本音で面接。
「それではまず、自己紹介をお願いします」
「はい。好きな言葉は適当、嫌いな言葉は責任。
特筆するべきことは特にない、平凡な大学生です。
ちなみに帰宅部です。皆でつるんで何かやるのって嫌いですし」
「…次に、志望動機をお願いします」
「はい。本当はもっと行きたい会社があったんですけど、見事に全滅してしまって。
手当たり次第色んな会社を受けていたときに、御社を発見しました。
で、エントリーシートを送ってみたらすんなり通ったので、面接も受けてみようと思いました。
エントリーシートも通ったし、あわよくば内定もらえるかもなー。これが、御社を志望した理由です」
「…我が社に入社したら、どんなことをやってみたいですか」
「きつい仕事は嫌なので、平社員でいいです」
「あなたの長所を教えてください」
「胴が長いんですよね。座高が高くなっちゃって困ります」
「…短所は」
「もちろん足ですね。悲しいくらい短いですよ。ジーパン買うたびに裾上げしてもらうのが面倒くさいです」
「その短所を改善するために、あなたは何をしていますか?」
「足が長く見えるジーパンとか、厚底のブーツとか買いますね」
「あなたを家電製品に例えると、何ですか」
「なんですかその質問!あっははは」
「…。」
「すみませんすみません、答えますよ。そうですねー…電子レンジ、かな」
「それはまた、なぜ?」
「俺ねー、自分では完璧にやったつもりでも、あとから『できてない!!』って怒られることが多いんですよね。ほら、電子レンジって、温め終わっても真ん中が冷たいままの時って多いじゃないですか。冷凍グラタンとか、端っこはやたらと熱いのに真ん中は冷たかったり。仕事が中途半端なんですよね。そういうところが、俺と似てるかと」
「…最後に、何か質問はありますか?」
「もう帰っていいですか。お腹すいたし疲れましたよまったく。面接官のおじさんは、疲れません?」
「疲れますね」
「でしょうね。似たような話ばっか聞くんでしょ?」
「そうですね。『御社には未来があると思います』とか、聞きあきましたね」
「ですよねー。長所は『粘り強さ』とか『真面目』とか言う人が多いんじゃないですか?」
「その通りですね。皆同じ答えばっかりですよ」
「面白くないでしょう」
「ええ、そりゃあもう」
「その点、俺の面接は面白くなかったですか?」
「まあ、面白かったですね」
「でしょ」
「しかし、通すわけにはいきませんね。残念ですけど」
「ちぇーっ!」
「しかし、友達にはなれるかもしれない、と思いました」
「おじさん、仕事もう終わります?飲みに行きません?」
「いいですね、行きましょうか」
「就活について愚痴りたいんですよ、就活生として」
「私も、面接官として愚痴りたいことが山ほどありますよ」
「じゃ、俺、先に駅前に行ってるんで」
「分かりました。このたびは…」
「『残念ながらなんたらかんたら。あなたの今後の活躍をお祈り申し上げます』ですか?」
「聞きあきましたか」
「聞きあきましたね」
「私も言いあきました。素直に言います。
みんな就活頑張れ!!応援してるぞおっちゃんは!!」
「そっちのが、心がこもってる感じがして俺は好きですね」
「だけど、小難しい言葉で言わなきゃいけないんですよ。…私としては、同じようなことばっかり並びたてる就活生たちより、君みたいな人間の方が好きなんですけどね」
「でも、通せないんですよね」
「通せませんね。大人の事情です」
「就活生もなんだかんだで、本音言ったら落とされるんですよね。『君たちの本当の姿を見せてください!』とか説明会で言ってたくせに、いざ本当の自分を見せたら落とされるんですよ」
「申し訳ない。…変な世の中ですね」
「まったくですよ。じゃ、俺そろそろ行くんで」
「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございました。失礼いたします」
「本当に失礼でしたよ。しかし、個人的に好きです」
「それはどうも。…続きは居酒屋で!!」
「楽しみにしてますよ。…続きは居酒屋で!!」




