マルト村
産まれてから十七年。この森から出たことなかった。だから、今のこの風景が新鮮すぎる。
「アルマ!森の外だよ!広いね、風がよく通るし、とっても明るい!」
『ガゥ!ガゥ!』
森の外は広い草原になっていて、森の中とは違い日の光が眩しいくらいだ。木なんて全然ない。魔物もいない。
「ここから僕の旅が始まるんだ」
改めて気合いを入れ直し、歩みを進める。アルマも僕の横をぴったりとついてくる。
森を出る前にルーから貰った地図を広げて見てみる。
「近くにマルト村っていうところがあるから、とりあえずそこで祠の情報を聞こうかな」
トリガーのことも聞いてみたいけど、十年前までのことしか知らないから、どうしようもできないんだよね。
『 クゥゥゥ……』
隣でアルマが弱々しい鳴き声を出した。
「ごめん。お腹すいたんだよね?もう少しでつくから我慢してね」
森から出てだいぶ歩いた。低かった太陽も今は、てっぺんに昇っている。
『ガゥ!』
「あっ!アルマ待って!」
何かを焼いたような芳ばしい薫りが、辺りに漂っているのに気付くより早くアルマが駆け出す。駆け出したアルマを追いかける。しかし、ウルフと人間では足の速さが圧倒的に違い過ぎるため、すぐに見失った。
「はぁ……はぁ……。あれ?いつの間にかマルト村の前まで来てたんだ。アルマは村に入っていったのかな?」
さっきよりも芳ばしい薫りがはっきり分かる。この村のどこかに発生源があるのかな?
「それよりも先にアルマを見つけないとね」