⭕ クレイスの憂鬱 3
白狼神皇が姿を消した後、クレイスは室内に1人になった。
まるで自分に都合の良い夢を見ていたような気分だった。
亡き実妹と瓜二つの顔をした少女──異世界人のテイナに遣える隷属に自分が選ばれたのだ。
これが夢でなければ何だと言うのか──。
クレイスは左手の中指を見る。
まるで指輪を嵌めているかのように見える契約紋に思わず顔がニヤけてしまう。
何度も契約紋を左手の指でなぞってみる。
クレイス
「 嗚呼っ──願わくば、これが夢で有りませんように!
現実の事で有ってほしい──。
テイナの指にも契約紋が付いているんだろうか── 」
明日からでも早々に旅立つ準備を始めなくては──と強く思う。
クレイス
「 3ヵ月後と言わず、1ヵ月後にも出立が出来るように準備を進めなけばな──。
私以外の貴族がテイナの支援者にならなくて良かった。
今からでも他の貴族がテイナの支援者となるのを阻止しなければな。
テイナに近付く不届き者が現れないよう確りと牽制しなければ! 」
クレイスは白狼神皇に言われた事を思い出し、顔を赤らめる。
テイナの隷属となったからには、“ 必ずやらなければならない義務が有る ” と白狼神皇に言われた。
テイナの代わりに怪物,魔物を倒し、LVを上げる必要がある──と言われた。
隷属となってから上がったLVは、テイナのLVを上げる為に譲渡しなければならない。
譲渡は隷属の義務らしい。
テイナを鍛えた所で、戦闘能力には期待が出来ない。
テイナに怪物や魔物を倒させて経験値を貯めさせるよりも、クレイスが怪物や魔物を倒して貯めた経験値を譲渡し、テイナのLVを上げた方が手っ取り早いのだ。
現在のクレイスのLVは78だ。
人間が上げれる限界LVは99だと決まっているが、救世主はLV999まで上がるらしい。
白狼神皇曰く、隷属となった事でクレイスもLV999まで上げれるようになった。
1度の行為でクレイスがテイナへ譲渡が出来るのは1LV分だけらしい。
10LV分の譲渡をする為には、10回の行為が必要となる訳だ。
テイナは未成年の少女である。
未成年の少女を相手に成人男性のクレイスが行為をするのは、梳屶惠美の故郷では立派な犯罪だ。
然し、此処は──≪ ノクタルルド公国 ≫は異世界である。
貴族の中には80歳を過ぎたジジイが未成年の少女を妻に迎え、夫婦の営みに励む事は良くある話だ。
自分よりも70歳も年齢が離れている少女を妻に迎える事も犯罪にはならないし、妻に迎えなくとも養女として迎えた後、養父の立場で可愛がっても犯罪にはならない。
仮に騎士団団員長の地位や権力を職権乱用したクレイスがテイナを拉致し、宿屋に連れ込んだ後、テイナで遊んだとしても犯罪にはならない世界だ。
犯罪に対してガバガバに緩くて「 ビバ、犯罪★ 」なのが異世界である。
クレイス
「 と…兎に角……LVの譲渡の事は置いといて──、先ずは私のLVを上げなければ!!
長期休暇を取り、毎週月日 ~ 金日はLV上げに行くか──。
毎週土日はテイナとデートして、日日はデートの計画を立てて── 」
クレイスは早速、LV上げする為に必要な長期休暇を取る為の申請書を書き始める。
クレイス
「 《 フィールド 》で戦っても良いが、《 ダンジョン 》の方が効率が良いか──。
久し振りに冒険者としてダンジョン攻略を目指してみるかな。
目標LVは200にして── 」
クレイスは机に向かい、ダンジョン攻略の計画を立て始める。
《 フィールド 》での戦闘も《 ダンジョン 》での戦闘も慣れているクレイスは、攻略に必要となる必需品リストを作成する。
長期休暇にダンジョン攻略を挑む為の必需品の中に、≪ テンクゥリア ≫を目指す為の必需品もリストに加えておく。
リストの作成を終えたクレイスは、執事が手配をし易いようにリストを仕分けた。
仕分け終えたクレイスは、ベッドに入り就寝した。
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 王城
──*──*──*── 公国近衛騎士団第2騎士団団長室
クレイスは「 長期休暇だし、渋られて受理され難いだろう 」と思いながら、駄目元で長期休暇の申請書を提出した。
すると意外にも直ぐ様団長,副団長から受理されてしまった。
あっさりと長期休暇の申請を受理され、然も「 本日の午後から長期休暇に入れ 」とも言われる。
明日からでも良いのに「 午後から長期休暇に入れ 」とは──、喜んで良い筈なのに何故か素直に喜べない。
兎に角、長期休暇を許可されたならば、するべき事が有る。
副団員長へ職務の引き継ぎをしなければならない重大業務だ。
[ 団員長室 ]へ向かいながら「 3時間で何処まで引き継げるのか── 」とクレイスは頭を悩ませる。
クレイスは団員の4人組に声を掛け、「 緊急の用件が有る。副団員長へ至急[ 団員長室 ]へ来るよう 」と伝えるように指示を出す。
普段は温厚で紳士的なクレイスだが、剣の柄を握ったクレイスの恐ろしさを身を持って体験している団員達は、震え上がりながらクレイスの指示を受けると走り去っていった。
[ 団員長室 ]で引き継ぎの準備をしていたクレイスの元に副団員長が入室して来る。
副団員長
「 緊急の用件と聞いたが── 」
団員長:クレイス
「 パレスタク──。
忙しいのに呼び出して済まない。
業務の引き継ぎをしたくてな 」
副団員長:パレスタク
「 業務の引き継ぎだと?
何でまた 」
団員長:クレイス
「 長期休暇の申請を出してな。
受理されたんだ 」
副団員長:パレスタク
「 何っ!?
長期休暇……だと!?
漸く見合いする気になったのか! 」
団員長:クレイス
「 違う……。
何故皆、私に見合いを進めるんだ?
私は当分、恋人を作る気は無い 」
副団員長:パレスタク
「 そ…そうか?
フリーになったお前に求婚を前提にした交際の手紙が毎日、届くもんだから──。
早く新しい相手を作ってほしいと思ってるんだがな…… 」
団員長:クレイス
「 その場で破って返せば良いだろう。
それぐらいすれば多少は減ると思うが?
受け取った手紙は全て焼却してるんだろうな 」
副団員長:パレスタク
「 …………破るとか焼却するとか酷い奴だよ、お前は──。
フラれたのが、そんなにショックだったのか? 」
団員長:クレイス
「 ──そういう事にしといとくれ。
その方が都合が良いからな。
引き継ぎをするぞ 」
副団員長:パレスタク
「 分かった。
始めよう 」
──*──*──*── 3時間後
団員長:クレイス
「 何とか終わったな。
1人では大変だろうから補佐を付けて回してくれ 」
副団員長:パレスタク
「 団員長って、こんなに忙しかったのか……。
吐きそうな量だな…… 」
団員長:クレイス
「 そうだな。
慣れると平気になるぞ 」
副団員長:パレスタク
「 慣れたくないんだが……。
それにしても『 午後から長期休暇に入れ 』とは、団長も副団長も優しいなぁ~~。
長期休暇を何処へ行くんだ?
旅行か? 」
団員長:クレイス
「 重要な案件でな。
LVを上げる必要が有るんだ。
手っ取り早く《 ダンジョン 》を攻略しに行く 」
副団員長:パレスタク
「 何ぃ!?
未だLVを上げるってのかよ!?
それ以上、強くなられると困るんだが── 」
団員長:クレイス
「 パレスタクも来るか?
LV上げは楽しいぞ 」
副団員長:パレスタク
「 丁重に断る!
この戦闘狂め! 」
団員長:クレイス
「 誰が戦闘狂だ……。
目的のLVに達したら戻って来る予定だ。
来週の月日には帰って来る予定ではいるが── 」
副団員長:パレスタク
「 1週間で戻って来る気か?
もっと《 ダンジョン 》を堪能して来いよ! 」
団員長:クレイス
「 そのつもりだが?
さて──、時間が来てしまったから私は上がるよ。
後は頼んだ 」
副団員長:パレスタク
「 任されろ。
向こうで運命の彼女と出逢えると良いな! 」
団員長:クレイス
「 …………………… 」
副団員長:パレスタク
「 んな、恐い目で睨むなよ……。
誰でも構わないが、俺の娘は駄目だからな!
お前に『 お父さん 』なんて呼ばれたくないからな 」
団員長:クレイス
「 パレスタクの娘は未成年だろ。
私をロリコンにするな 」
副団員長:パレスタク
「 来年、15歳になる。
成人の仲間入りだよ。
それでもお前とは11歳も離れてるんだならな!
エルシンがお前にプロポーズしても絶対に断れよ! 」
団員長:クレイス
「 そうか……、来年には成人するのか。
なら、祝いの品を用意しないとな 」
副団員長:パレスタク
「 クレイス──、そういう所だぞ!
そういう事をするから、女は “ 自分に気が有る ” って勘違いしちまうんだからな 」
団員長:クレイス
「 パレスタクから渡せば良いだろう。
私が用意したと言わなければ勘違いもしないだろうが。
素材を幾つか持って帰って来るから、パレスタクが良さそうなのを選んでくれ。
素材を提供するくらいなら良いだろう? 」
副団員長:パレスタク
「 素材提供は有り難いが……。
こりゃ加工代で、ヘソクリが飛ぶだな…… 」
団員長:クレイス
「 はははっ……。
愛娘に貢げるなんて幸せ者だな 」
副団員長:パレスタク
「 そ…そうかぁ~~(////)」
団員長:クレイス
「 私が戻って来る迄、団員達の事は頼んだぞ。
後──、私が居ない間の訓練メニューとスケジュール表も作っておいたから、参考にしてくれ 」
副団員長:パレスタク
「 スパルタの鬼だな、クレイス…… 」
団員長:クレイス
「 何処がスパルタだ?
優しい訓練メニューとスケジュールだろう 」
副団員長:パレスタク
「 これが優しいって……。
お前が第1騎士団でコレを実行したら、彼奴等は泣きながら国王にお前の移動を懇願するだろうよ 」
団員長:クレイス
「 言い過ぎだぞ 」
副団員長:パレスタク
「 採用するかは、団長と副団長に相談してからだな 」
団員長:クレイス
「 そうしてくれ 」
クレイスは机の上を片付けると副団員長に[ 団員長室 ]の鍵を手渡す。
後の事を任せたクレイスは[ 団員長室 ]から退出すると《 王城 》を出る為、裏門へ向かった。
◎ 訂正しました。
義務が有る ” 白狼神皇に言われた。─→ 義務が有る ” と白狼神皇に言われた。
80を過ぎたジジイ ─→ 80歳を過ぎたジジイ
騎士団員長 ─→ 騎士団団員長
公国近衛騎士団第2騎士団室 ─→ 公国近衛騎士団第2騎士団団長室
午後から長期休暇に入れとは──、─→「 午後から長期休暇に入れ 」とは──、




