愛の形
バスを降り、家路へと向かう未白と楓。手を繋ぎながら歩く二人の間には、確かな信頼と絆があった。楓は自然に未白の前に立ち、彼を守るように歩く。
そのとき、リオンが立ち止まり、声を震わせた。
「離れて……離れてよ……」
涙が頬を伝い、リオンの表情は苦しみに満ちていた。未白は戸惑い、何も言えずに楓の手を握り返す。楓は小さく息を吐き、視線をリオンに向けた。
「もう……耐えられない……」
そう言うと、楓は未白の手を強く握り、二人はその場から走り出した。リオンは必死に追いかけたが、途中で足を滑らせ転ぶ。地面に手をつきながら、必死に声を振り絞った。
「待って……未白、置いてかないで!優しくする!今度は違うやり方で……だから……戻ってきて!」
しかし、楓と未白は止まらず、逃げ続けた。雨のように涙を流すリオンを振り返りながらも、二人は一歩ずつ前へ進む。未来を、自分たちの手で掴むために。
——そして、時間は大きく流れた。
八年後。
楓は26歳、未白は23歳になっていた。二人は隣同士に座り、指先を絡めると、その薬指にはそれぞれ輝く指輪があった。長い時間を経て、互いへの信頼と愛情は揺るぎないものとなっていた。
足元で小さな声が響く。
「ママー!」
楓が振り向くと、目の前にはまだ小さい女の子が駆け寄ってきて、両手を広げている。未白はその背後で微笑みながら、自然に女の子を抱き上げた。
「ほら、パパもいるよ」
女の子は満面の笑みを浮かべ、楓の胸に顔をうずめた。楓はその頭を優しく撫でながら、未白の顔を見上げる。
「私たち、ちゃんと家族になれたんだね」
未白は笑い、軽く頷いた。
「うん。僕たちの未来だ」
遠い過去にあった不安や迷い、涙や葛藤。すべてはこの瞬間のためにあったのだと、二人は静かに感じていた。
街の景色は変わっても、変わらないのは互いを想う心。そして新しい命の存在。
楓と未白は手を取り合い、互いを見つめながら、確かな未来を歩き始める。
小さな声、笑い声、そして二人の心が重なる瞬間。
それは、誰にも壊せない、二人だけの幸せな現実だった。




