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01:『大型試作一号機(別名:パイルバンカー擬き)』

 パイルバンカーと出会ったのはとある戦艦をユニットとするテレビゲーム。


 『接近しないと使えないが一撃必殺の威力を持つ。』


 ビーム飛び交う宇宙では接近する前にやられる場合が多いけれど、でっかい敵を一撃粉砕するその可能性に夢を見た。


 それからはゲームだけでなく、アニメや漫画に出て来ると聞けば借りて見た。

 絵にも描いてみた。

 プラモデルも作ってみた。

 そうして気付く。


 『動かないじゃん!』


 そう。動いて敵を粉砕する。


 そんな光景が見たくなった。


 そして今、大学一年目の夏。

 場所は実家の庭。

 親父は仕事。母親は買い物。妹は部活。弟は塾。家には自分以外に誰も居ない。


 「ふふふふ。」


 まるでマッドサイエンティストの様に笑いながらスイッチに手をかける。

 彼等は実験をする時にこのような興奮を味わっていたのだろう。

 夏の暑ささえ気持ち良い。


 「ぽちっとな。」


 ギュイーン。

 

 モーターによってワイヤーが巻かれて行く。


 「ますはこれくらいか。」


 巻すぎてワイヤーが切れる事は避けたい。

 これはあくまでも試作機一号機。正確には「大型試作一号機」だ。

 小型はミニ四駆のモーターとプラスティックで作成済みである。


 モーターのスイッチを切り、プラパイプの先を地面に向ける。

 強度的に不安はあるが、鉄にすると重いし事故が起きた場合に僕の足がミンチになるので、使い捨てと諦めている。


 「行くぞ。」


 見ているのは五月蝿く鳴く蝉くらいだろう。

 意を決してレバーを引く。


 「唸れ!パッ・・・。」


 台詞を最後まで言えなかった。

 激しく地面を叩いたパイプは予想に反して破壊される事は無く、その衝撃を本体へと伝え、本体は宙を飛んだ。電源コードを引っこ抜きながら・・・。


 (巻き上げた後は電源抜くべきだな。)


 倒れながら僕はそんな事を考えていた。

 何故、僕が倒れているのか。

 それは、引き抜かれた電源コードにひっぱたかれてよろけた所にパイプが飛んで来たから。

 更に悪い事に本体も僕向かって降ってきている。


 (こりゃ折れるな。)


 胸を狙っているかのように落ちて来ているソレは、ほとんどが金属製であり直撃すれば骨が折れる事請け合いである。


 (内蔵は勘弁。)


 そう思ったのが最後、胸に強い衝撃を受けて二・三メートル飛ばされた。


 バシャン!

 池に落ちたらしい。

 光っているのは放電現象かな?


 (親父ごめんな・・。)


 誰も居ない家で怪我人が池に落ちる。それも胸に重い金属を抱えて。

 溺死コースだろう。

 親父の育てている蓮の葉が視界に映る。


 「貴方が落とした・・・。ちょっと待てぇーーーー。」


 意識を失う前に聞いた声。

 何だったのだろう・・・・・。





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