✒ 稀代の錬金術師
──*──*──*── 公園
マルチェントティスナ
「 よし、此処で良いだろう 」
レミィンダティナ
「 人気のない場所も有るんだね 」
マルチェントティスナ
「 広いからな 」
セフィ
〔 マルチェントティスナ──。
錬金釜を使わず、どうやって錬成するのですか? 〕
マルチェントティスナ
「 これですよ、セフィ様 」
そう言うとお姉ちゃんは胸ポケットから布を取り出した。
風呂敷くらい大きい布だ。
お姉ちゃんは風呂敷を広げる。
風呂敷は真っ白で、黒色で魔法陣── じゃなくて、錬成陣かな? ──が描かれている。
レミィンダティナ
「 錬成陣が描かれた風呂敷だ! 」
マルチェントティスナ
「 レミィは風呂敷を知ってるのか。
風呂敷は過去に召喚された英雄が愛用していた道具だ 」
レミィンダティナ
「 英雄が愛用── 」
風呂敷を愛用してたって事は、日本人かも知れないね。
レミィンダティナ
「 広げた風呂敷をどうするの? 」
マルチェントティスナ
「 先ずは錬成する物を決める。
これはオレが錬成する事が出来る品を書き記した本だ。
オレが直々に作った非売品だ 」
レミィンダティナ
「 それを見て錬成するのを決めるんだ? 」
マルチェントティスナ
「 持ってる素材にも依るがな。
今回は簡単な物にする。
──これが良いな 」
レミィンダティナ
「 何を作るの? 」
マルチェントティスナ
「 出来てからの楽しみだ。
使う素材とは──、カッコルの実 ×3,メデュマの花蜜 ×1,バッダダの羽根 ×5,ゲラメサの鱗 ×1を使う。
素材を風呂敷の上に置いたら──、錬成陣を発動させる 」
お姉ちゃんは何語か分からない言葉を呪文みたいに詠唱を始めた。
エルフ族の言葉かな?
お姉ちゃんの両手の平に光が集まる。
カラフルな光は風呂敷の上に置かれた素材に注がれていく。
素材が光に包まれると消えてしまった!!
その代わりに違う物が風呂敷の上に有った。
レミィンダティナ
「 えぇっ!?
どうなってるのぉ~~!? 」
マルチェントティスナ
「 錬成は成功だな。
これは傷口に塗る薬だ。
★5の塗り薬だから、売れば金貨3枚はする 」
レミィンダティナ
「 金貨3枚!?
しゅごい…… 」
マルチェントティスナ
「 錬成を成功させる秘訣は、必ず質の良い素材を使う事だ。
間違っても質の悪いの素材を使ってはいけない。
これは絶対のルールだ。
錬金術とは人知を越えた存在に力を借りて、錬成を行う。
錬成に使う素材は、人知を越えた存在へ渡す貢ぎ物だ。
質の良い素材を使う事は、妖精,精霊様に対する最低限の礼儀だ。
もう1つの秘訣は素材の★を合わせる事だな。
★が違うと錬成の成功率が下がる。
今回使った素材のカッコルの実,メデュマの花蜜,バッダダの羽根,ゲラメサの鱗は★5だから、塗り薬は★5だ。
だが──その中に★3の素材が入っていた場合、錬成は失敗はしないが、★の低い塗り薬が出来る 」
レミィンダティナ
「 ★3なの? 」
マルチェントティスナ
「 それは錬金術師にも分からないな。
錬金術は1人の力で成功させるモノではないって事だ 」
レミィンダティナ
「 でも人間には妖精さん,精霊さんの姿は見えないよね。
錬成が成功しても “ 自分の実力だ ” って勘違いしちゃうよね。
妖精さんも精霊さんは、それでも良いのかな? 」
マルチェントティスナ
「 其処迄はオレにも分からないな 」
セフィ
〔 貢がれる素材の質と★で決めると思いますよ。
気に入らなければ、妖精も精霊も協力はしません 〕
レミィンダティナ
「 協力するかどうかは妖精さん,精霊さんが決めれるんだね。
良かったぁ~~ 」
マルチェントティスナ
「 レミィは変わった子だな 」
レミィンダティナ
「 錬成陣と魔法陣って違うの? 」
マルチェントティスナ
「 そうだな。
魔法と錬金術は根っ子が違うからな。
高度な魔法を使っても錬成は出来ない。
どんなに優れた魔法師ですら逆立ちしても錬金術師にはなれないんだ。
錬金術師にはライセンスが必要だ。
誰にでもなれる職業じゃない 」
レミィンダティナ
「 ライセンス?
資格の免許みたいな? 」
マルチェントティスナ
「 まぁ、そんな所だ。
入手した手頃な素材を使い、新しい物を生み出し、価値を付けて高値で売る。
頭を使いさえすれば楽に金儲けが出来るのが錬金術さ 」
レミィンダティナ
「 其処に行き着いちゃうんだ 」
マルチェントティスナ
「 生活するには金が要るからな。
戦闘に使える道具は良い小遣い稼ぎになる。
オレは腐る程金を貯めてるから商売なんかしなくても良いんだが、高額な魔術具が売れたら懐が嬉しくなるだろ 」
レミィンダティナ
「 そうなんだ。
錬金術師は皆ライセンスを持ってるの? 」
マルチェントティスナ
「 いや、全員じゃないな。
ライセンスを持っていない錬金術師は自分で錬成した物を販売する事が出来ないルールだ。
これを破ると錬金術業界から干され、犯罪奴隷に落とされる。
ライセンスの偽造は重罪で死刑になる 」
レミィンダティナ
「 ライセンスを持ってない錬金術師は錬成した道具をどうするの? 」
マルチェントティスナ
「 錬金術業界には《 錬金術ギルド 》が有ってな、其処に錬金術師登録をするんだ。
因みに《 錬金術ギルド 》を創立したのはオレだ!
オレが《 錬金術ギルド 》の頂点な! 」
レミィンダティナ
「 えぇっ!?
お姉ちゃんって凄い人なの 」
マルチェントティスナ
「 フフン!
そうだ、お姉ちゃんは凄いんだぞ!
《 錬金術ギルド 》で錬金術師登録をすれば、自分で錬成した物を登録する事が出来るようにしている。
登録した物は店舗に展示して販売してるんだ。
売り上げの30%が《 錬金術ギルド 》に入り、70%が登録者に入る仕組みだ。
《 錬金術ギルド 》に設置している棚には、錬金術師リストが並べて有ってな《 錬金術ギルド 》で会員登録をした会員のみ錬金術師リストを自由に見る事が出来る。
錬金術師に依頼をするなら必ず《 錬金術ギルド 》を通す必要がある。
錬金術師登録をしている錬金術師は、依頼人とのトラブルを避ける為、必ず《 錬金術ギルド 》を通した依頼しか受けてはならない決まりがある。
錬金術師を守る為のルールすらまともに守れない錬金術師には、錬金術師登録を抹消し、錬金術業界から干す事にしている。
どんなに些細で小さな依頼でも錬金術師登録している以上は、先ず《 錬金術ギルド 》に相談する事を義務付けているんだ 」
レミィンダティナ
「 そうなんだ 」
マルチェントティスナ
「 興味が有るなら明日、《 錬金術ギルド 》に連れて行ってやるよ。
義妹だからな、創立者権限で特別に錬金術師登録してやるよ 」
レミィンダティナ
「 えぇっ!?
でも……アタシ、錬金術なんて出来ないよ 」
マルチェントティスナ
「 はぁ?
余裕で出来るだろ。
この風呂敷はレミィにプレゼントだ。
有り難く受け取れよ 」
レミィンダティナ
「 有り難う、お姉ちゃん(////)」
マルチェントティスナ
「 セフィ様が居るし、精霊王様達に協力していただけば、レミィにも錬成する事が出来るさ 」
レミィンダティナ
「 そ…そうなのかな? 」
セフィ
〔 風呂敷を貰えたのです。
試しに何か錬成をしてみましょう 〕
レミィンダティナ
「 うん…… 」
何故かアタシは、お姉ちゃんから貰った風呂敷を使って、錬成をする事になっちゃった!
錬金術師でも無いのに、錬成陣が描かれた風呂敷を使って、精霊さん達に協力してもらって錬成をする流れになるなんて、予想外過ぎるよぉ~~。
マルチェントティスナ
「 錬成は明日にしよう。
先ずは《 錬金術ギルド 》で錬金術師登録を済ませる。
その後は新米錬金術師が受ける “ 錬金術師体験 ” をオレが直々にしてやる。
素材集めからな 」
レミィンダティナ
「 う…うん…… 」
お姉ちゃんってば、男勝りでサバサバしてるからなのか、オレオレな所が有るよね……。
でも《 錬金術ギルド 》には興味あるし、錬金術師体験──一寸してみたいかも知れない!
レミィンダティナ
「 明日を楽しみにしてるね、お姉ちゃん! 」
マルチェントティスナ
「 あぁ!
アベルの事だから、朝食後には《 冒険者ギルド 》へ行くだろうから、迎えに行くからセフィ様と待ってな 」
レミィンダティナ
「 うん 」
マルチェントティスナ
「 もう16時になるな。
《 冒険者ギルド 》まで送ろう 」
レミィンダティナ
「 有り難う、お姉ちゃん! 」
アタシはお姉ちゃんに《 冒険者ギルド 》まで送ってもらえる事になった。
レミィンダティナ
「 お姉ちゃん、何してるの?
《 錬金術ギルド 》に行かないの? 」
マルチェントティスナ
「 フッフッフ!
誰も “ 歩いて向かう ” なんて言ってないぞ☆ 」
レミィンダティナ
「 へ? 」
そう言うとお姉ちゃんは、腰に付けているバッグから何かを取り出した。
レミィンダティナ
「 お姉ちゃん、それは何? 」
マルチェントティスナ
「 宙を浮いて動く魔術具だ!
オレが錬成したコレクションの1つさ。
中々、快適だぞ 」
お姉ちゃんは石畳に絨毯を広げるとアタシに手招きをする。
絨毯は土足で乗っても良いみたい。
アタシは石畳の上に敷かれた絨毯に乗る。
お姉ちゃんは絨毯に取り付けられている棒を動かす。
絨毯はゆっくりとフヨフヨと宙に浮いた。
少しずつ絨毯は上昇して3mくらいの高さで止まる。
絨毯は宙に浮いた状態でゆっくりと動き出した!!
絨毯の動きは自転車で走す時の速度くらいで、風を切って進む。
レミィンダティナ
「 空飛ぶ魔法の絨毯みたい!!
凄いっ!! 」
空飛ぶ魔法の絨毯じゃないけど、空飛ぶ魔法の絨毯に乗ってるみたいな体験が出来るなんて夢みたい!!
【 ドラ◯もん のび太と魔界大冒険 】に出て来た空飛ぶ魔法の絨毯みたい!!
あれはドラ◯もんがスペアポケ◯トから出した未来の道具なんだけど──。
空飛ぶ絨毯は順調に《 冒険者ギルド 》に向かって飛ぶ。
都民達は宙を浮いて動く絨毯を不思議そうな顔で見上げている。
空飛ぶ絨毯が珍しいみたい!
──*──*──*── 冒険者ギルド
空飛ぶ絨毯が《 冒険者ギルド 》の前で止まる。
ゆっくりと石畳に空飛ぶ絨毯が着地する。
歩くよりも早く《 冒険者ギルド 》に到着したみたい。
お姉ちゃんと一緒に《 冒険者ギルド 》の中へ入った。
レミィンダティナ
「 えぇと…………お父さん達は── 」
セフィ
〔 未だ地下の[ 訓練場 ]で励んでいるかも知れませんね 〕
レミィンダティナ
「 ハインツは未だ8歳だよ!
ちゃんと休憩を挟みながらしてるのかな? 」
セフィ
〔 心配なら見に行きますか 〕
レミィンダティナ
「 そうだね!
もう直ぐ馬車が迎えに来る時間になるもんね 」
アタシはお姉さんに事情を話して[ 訓練場 ]に入らせてもらえないか聞いてみた。
お姉さんは「 駄目です 」の一点張りで、[ 訓練場 ]に下りる事を許可してくれない。
マルチェントティスナ
「 どうした、レミィ 」
レミィンダティナ
「 お姉ちゃん!
[ 訓練場 ]に下りるのを許可してもらえないの 」
マルチェントティスナ
「 何?
おい、何故[ 訓練場 ]に行くのを止めるんだ。
オレとレミィはパーティ【 ベラチヲ 】のメンバーで身内だぞ。
オレ達が納得の出来る理由を言え 」
お姉さんに高圧的に迫るお姉ちゃん……怖い。
受付嬢
「 え…あっ…そのぉ……♥️ 」
あれれぇ~~お姉さんの目が♥️になってるぅ!?
お姉さんったら、女性の姿をしているお姉ちゃんに見惚れちゃってる!!
お姉ちゃんがお姉さんに迫っていると、聞き慣れた声が聞こえた。
何かがアタシにぶつかる。
「 うわっ!? 」と短い声を上げたアタシに抱き付いていたのはハインツだった。
ハインツはボロボロで、傷だらけになっていた。
擦り傷が目立つし、着ている衣服も所々破れていてボロボロになっている。
レミィンダティナ
「 ハインツぅ~~!
どうしたの、その姿はぁ!!
ボロボロじゃないのぉ!! 」
ハイベルツィウンツ
「 ぼく…………泣かないで頑張れたんだよ! 」
レミィンダティナ
「 頑張れたって……。
頑張れたのは凄いけど……手当てしないと! 」
???
「 テイナ!
来ていたのか 」
レミィンダティナ
「 お兄ちゃん!
何でハインツが傷だらけでボロボロなの!?
ハインツに何したの!
手当てもしないでぇ~~!! 」
レンディムダンテム
「 テイナ── 」
???
「 全く……喧嘩を売る相手くらい選んで欲しいですよねぇ 」
???
「 幾ら何でも、やり過ぎだろう…… 」
???
「 だって──、エルフ族のワタシに喧嘩を売るなんて、世も末でしょうかねぇ 」
???
「 それにしても暴れ過ぎ──ティナ!? 」
レミィンダティナ
「 お父さん!
お兄ちゃん!
ねぇ、[ 訓練場 ]で何が遭ったの?! 」
アイベルファイラ
「 レンダ!
何を怒っているんですか? 」
ディリアディアズ
「 ティナ……[ 訓練場 ]で一悶着あってな…… 」
レミィンダティナ
「 一悶着って? 」
マルチェントティスナ
「 話なら馬車の中でしたらどうだ。
17時に迎えの馬車が来るんだろ 」
アイベルファイラ
「 あぁ~~そうでした!
《 商店街 》に向かわないと!
17時まで20分しかないですよ!
急ぎましょう! 」
ディリアディアズ
「 そうだな。
ハインツはオレが背負おう 」
レンディムダンテム
「 テイナ、行こう 」
ハインツはお兄ちゃんにおんぶされる。
アタシはニィニに手を握られる。
レミィンダティナ
「 お姉ちゃん、有り難う!
明日ね 」
マルチェントティスナ
「 あぁ!
途中で転ぶなよ 」
お姉ちゃんに見送られて《 冒険者ギルド 》を出る。
お父さん,お兄ちゃん,ニィニは足が早い。
手を引っ張られるアタシは転ばないように必死で走るのが精一杯!
まさか最後の最後に全速力で走る事になるなんて、思いもしなかったよぉ~~。
《 ギルド街 》を出て、《 商店街 》へ向かって走り続ける。
あぁ~~~~お腹の左側が痛くなって来ちゃったぁ~~!!
早く《 商店街 》に着いてぇ~~~~。




