⭕ クレイスの憂鬱 2
──*──*──*── クレイスの自室
クレイスは整えられているベッドの上に腰を下ろして座る。
クレイスは母親に言われた事を考えてみる。
確かに母親から言われた事には一理ある。
支援者として自分に出来る範囲内でテイナへの支援をしたいと思い、様々な事をして来たつもりだが、全ては自己満足で行っている善意の押し付けでもある。
善意の──本当に自分は善意で支援を行えているのだろうか……。
クレイスは両手で頭を押さえて苦悶する。
自分は別に少女趣味の変態ではない筈だ。
13歳も年齢の離れた無垢な少女を愛でるような特殊な性的趣向は持ち合わせていない筈だ──。
6年前に亡ったアスタシナに似ているから──、テイナに対する王族の対応に腹立たしく感じるだけで──、手を差し伸べているだけだ。
アスタシナが11歳の時、テイナは未だ故郷の異世界で暮らしており、6歳程の筈だ。
クレイス
「 歳の離れた兄妹で通せるな。
20も歳の離れた兄弟姉妹なんて≪ ノクタルルド公国 ≫では珍しくもないし、王族,貴族の家庭では異母兄弟姉妹が居るのは当たり前の習慣で珍しい事ではないし──。
私が個人的にテイナと親しくしても何の問題も無いじゃないか。
“ 支援者 ” という立場も有るし、騎士として救世主さまを護衛する役目も有る訳だしな──。
何も問題は無い筈だ!
………………………………多分…… 」
???
『 随分と悩んでいるようですね、ノクタルルド公国近衛騎士団第2騎士団団員長クレイス・セイクラント・エルシムグレオ── 』
突然、聞き慣れない澄んだ声が聴こえる。
パッと顔を上げた前には見知らぬ人物が居た。
全身が淡白く光っており、神々しさを感じる。
淡翠の長髪にクリッした翠色の瞳をした美形の青年だ。
青年に見えるのは、童顔に見える所為だろうか。
青年の額には水色の逆三角形が付いている。
クレイス
「 ──!?
お前は誰だ!
どうやって私の部屋に入った!? 」
???
『 我は精霊神様の眷属──獣神白狼神皇です。
今は正体を隠し、獣神の末裔──白狼神として主人様に使えています 』
目の前の人物の口は動いていない。
頭の中に直接、声が聞こえているような感覚がする。
クレイス
「 精霊神様の眷属??
獣神白狼神皇??
獣神の末裔の白狼神??
……………………私に何の用件が? 」
白狼神皇
『 主人様の救世主ランクEなのも無属性で元素魔法が使えないのも、精霊神様の計らいなのです 』←─ 大嘘
クレイス
「 ……………………精霊神の計らい?? 」
白狼神皇
『 主人様が能力の高い救世主だと知られれば、≪ ノクタルルド公国 ≫の王族に幽閉され、死ぬまで利用されてしまいます。
救世主ランクを下位にし、無属性にする事で “ 役立たずの救世主 ” として誤認させる事が出来ます。
主人様を王族,貴族から遠ざけているのが現状です 』
クレイス
「 ──テイナの事か! 」
白狼神皇
『 我の役目は主人様を≪ ノクタルルド公国 ≫から脱出させる事です 』
クレイス
「 脱出させる?
どうして── 」
白狼神皇
『 ≪ ノクタルルド公国 ≫が戦を始めるからです。
王族,貴族は召喚された救世主達を戦に利用しようとしています。
王族が貴族から支援者を募り、救世主1人1人に支援者を付けたのも≪ ノクタルルド公国 ≫から逃がさない為です。
逃げ道を失い支援者に依存させられた救世主達は、受けた恩を返す方法として≪ ノクタルルド公国 ≫の戦に参戦する道しか残されていません。
我は主人様を戦から遠ざけ、精霊神様の眠る≪ テンクゥリア ≫へ主人様へ連れて行かねばなりません 』
クレイス
「 ……………………テイナが≪ ノクタルルド公国 ≫を出て行く……。
………………その事を私に伝える為に態々── 」
白狼神皇
『 クレイス・セイクラント・エルシムグレオ──、貴殿は我の主人様に良く尽くしてくれました。
その功績に褒美を与える為に来ました 』
クレイス
「 褒美? 」
白狼神皇
『 そうです。
我は貴殿が相応しいと判断しました。
精霊神様の祝福と加護を授かっている為、主人様の戦闘能力は低いのです。
鍛えても大して期待は出来ません。
《 フィールド 》で怪物,魔物と遭遇してもまともに戦えません。
実体化の出来ない現在の我では戦闘で主人様を助ける事も守護る事も出来ません── 』←─ 大半が嘘
クレイス
「 それだと≪ ノクタルルド公国 ≫を出るのは無謀な事だし、難しいと思うが── 」
白狼神皇
『 だからこその貴殿です。
戦闘経験が豊富で強い貴殿に、我の主人様の剣となってほしいのです。
“ 攻撃は最大の防御 ” と言うでしょう。
怪物,魔物と遭遇した時には、貴殿に倒してほしいのです 』
クレイス
「 私にテイナの専属騎士になれと言う事か? 」
白狼神皇
『 専属騎士ではなく──、我の主人様に生涯遣える隷属となってください 』
クレイス
「 れいぞく?? 」
白狼神皇
『 そうです。
我の主人様に絶対の忠義,忠誠を誓い、絶対に裏切れない絶対服従の隷属契約を交わしてください。
王族,貴族に主人様の情報を流されても困りますし、王族,貴族との縁を切ってもらいます。
主人様に人生を捧げ、主人様の為だけに生きてください。
貴殿には荷が重過ぎますか? 』
クレイス
「 ………………絶対服従の隷属…………私の人生をテイナに捧げる…………。
少なくとも≪ ノクタルルド公国 ≫を出て≪ テンクゥリア ≫へ到着する迄はテイナと旅が出来る──という事だな? 」
白狼神皇
『 そうですね。
≪ テンクゥリア ≫に到着した後も旅は続きますけど──。
貴殿が強く望むのならば、≪ テンクゥリア ≫で隷属契約を解いても構いません 』
クレイス
「 ………………≪ ノクタルルド公国 ≫を出るには、それなりの準備が必要となるが──。
テイナの支援者として私が何とかしよう。
これでも一応、公爵令息の端くれだからな。
テイナの隷属になる件、受けよう 」
白狼神皇
『 安心しました。
これで随分と心強くなります。
では早速、隷属契約を始めます。
精霊神の眷属白狼神皇が承認する。
クレイス・セイクラント・エルシムグレオを──我の主人、ソナタエイミの隷属とす──。
クレイス・セイクラント・エルシムグレオに精霊神の加護,我──白狼神皇の加護を与えん。
此処に隷属契約を結ぶ── 』←─ 全てデタラメ
クレイスの全身が光に包まれる。
クレイスに精霊神と白狼神皇の加護が与えられたのだ。
白狼神皇
『 左手の薬指を見てください。
契約紋が刻まれました。
今から貴殿は主人様の隷属です。
然し、主人様には「 隷属になった事 」は伏せてください。
異世界人である主人様には “ 隷属 ” は抵抗の有る言葉らしいので── 』
クレイス
「 分かった。
テイナには今迄通りに護衛を務める騎士として接する事にする。
──それで、テイナを連れて《 王城 》を出立する時期は決めているのか? 」
白狼神皇
『 年内には──。
現在は6月下旬ですから、9月下旬には準備を終え、10月の第1土日には《 王城 》を出立したいですね 』
クレイス
「 3ヵ月か──。
間に合わせよう。
《 城下町 》を抜け、≪ 王都 ≫を出たら先ずは≪ エルシムグレオ領 ≫へ向かおう。
途中の≪ 街 ≫で馬車を降りる。
馬車にはそのまま≪ エルシムグレオ領 ≫を目指してもらい──、私達は《 冒険者登録 》を済ませ、冒険者として旅をしながら≪ テンクゥリア ≫を目指すのはどうだ?
馬車を買っても構わないしな 」
白狼神皇
『 救世主である事を隠し、冒険者として旅をするのは良い案だと思います。
髪と瞳の色を変るだけでも誤魔化せるでしょう。
≪ テンクゥリア ≫を目指す計画は、準備期間に話し合いましょう。
精霊も協力をしてくれますから、失敗する事はほぼほぼ無いと思います 』
クレイス
「 精霊も味方なのか? 」
白狼神皇
『 我は精霊神様の眷属ですから、精霊も協力的ですよ。
快く主人様の為に張り切ってくれます。
ただ……精霊が張り切り過ぎると天変地異が起きてしまいますからね。
なるべく穏便に計画を成功させたいのです。
その為には信用に値する人間──貴殿の協力が必要でした 』
クレイス
「 精霊神の眷属の眼鏡に適ったいう事か。
光栄な事だな。
私に白羽の矢を当ててくれた事──感謝する 」
白狼神皇
『 我は協力を得る側──。
主人様に遣える事を承諾してくれた事には感謝しています。
共に誠心誠意,全身全霊で主人様に遣えましょう 』
口は動いていないのに表情だけは豊かだ。
クレイスは就寝する迄、白狼神皇と話をする事になった。
◎ 訂正しました。
元素魔法 ─→ 元素魔法
忠誠を誓い、─→ 忠義,忠誠を誓い、




