第4話:チーム・バレット結成
ミッション失敗から、三日。
訓練室には、銃声が鳴り響いていた。
「――遅い! レメゲトン、撃ち遅れてる!」
「おいおい、ちょっとは休ませろよ!」
リタは壁に設置された動くターゲットに向かって、二丁の銃を打ち込んでいた。
汗が髪を額に張り付き、息も荒い。それでも、止める気配はなかった。
ユリシーズが静かに口を挟む。
「正確さが落ちている。休息も訓練のうちだ、リタ」
それでも彼女は、トリガーを引く。
――初陣で、失敗した。
その悔しさが、今も体の奥でくすぶっている。
「おまえら、うるさいっての。訓練なら屋外でやってくれよな」
静かな声が訓練室の入口から響く。
レオ・ガーディアンがスナイパーライフルを肩にかけ、壁にもたれていた。
「……何の用?」
「司令部から通達だ。“チーム・バレット”――本日付で正式編成だってさ」
リタは目を見開く。
「え……でも、私は――」
「ミスは関係ないってさ。戦場じゃ、やられなきゃ合格なんだとよ。皮肉なもんだ」
少し遅れて、クロエ・フランメが後ろから顔を出した。
「ほらほら、チーム結成記念にケーキでも買いに行こうぜ? ちょっとは甘いもん食わなきゃ死ぬぞ」
リタは視線を落とす。拳を握る。
だが、その手は震えていなかった。
「……分かった。じゃあ行こう」
その夜、訓練棟の屋上。
隊員用の補給食を並べて、ささやかな“結成パーティー”が開かれていた。
リタはその真ん中で、初めて笑っていた。
クロエは手品のように火を灯し、レオは無言でデータパッドをいじっている。
「へぇ……リタって笑うと、子どもっぽいんだな」
「クロエ、そういうの言うと嫌われるぞ」
「は? かわいいって意味で言ったのに!」
レメゲトンとユリシーズも口々にからかい始める。
「なんなの、みんなして……!」
笑い声が、屋上に響いた。
その時――通信が鳴った。
『至急、黒域0312にてノワール暴走の兆候。
第七部隊“チーム・バレット”、出動を要請する』
空気が、一瞬で引き締まる。
「……甘いのは、ここまでか」
レオが銃を構え、クロエが火炎砲を背に負い直す。
リタは、二丁の銃を手に取った。
もう迷わない。今の私は、独りじゃない。
「――チーム・バレット、出動!」
(第4話・了)