表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

第15話:敵も味方も涙する夜

 黒の巨獣が、崩れた。


 レメゲトンとユリシーズの同時射撃。

 リタの意志が引き金に宿り、黒の記憶を構成していた“未練”が霧のように消えていった。


 


 戦いの残響が消えたあと、アインはその場に膝をついていた。


 


「……やっぱり、君は強いね。

 僕はずっと……“壊れた記憶のかけら”でしかなかったのに」


 


 彼の身体は少しずつ透明になっていく。

 黒の記憶の本体――“記憶の樹”が浄化され、彼もまた“不要な断片”として消えようとしていた。


 


「アイン……!」


 


「君は、君の記憶を受け入れた。

 でも僕は……最後まで、自分の過去に縛られていた」


 


 アインの目に、かすかに涙が浮かぶ。


 


「君の父は、記憶の重さを“君に託すこと”で逃げたかもしれない。

 でも君は、それを選んで、超えた」


 


 レオがそっとリタに寄り添う。


 


「選んだ、ってのがでかいな。誰かに押しつけられたんじゃない。

 自分で選んだんなら、それはもう、誰のせいでもないってことだ」


 


 リタは静かにうなずく。


 


「ありがとう、アイン。あなたは“黒の記憶”じゃない。

 あなたは……“忘れられなかった想い”だよ」


 


 アインの目が、最後に静かに閉じられる。


 


 そして彼は、風のように消えた。


 


 


 夜が明ける。


 黒域0401の空には、もう黒い雲はなかった。


 記憶の樹も、すべて溶けて消えた。

 残ったのは――「何も失われていない」という静けさだった。


 


 輸送機の中。


 


 レオが言う。


 


「なぁリタ。これから、どうする?」


 


 リタは、少しだけ笑って、こう答えた。


 


「まだ撃ってない。“最後の弾丸”が、残ってる」


 


 レメゲトンが応える。


「撃つタイミングは……自分で選べよ。今度こそ」


 


 ユリシーズも続ける。


「その一発が、君の生き方になる。――覚悟は、君のものだ」


 


 チーム・バレットは、2人になった。

 けれどそこには確かに“誰もが戦って残したもの”が息づいていた。


 


 それぞれが、涙を流した夜。

 敵も、味方も、そしてこの世界さえも――


 “記憶”という名の痛みと、少しだけ向き合えた夜だった。


 


(第15話・了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ