表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

諦め

それにしても授業は退屈なのだ。


希は結構真面目で勉強もできる。

それに対して私は勉強は苦手。


走るのはさすがに私のほうが速かったけど、吹奏楽部の希も決して運動音痴ではない。

「何で吹奏楽部がランニングしてるの!?」って思ったものさ。


つまり勉強ではぼろ負けで運動でもあまり差をつけられない、それが双子の姉の私。

同じ高校に受かったのが奇跡みたい。


でも、だからこそ「絶対走りでは負けたくない」と思って陸上に打ち込めたんだよね。

希の存在は、私を奮い立たせてくれた。


じゃあ、私は希の力になれていたのかな…。

考える時間が増えると、後悔ばかりが押し寄せてくるね……。


放課後、陸上部に顔を出してみた。

中学時代に一緒だった池上さんがいる。


仲良くはしていたけど、時々すごい目で睨んできてたんだよね。

私のほうが常にタイムが上だったからかな。


その差は微妙なものだったけど、なぜか池上さんには負けないって気がしてた。

池上さんは「宇佐美さんさえいなければ」って思ってたのかもしれない。


仲良くできたのも、希のアドバイスに従って池上さんに接したからだ。

本当に希にはお世話になったなあ。


私は、池上さんの横でスタートの姿勢を取る。

池上さんと一緒にスタートを切る。


良い感じにスピードに乗る。

やっぱり走るのは楽しい。


そう思っていた時、後ろから風を感じた。

そして、私は抜かれた。


たった2週間でこんなに伸びるもの?

私も同じ練習をしていたら……。


私は、学校を後にして家に向かった。


次の日も、私は希と一緒に学校に行った。

昨日話しかけてくれた希の中学校からの友達は友利さん。


友利さんは自分の友達と希を混ぜて談笑している。

希もそこに溶け込みかけているようだ。


頼りになる人がいるのはいいね。

希には高校生活を楽しんで欲しい。


そこに溶け込めない私は、やることがなくなった。

そこで私は、希が好きな桜井君に近づいてみる。


生前の私には男子の友達もいたけれど、やっぱり男子同士の会話は気になる。

女子も女子だけの時と男子がいる時とでは会話の内容変わるもんね。


男子はいったい何を話しているんだろう、と思って聞き耳を立ててみたが、

テレビやネット、部活の話など他愛のない話ばかりだった。


もっと下ネタ全振りみたいな会話してるのかと思ったのに、そんなもんか。

話題になっているテレビを私は見ていないし、インターネットなんて触れない。


それに知らない部活の話を聞いても仕方ないし(こちらから質問ができるならまだしも聞いてるだけだし)、

陸上部の話を聞くのは……少し辛い。


そんなわけで、私の興味は一気に消え失せた。

まあまだ新しいクラスになって2週間だから、打ち解け切っていないのかな。


もうしばらくしたら、私の知らない世界を聞かせてくれるのかもしれない。


そんな期待を胸に抱きながらも、今が退屈であることに変わりはない。

友達と話すこともできないし、このままここにいても退屈な授業が待っているだけだ。


そこで私は、外に出ることにした。


前々から私は考えていたんだ。

私は自由だ。


学校に行く必要もないし、食べなくても平気だ。

どこに行くにも電車賃とか要らないし、いくら歩いても疲れることもない。


空も飛べるんだから、外国にも行ける!


希をもうしばらく見守ったら、成仏する時まで気ままに行きたいところに行こう。

そう考えたら楽しくなってきた。


とりあえずは、隣町の繁華街に行ってみようかな。

休日に何度か友達と一緒に行ったことはあるけど、平日の昼間はどんな雰囲気なんだろう。


実際に買うことはできないけど、気が済むまでウインドウショッピングをしよう。

そう思って、私は教室の窓から出て行った。


それから空を飛んだり知らない道を歩いたりしながら隣町に向かった私だが、

それを果たすことはできなかった。


隣町に向かってずんずん進んでいると、突然全身が引っ張られる感覚に襲われたのだ。

「!?」と思って体を見ても何もない。


もちろん誰かに引っ張られているわけでもない。

ただそこから先に体が動かないのだ。


それでも無理に体を前に動かした時に味わったのは、息苦しいという感覚に近いもの。

そして、それ以上先には進めなかった。


自分で自分の首を絞めている時のように、それ以上はどうしてもできないのだ。

何だこれは?


私は半径1㎞程度を移動できるゆる~い地縛霊なのか?

それとも何かから離れることができないとか……


もしそちらだったとしたら、何かは「希」だろう。


両親は電車に乗ってはるか遠くに仕事に行っている。

他の可能性もいろいろ考えてみたが、やはり土地か希に縛り付けられているとしか思えなかった。


その次の日、私は実験をしてみることにした。


希から一定距離以上離れることができないのだとしたら、希が動いたら私に影響があるはず。

そう思って私は、希が登校する時間の前に学校から反対の方向に向かった。


そうして息苦しくなるかならないかのギリギリのところで、私は希が動き出すのを待った。


このままここにいて息苦しくなるようであれば、希から一定の距離の中にいなくてはいけないことになる。

何の影響もなければ、私はゆる~い地縛霊だ。なんだそれ。


などと思っているうちに、予想通り私は息苦しくなった。


学校の方向に向かうと、息苦しさが楽になる。

さっきまでいたところに戻ろうとしてもできない。


どうやら私は希から離れられないらしい。

これは希に取り憑いてる、ということになるのか?


ゆる~く。


旅行の夢が絶たれた私は、少しがっかりしながら学校へ向かった。


お読みいただきありがとうございます!

よろしければ、下の☆から評価していただけると嬉しいです。

星1つから5つまで、正直な感想をお寄せください。

ブックマークもしていただけると本当に嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ