王国騎士
「こっちに来たはいいけど、これからどうするかな」
西側には確か森の出口があるって、村の人たちがいってたっけな?なら、どうせなら出てもいいかもな。森にいても仕方ないからな。
「こっちだー!隊列を乱すなよ!」
知らない男の声が聞こえ、茂みに身を潜める。どうやら王国軍の騎士のようだ。ガチャガチャと重そうな鎧を纏い森の奥に入っていく。
「村に向かってるのか?」
あの村は国境に位置していたからな。王国が騒ぐわけだ。それにしては到着が早い気もするが……。そんなことよりも見つかったら結構マズイな。よくて、参考人として保護。悪かったら、ラクルとの約束守れないかもな。
「止めとこ。悪いこと考えるとそっちに転がりそうだしな」
騎士たちが過ぎ去ったのを確認し、茂みから立ち上がり、見つからないように急ぎ足で進もうとした。その直後、前方の茂みが揺れる。
「ここにきて魔物かよ……!?」
腰にある二本の木剣を抜いて構えをとる。右は真っ直ぐ前に向けて、左は平行に構える。俺流の構えだ。警戒を高める。しかし、出てきたのは害のない兎の魔物だ。
「ふぅー。構えて損したな」
構えてを緩め、先に進もうとした。ところが、前の茂みからウルフが現れた。その事により緩めた構えをとり、ウルフに向き合う。その状態のまま一歩ずつ後ろに下がっていく。
「こんなとこで、あんまし時間かけたくねぇんだよ」
ある程度の距離ができたところで逃げだそうと考えていたが、それは甘かった。後ろからウルフ特有の威嚇が聞こえる。後ろには十匹近いウルフが殺気立てていた。ようやく自分が囲まれていることに気づく。
「マヂかよ……」
時間かけるかけないの話じゃなくなってしまった。覚悟を決めて前方のウルフに斬りかかる。それを合図に後ろの奴らも俺に向かってくる。一匹、一匹と丁寧にいなしてダメージを与えていく。だが、木剣を使っているから致命傷にまではならない。
体力だけが段々と削られていく。疲れからか、一匹のウルフをいなし損ね、左の剣を落としてしまう。 焦った俺に大きな隙ができ、別のウルフが襲いかかってくる。
「ヤベェ……」
眼を固く瞑り来る痛みを覚悟して待つ。ところが、痛みはいつまで待ってもやってこない。恐る恐る眼を開けるとガタイのいい王国の騎士が俺の前に立ちはだかっていた。
「待ってろ坊主。すぐに犬っころ退治するからな」
俺に声だけかけてウルフの輪に自分から入っていく。 もちろんウルフたちは容赦なく騎士に襲いかかる。しかし、それをものともせずウルフを撃退していく。しかも、騎士の一撃を受けたウルフは項垂れて起き上がる気配がない。
「小僧大丈夫か?」
全てのウルフを撃退した騎士が俺に手を差しのべてきた。今気づいたけど、俺、膝がわらってる。情けないな……
「あぁ。ありが……」
差しのべられた手をとろうとしたけど、視界がぐらつきそれは叶わなかった。騎士が何か叫んでる。死ぬのかな、俺?