五話 始まりの日 行きの道
「んじゃ、先に行ってるからな~」
「お~う」
未だに首元の証が取れないモテ男を置いて先に家を出る。ざまぁ、なんて思ってないんだからね。
いつも通りの音と共に扉が開き、曇天の空で微妙にテンション下がる。
雨は多分降らないだろうけど、一応傘を持っていこうかな?
いや、必要ないか。どっちにしろこの後赤い雨に濡れることになるんだし。
待ち合わせ場所に向かいながらウィンドウを開き、メモの画面に切り替える。
「現状の確認、と」
敵にはそこそこ高レベルな面子が混じっている。
アサシン。先ほど触れたように分身が使え、高い攻撃性と隠密性を有する上級クラス。反面防御が紙で劣勢になると弱い。また分身で行動出来る範囲には限界があるらしい。細かい範囲は知らないけど、特記戦力の一人が複数の都市を同時に攻略しようとしたという逸話があるので多分それなりに広いと思う。
ハードバンデッド。同じく上級クラス。物理的には攻防共に高い数値で安定しているが、魔法が絡むと弱い。
他は……まあ弱いかな。気にする必要性があるのはこいつらくらいであとは雑魚か。援軍がない限り。
着くまでにまだまだかかるな。
ここで一つクラスについておさらいしておこう。今度教えることになるかも知れないし。
クラスには基本クラスと上級クラスの二種類がある。先ほど挙げた二つのクラスは後者、俺のグラップラーや永久のハイランダーは前者に分類される。簡潔に言ってしまえば基本クラスを選択してゲームを始め、上級クラスに進化するという形だろうか。
では基本クラスには何があるか。全二十四職。スタッフ頑張りすぎだ。
直接攻撃、間接攻撃、魔法攻撃、重量防御、軽量防御、物量支援、制御支援、回復支援の八系統。これが各三職ずつ。それぞれに違いが見られるようになっている。
間接攻撃職を例に挙げよう。
間接攻撃は『アーチャー』『ガンスリンガー』『ボマー』の三つ。これを細かく説明すると、
アーチャーは弓を得意とするクラスでダメージは当事者に依存。属性攻撃を行った場合状態異常の確率が高めになるよう設定されている。基本的に属性を付与されない限り使える属性は無と炎だけ
ガンスリンガーは銃を得意とする。ダメージは武器に依存。属性付与抜きで属性攻撃連発可能。
ボマーは砲や爆弾を用いて戦う。ダメージは武器依存。普通に範囲攻撃が出来るので一掃する時には便利。反面接近戦に持ち込まれると味方も巻き添えにする覚悟が必要になる。
こんな感じ。
この中で人気がないのはボマー。
理由は簡単。パーティーでダンジョンに潜ったりするのにこれ使えるか? 密閉されてるんだぞ。そんな訳だ。籠城戦とかだと大活躍だが仕方ない。
で、残り。
男性キャラだとアーチャー、女性キャラだとガンスリンガーが多くなる傾向にある。
理由としては物理攻撃で有利な男性がダメージを武器に依存させる訳もなく、魔法向きな女性キャラが間接攻撃職に就こうと思ったらダメージが本人に依存しないようにしたいから。
これは他でも大体共通する傾向なので注意。例えば魔法攻撃職は女性ばかりだし、直接攻撃職は男性ばかりだ。
例えば俺のグラップラーは男女比14:1くらい。
防御職はあまり偏らない。
男性なら物理防御が高く、場合によっては自分で攻撃する役割で攻撃が強いに越したことはないから。
女性は魔法防御が高い。そして自分で付与魔法などを使う必要が出た時、使える回数が多いから。
支援職関係はあまり偏っていないはず。必要なのは冷静さと把握力、分析力。
例えば回復支援職だと回復はINTじゃなくてMNDに依存するのでぶっちゃけ男女関係ないし。
さて、これで良いかな?
分かりにくかったら練習が必要か。
…………ちょっと?
ちょっと、そこの長靴履いた赤い合羽の小さい女の子。『お母さ~ん。一人でぶつぶつなんか言ってるお兄さんがいるよ~』とかやめて。
お母さんも『しっ! 見ちゃいけません!』とかテンプレやらなくても良いですから。
やっと次の話でヒロイン出せる……