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10:『パイルバンカーを望む者』

 結論から言おう。ヤマト料理は和食でした。

 ただし、輸送の問題で米は無かった。

 選べたのはパンか饂飩か蕎麦。

 久々に食べた蕎麦は嬉しかった。

 本国だと米食らしいので、ヤマトに行くのも良いかもしれない。


 二日目、サイカは無事勝ち上がっている。

 話しを聞く限り、昨日の対戦相手に気に入ったのがいなかったみたいなので今日も駄目なんだろうな。

 基本的な基準は自分より強い事らしいので。

 

 「サイカちゃん頑張れー。」


 トウキもシェスタもちゃん付けしているが僕はつける気が無い。

 あえてつけるなら馬鹿サイカだな。愚竜サイカでもいいけど。


 ヤマト三人衆も勝ち進んでいる。

 明日の準々決勝でサイカと当るけどどちらが勝つかな?

 僕の予想はヤマトの槍使い。トウキの予想はサイカらしい。

 ちなみにクリスティーナさん達は勝ち負けにあまり興味は無い様だ。


 そんなものかね?


 

 三日目、予想は僕の当たり。

 銀貨一枚GETだぜ。

 槍使いの間合いと素早さ、総合的な武術の腕で負けた感じだ。

 いくら強い攻撃を持っていても当てられなければ意味が無い。

 パイルバンカー使いとしても考えさせられる試合だった。


 「いつの間にか負けた・・・。」


 サイカが観覧席にやってきて始めにいった言葉がこれだ。

 

 「顎を打ち抜かれていたな。」

 「人形ひとがたときは人間の様に脳が揺れますから、人形に成れてないサイカの弱点を上手く突いて来ましたね。」

 「ダメージは無かったのに・・。」

 「防御が固かったからこそ、一点に集中して顎を打ち抜いたのだ。相手の技量と観察眼を褒めるべきところかな。」

 「うぅ・・。」


 サイカの目には涙が溜まっているが、アカリさん達は慰める様な事はしない。


 「サイカちゃんは頑張ったよ。」

 「シェスター。」


 その所為かシェスタが声をかけると、その薄い胸に飛び込んで泣きじゃくる。


 「悔しさを越えるには修行あるのみだぞ。」

 「人形の訓練をさぼるからこうなるのです。」

 「だいたいな・・・。」


 アカリさんとセイカさんの言葉は止まらない・・。


 同じく準々決勝で昨年三位だというヤマトの刀使いが負けた。

 相手はユリアス王国の騎士。若手のホープなんだとか。

 これで四強が出そろった訳だけど、奇しくもヤマト勢とユリアス王国の対決となったわけだ。


 昨年優勝ミフユ・キトウVSユリアス王国騎士団所属クライス・グライブ

 この試合はあっけないものだった。

 グライブが剣を掲げ突進するも華麗に躱されて一閃。剣を鍔元から切り落とされた。

 それでも柄を投げつつ組み打ちにかかろうとしたが、これまた華麗にかわされた。

 刀を納めて無手で構えると組み合い、見事に一本。倒れた所に脇差しを突きつけられて試合終了。

 技量の差がひらいているからこその結果だと思う。


 サイカに勝ったヤマトの槍使いコウゾウ・クロツチVSユリアス王国近衛騎士ティア・ラスカーヌ

 こちらは激戦だった。

 ポイントを挙げるとすれば、槍の間合いで戦いたがるクロツチとその間合いの中に入ろうとするラスカーヌその攻防だろう。

 最終的には、傷を負いながらもラスカーヌがその懐に飛び込み、クロツチに剣を突きつけて決着。クロツチも狭い間合いの中で槍を使って迎撃していたのは見応えがあったが・・・。


 そんな訳で決勝は女性対決になった。

 片や鎧すら纏わぬ昨年の優勝者。片や激戦を制した近衛騎士。

 共に美人と来れば盛り上がらない訳が無い。


 「始め!」


 熱気渦巻くリングで開始の合図が放たれると同時に、ラスカーヌが突っかける。

 今回は躱せなかったのか、躱す必要がなかったのかわからないけど、リング中央で刀と剣を交える二人。

 攻めるのは初手からラスカーヌ。キトウは打ち合う事は無く基本的に避けるか受け流す。これは刀の強度の問題なのかもしれない。鉄の棍棒みたいな剣と打ち合ったら、刃こぼれならまだしもひん曲がりそうだし・・。


 「よく続くな。」


 トウキが感心するのも無理はない。攻めるラスカーヌも受けるキトウも、開始からかれこれ20分は動きっぱなしだけど息切れする様子も無い。

 徐々に観客の声援も静まって来たその時、何があったのか一瞬で攻防が逆転した。

 今まで見せていた様な反撃ではなく、明らかにキトウが攻めている。

 そして十合程打ち合うと、ラスカーヌの剣が宙に飛んだ。


 「参りました。」


 武器を飛ばすと共に打ち込まれたのか、膝をつきラスカーヌが降参して決勝戦が終わった。


 「優勝、ヤマト国ミフユ・キトウ!」


 審判の宣言と共に歓声が降り注ぐ。


 「凄いと思ったけど、それ以上に自信をなくしたよ・・。」

 「あれはほんの一握り。トウキ殿が目指す騎士団が化物ばかりという事はないから安心すると良い。」

 「化物って・・。」


 拍手しながらアカリさんが落ち込むトウキに声をかける。


 「特にキトウはまだまだ余力がある様だ。」

 「確かに化物かも・・。」

 「ああ。私も勝てるか怪しいさ。」


 サイカを軽々と捕えるアカリさんがそう言うのならよほど強いのだろう。

 歓声と拍手は、賞品の授与が終わり、閉会式が終わるまで止む事は無かった。






 「それでは大会を終えた二人に。」

 「「「乾杯。」」」


 時は変わり、夜。

 竜王国の大使館で乾杯の音頭をとったのはクリスティーナさん。

 大会終了にあわせたサイカとトウキの残念会だ。


 「お疲れさま。」

 「残念だったな。」


 僕達の他にも大使館勤めの人やナニルさん達もいる。

 話題はやはり武闘大会のことだ。

 特に決勝に残った四人に話題が集まるが、サイカとトウキもたまに話題に上がる。

 もっともその本人達は微妙な顔をしているけど。


 会が進むと、トウキには嬉しい知らせがあった。

 騎士団の試験を受けさせてもらえるらしい。なんでも僕達が竜王国の観覧席にいたので、ユリアス王国の人がクリスティーナさんに伝えてくれたのだとか。

 試験は武の実力だけでなく、文や礼儀作法もあるみたいだけど、落ちても衛兵にはなれるので本人は喜んでいる。それに試験まで大使館の人が礼儀作法に付いては教えてくれるらしいし。

 教えるからには完璧にすると執事みたいなお爺さんの目が光っていたけど大丈夫か?

 トウキよ。頑張れ。


 サイカにも話しはあったけれど、その場で断っているみたいだ。

 もっとも本人は望んでいないし、サイカが変な事をしたら国家間の問題になりかねないのであり得ない話しなのだろう。

 この度パートナーが決まらなかったサイカは、またしばらく竜王国で修行らしい。

 アカリさんが張り切っているが、そのせいでサイカの顔色は優れない。こちらもとても厳しいのだそうだ。


 残念会も終わりお風呂から出ると来客が知らされた。

 ナニルさんかと思ったけれど違う様だ。

 王都に着いてからは、クリスティーナさんの好意に甘えて大使館に泊まらせてもらっているけれど、それを知っているのは泊まっているメンバー以外だとナニルさんくらいしかいない。

 誰だろう?

 さすがに寝間着はまずいので着替えてから応接室へと向かう。


 応接室には三人の人影。

 一人はクリスティーナさん。

 もう一人はセイカさん。

 最後の一人は残念会にはいなかったはず。


 居たら目立っていただろう。

 服装は見かけない羽織り袴、黒い髪は後ろで結い上げて簪が一本刺さっている。

 本年度武闘大会優勝者ミフユ・キトウその人だ。

 

 「カンイチさん。知っていると思うがこちらはキトウ殿だ。」

 「はい。初めまして。カンイチ・ハチヤです。」

 「お初お目にかかる。ミフユ・キトウだ。この度はカンイチ殿の住まいを尋ねに来たのだが、こちらにいらっしゃると聞いて無理を言わせていただいた。夜分に申し訳ない。」

 「気になさらないで下さい。僕もお会いできて光栄ですし。」

 「そう言ってくれるとありがたい。早速だがお願いしても良いだろうか?」

 「お願いですか?」


 なんだろう?


 「私と立ち会っていただきたい。」

 「僕がですか?」

 「はい。」

 「理由をお聞きしても?」

 「カンイチ殿の予選を拝見させていただいた。是非立ち会ってみたい。」


 つまるところ戦闘中毒バトルジャンキーなのだろうか?


 「本戦に出られなかった事情があるのでしょうが、是非ともお願いしたい。そもそも我らが大会に参加するのはまだ見ぬ強者と戦いたいが為。是非とも。」


 テーブルに頭が突きそうな程に頭を下げている。

 つまるところヤマトの民は戦闘民族なのか?

 そうならヤマトに行くことも考え直した方が良いかもしれん。









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