力には数えず、動かない敵にでっかいのをぶち当ててやれということだ。
そんなわけであれから一度だけ家に帰ったけれど、その後はずっと玄斗の頭の上にいる。竜王との会話や各国からの報告をまとめて玄斗達に伝えるのも僕の仕事だ。”達”というのは玄斗以外のユミールさんと矢胤さんの事だ。ユミールさんは玄斗と一緒になってはいるけれど意識はあるので人形として現れた。矢胤さんは玄斗の尻尾に止まっているらしいけれど、人形だけ頭の上に来た。
容姿は、ユミールが玄斗と同じくらいの年月の女の子。矢胤さんが妙齢の女性だ。ちなみにナイスバディの黒髪女性。服はきわどいボンテージなので思わず唾を飲んだ。
サイカも連絡要員として留まってはいるけれど、報告等を聞く時には寝ているので含まない。
「来た。約半日の距離。」
矢胤さんの声が部屋に響いた。
「サイカ。」
「ギルドマスターに言えば良いんだよね?」
「そう。例の場所に待機しているはずだから。もしいなくても他の人に連絡してもらうんだよ。」
「わかったよー。」
部屋から飛び出すと同時に竜の姿に変わったサイカが空へ飛び出していく。
今回の事を受けて冒険者ギルドの臨時支店が一番近い大陸に設置されている。何処の国とも言えない様な場所で、勿論人が住んでいる事も無いし野生の動物や魔物が存在しているけど、アカリさんとセイカさんが守っているので心配は無いとの事だ。
そこから各国のギルドへ報告が行くことになっている。その後の迎撃はそれぞれの国のやり方に任せる。もっとも、遊撃として十数頭の竜が待機しているのでピンチになる前に呼ぶ事にはなっているが・・・。
「それじゃそろそろ僕も行くね。カンイチも遅れない様に。」
「直に行くよ。」
「待ってるねー。」
「おお・・。」
玄斗の姿が消えたと同時に地響きが響く。予定通りなのだけど少し驚いた。姿が消えたのは体を動かすのに集中する為で、集中した方が早く正確に動けるらしい。
そうしていつもより早い玄斗が万州に向かって行く。こうする事によって少しでも相手のタイミングを狂わせてやろうという作戦だ。
まぁいくら何時もより早いと言っても万州より遅いのだけど・・・。
「じゃあ私も玄斗を助けるから。」
「また後で会いましょう。」
「そうね。お互いに頑張りましょ。」
ユミールさんも続けて姿を消した。彼女は玄斗の補佐をする予定だ。
「片付けくらいはしておくからカンイチ君ももう行きなさい。数時間は余裕があるとはいえ準備は万端にしておかないと。」
「わかりました。」
「勝利の美酒も用意しておくから。」
「よろしくお願いします。」
矢胤さんに片付けをお願いして家を出る。矢胤さんは受けた傷が毒の影響もあって治りきっていないため参戦はしない。
それでも玄斗が負けた場合は飛んで逃げる予定だ。本人曰く、逃げ切れるか怪しいとの事だったので、矢胤さんの為にも勝たないと・・・。




