ディバド村
「父さん、母さん、いってきます!」
そう言って元気に家を飛び出した少年ラクル・ナトリス
このディバド村に住む七歳の子供だ。
この村は周りを森で囲まれた小さな村。そのため、食料や薪などをその森から調達することが多い。しかし、森には魔物が住み着いている。村人たちは魔物に遭遇しても自らの身を護る術を身に付けている。
幼いラクルも例外ではない。
「遅ぇぞラクル!早くいこーぜ」
ラクルの腕を勢いよく引っ張る彼はトリガー・ゼトル
ラクルより一つ上の幼馴染みだ。
彼らはいつものように食料や薪を集めに森へ出かける。この日もまた、日が暮れる間近までその作業を続けていた。
「今日は大量だったな!」
「うん!父さんたち喜んでくれるかな?」
両手一杯に抱えられた木の実や薪。トリガーにいたっては兎のようなものを抱えている。いつもよりもたくさん採れたことで、満足げな彼らは村への帰路へつく。
そんななかラクルがある異変に気付いた。
「ねぇ、トリガー……空が赤いよ?」
すでに日は落ちかけていて辺りは薄暗い。ただ一部の空だけが不自然に赤く染まっていた。
「あっちは、村の方だよな?」
二人は血の気が引いていくのが分かった。そして、手に抱えていた全ての物を投げ出し全速力で村へと急ぐ。
息の切れた二人が村に着くまで、そう時間はかからなかった。疲れた二人に追い討ちをかけるかのような光景が、目の前に広がっていた。
「何だよ、コレ……!」
「ウソ……なんで……」
倒壊した家屋。すでに息絶えた村民。それを覆う真っ赤な炎。そして、そんななか佇む一人の青年だった。