表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切りと創造。~ツナギ~  作者: 三原 咲夜
序章
4/15

離別

森の中を走り続けた二人はようやく足を止めた。


「もう、こな、い……な?」


「う、うん……」


肩を上下させて呼吸を整える二人。


「悪い。怪我させちまった」


ラクルの左目の傷に触れながら、申し訳なさげに呟くトリガー。それを聞いたラクルは何故かお礼を言った。もちろんトリガーは疑問に思う。不思議そうなトリガーにむかって理由を話す。


「トリガーがいなかったら、僕殺されちゃってたかもしれないから。だからありがと、トリガー」


とても綺麗な笑顔のラクル。しかし、トリガーはあまり浮かない様子だ。


「これからどうしようか?村には戻れないから、どこか寝泊まり出来るとこだけでも見つけないと……」


ラクルはこれからのことを考えている。もちろん"二人で"というのが前提の考えだろう。返答がないことを不思議に思ったのかトリガーの顔を覗きこむラクル。


「トリガー?」


「俺は、別々に逃げた方がいいと思う」


トリガーの口から放たれた言葉はラクルにとって、信じたくないもので、考えたくないことで、この日二回目の絶望だった。


「どうして……どうして!なんで、別々とか言うの?!僕たちもう、二人しかいないんだよ?お父さんもお母さんも叔父さんも叔母さんもみんな、みんな死んじゃった!別々になったら、一人ぼっちになっちゃうんだよ……?」


始めは激昂していたラクルだったが、後半になるにつれ涙声になり、最後には涙を流していた。この日の出来事は七歳の少年には、受け入れられるものではなかったのだ。


「俺だってできれば一緒にいたい」


「それなら、そんなこと言わないで一緒に……」


『一緒に逃げよう』その言葉はトリガーの次の言葉によって紡がれることはなかった。


「でも!アイツが追ってこないとは限らない。もし、追いつかれたら確実に殺される。二人でいたら、行動範囲も狭まって見つかる確率が上がるだけだ」


トリガーの言うことは的を射ている。ラクルもおそらく理解はしているだろう。だが、感情がそれを否定している。


「でも、二人で戦えばどうにか……」


「村のオッサン達があのざまだ。俺達なんか秒殺だぞ」


どうにもできないことに泣き出してしまうラクル。そんなラクルをあやすように、頭を撫でるトリガー。


「お前は、このまま会えないのが恐いんだよな」


泣いているせいで声をうまく出せないラクルは必死にうなずく。


「大丈夫。約束だ。必ず"生きて二人で会う"。そのためにも分かるよな?」


二人の血は繋がってないが、まるで本当の兄弟のような二人。弟を諭す兄のようだ。落ち着いたラクルは決意に満ちた目でトリガーを見据える。


「"生きて二人で会う"。そのためにも一回バイバイしなきゃなんだよね」


「あぁ」


長いようで短い時間の会話。ラクルは立ち上がり東の方へ歩き出す。トリガーも立ち上がり西へ向かう。


「トリガー!絶対に、約束だからねぇ!」


ラクルの叫びを聞き、笑みを浮かべたトリガー。自分たちの選択に後悔することなく道を進んでいく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ