イカサマージャンしてた男2
あまり続かない
今日も行き着けの雀荘から家に帰る…
雀荘から自転車で10分程度…
屋敷が見えてきた…
と言っても、庭とかが付き、外に廊下があったりするだけで、余り広くはない…
防犯対策はどうしているのだろうか…
門をくぐり、鍵で玄関を開ける…
ガラガラッ…と、若干開けにくい横引き式のドアを開ける…
すると、特徴的な赤を基調に白のラインの大きなリボンを頭に巻いた女の子…
早見 立奈が走り、玄関へやってくる
「奏!!お帰り~!!」
「あぁ、ただいま」
自分の妹のくせに、元気だけは遊びを覚えた子供並だ…
走ってきた立奈は俺にぶつかる寸前で急ブレーキを掛けた
キュキュー!!と音が鳴るほど急にだ…
白が基調で黒のラインのスニーカーを脱ぎ捨て、段差を登る
その時、思い出した様に立奈が手をパンと叩く…
「そう言えば奏、また優勝したでしょ?」
「あぁ、優勝したよ…
ところで、そろそろ兄さんと呼んでくれ…」
ちなみに、優勝というのはこの前やった、関東麻雀連合内での大人や子供、新人からプロを混ぜた大会…
深瀬戸麻雀大会の事である…
俺はその大会の優勝者になったからである。
「おめでと~!!それと立奈は奏を兄とは認めたくないのでござる」
「ござるってなんだよござるって…
それより、早見さんは?」
「パチンコ」
「またかあの野郎」
はぁ…また裏に行かなきゃならないのか…
「そうだ!!優勝したから、またアレあげるね!!
奏の部屋で待ってて!!」
パタパタパタと立奈は廊下を走って自分の部屋へ向かっていった…
俺の部屋は畳張りで中心に少し大きな卓袱台があるくらいだ…
俺は布団などが入っている押入を開ける
その奥には巾着袋が七つあった
それぞれに、東、南、西、北、白、発、中と白の刺繍糸で刺繍されている
その中から発の袋を取り出し開ける
カラッ…
そこには木で出来た発と書かれた牌が四つ…
そして紙があった
七月十八日絹旗大会にて
これは、いつも大きな大会で勝ったら作って貰える立奈からのご褒美だ
長方形のカットされた木に、ナイフで削り、文字を掘ったものだ
俺自身、もっとも大事にしているもの
暫く…と言っても、三分ぐらい見ていたらバタバタバタと、徐々に大きくなる音が廊下から響き始めた
俺はラップを持って自室の出入り口である扉に近づき、
丁度150センチくらいの場所にラップを仕掛ける
スパンッ!!と勢い良く襖が開かれ立奈が飛び込んでくる
「奏~!!…うわっ!?」
しかし、立奈はラップに顔が当たる直前で身体を後ろに倒す
無理矢理スライディングを決めながら俺に突っ込んでくる
「ぶらすとーっ!!!!」
「おっと危ない」
が、それを左に移動し回避した
だが、その程度では立奈は諦めなかった
手を床に付いて跳ね跳び、足で俺の首を引っ張り倒す
どすんっ!!と運良く二枚重ねてある座布団の上に背中から落とされた
「奏が立奈様を越えられると思うなよ!!」
「立奈は一体どこに向かってるんだよ…痛たたたぁ…」
「奏では到達できない所までだよ、はいこれ」
カシャンと頭に巾着袋が落とされた
「今回は?」
「九索だよ」
今回の牌は九索らしい…
確かめるため巾着袋から一個だけ取り出してみると、
竹のようなせんが九本あり、間の三本が赤く色が付いている
「んっ、いつもサンキュー」
何時もの様に、軽くお礼をする、すると立奈がその場に座りこちらを見据え、こう言った
「ごめんね…私も大会に出られれば…奏に迷惑をかけないでも…」
「いや、一番働かない早見さんが言う言葉だよそれは…」
「でも、私は奏を助けなきゃ!!」
「お前は俺の姉か何かか!?
…はぁ、助けだったらもう十分助けられてるよ」
そう言うと、さっき貰った九索の巾着袋を目の前に持ってくる
「むぅ~…、そんなの只のお礼だよ!!」
「いや~、そのお礼があるからこそ頑張れるんだけどなぁ…兄さんって呼んでくれたら一番うれしいです」
「…ふふ、嫌だよ~♪」
「だと思った…」
そして、一時間ばかり立奈と話しているとガラガラっと音と共に早見さんの声が聞こえてきた
「お~い、帰ったぞ~♪
今日はウハウハだ~♪」
「何時もウハウハだ~って言って帰ってくる癖に…
んっ?早見さんお客さん?」
早見さんの隣には黒髪ロングヘアーの女の人がいた
「ん?あぁ、俺達今度結婚するんだ」
…これは驚いた
「早見さんを貰ってくれる女性が居たなんて…」
「なんだよ!!モテない男だってのか!?」
「はぁ?それは…ねぇ、立奈♪」
「そうだね奏♪」
「お前等揃いも揃って!!」
「まぁまぁ、良いじゃないですか、賑やかなのは良いことじゃないですか」
そう言ったのは、早見さんの隣に居たロングヘアーの人だ
「勝手に上がり込んでごめんね?
私は児葉夜小って言うの
これから先の事になるけど宜しくね」
「…俺は早見 奏、こっちは妹の立奈
ようこそ早見家へ」
「ご丁寧にどうも」
軽い挨拶が終わり、早見さんが俺達にこう言った
「これより麻雀をはじめる」
「唐突だよ」
「空気読め」
「ふふふ」
上から奏、立奈、夜小さんである
「まぁ、良いじゃないか
折角ここにプロが居るんだから」
夜小さんを指さし言った
「まぁ''元''ですけどね…」
「…あぁ、夜小さんってあの児葉夜小か…」
「奏は知ってるの?」
「ああ、結構有名だぞ?
雑誌の…ルゥ・花見麻雀倶楽部とかでは、役満泣かせとか和了女帝とか言われてるし、
鈴野歩プロとの早和了対決では全くの引き分けで終わってるし、平均和了速度は5順とはやかったりな」
俺の話を聞いていた立奈が一回俺を睨み、そして夜小さんの方へ向き笑顔を返した
「ふ~ん…麻雀強いんですね」
「ちょっと待て!!何故睨んだ!?」
「まぁ、人並みに…ね?」
「会話を続けないで下さい!!」
「さぁ~て、麻雀を打つか!!」
「何勝手に進めてるんだ!?」
「奏!!私が買ったらパリティックのドゥ・ラバニアール・グリニック・アーモンドアイス!!」
「めちゃくちゃ高い奴じゃないか!!」
税込み、1284円なり
「では私は喫茶愛ノ屋の旬のフルーツケーキを…」
「それも高いよ!?」
税込み、470円なり
「ホールで♪」
「値段あがった!?」
2980円なり、ニイキュッパでお得だね!!
「てか、何で俺!?早見さんに頼めば!!」
そうだ、自分はまだ中学生、大人である早見さんに頼むのが常識…
だが…
『あの人お金無いもん』
これである…
「俺サクサク君!!」
「勝手に買ってこい」
ぽいっ…とサクサク君の当たり棒を投げる
数分後、早見さんが雀卓を持ってきてくれた
わざわざ俺がファイトマネーで買った自動卓だ
緑色の表面に照明が当たり、表面を照らす…
「じゃ、まず席決め」
ひゅっ…と人差し指のみで牌をひっくり返す…
牌は北と書かれていた
今の場所はこうなった
東・早見さん
南・立奈
西・夜小さん
北・俺
その後、親決めだが、早見さんが親となった
早見さんがサイコロのスイッチを押し、卓中央のサイコロがカラカラと回る
出目により、配牌する位置が決まり、四枚ずつ取っていく
配牌、そして理牌が終わった
自分の手牌を確認してみる
一二四八八・p335(赤)6・44899
運よく捨てる人がいればトイトイで手軽く行きたい
そんな事を思っているなか、
東一局は一本場になる
「すまんみんな、天和だ」
「なっ!?」
和了したのは早見さんであった、
手牌を両手で広げ、見せる
一一一二三・p123・111123
確かに天和だが、天和じゃなきくても驚く程の手牌の良さだ
「もしかして、もうどっかで打った?」
そう言うのは、立奈であった
立奈は頭にあるリボンを揺らしながら早見さんに問いかけた
「・・・。」
早見さんは黙りながら指を四本立てる
「やっぱり…」
早見 郷太
元暴力団須藤組代打ち
そのおかしな力でこれまで約8000回打ってきた実力
あがったものが全て役満であることなのである