第78話 いつか還る場所へ
帝都の空が裂けた。
黒い雲を割り、黄金の光が世界を貫くように射し込んだ瞬間、蒼真の一閃
――《黄昏剣・断界》は、虚無の結晶と共にカイゼルの存在そのものを断ち切った。
地に膝をつき、カイゼルは歪んだ笑みを浮かべたまま崩れ落ちた。
「……やはり、お前たちは“希望”だったのかもしれないな」
それが、彼の最期の言葉だった。
沈黙。
風すら止まったような静寂の中で、凛花がふらりと倒れかける。
「凛花っ!」
駆け寄る蒼真。彼女の小さな体を支えるその腕には、震えがあった。
「平気……ちょっと……疲れちゃっただけ」
それでも、凛花は微笑んだ。無理をしてでも、兄を安心させるその笑顔は、強く、そして儚い。
結晶が砕け、帝都を覆っていた結界が解除される。
市民たちがひとり、またひとりと顔を上げ、静かに蒼真たちの姿を見上げた。
――その視線に、恐れも、憎しみもなかった。
ただ、敬意と、安堵と、そして、希望があった。
凛花はもう“世界を救うための器”ではなく、
一人の人間として、ようやく世界に受け入れられたのだった。
帝国の暫定議会が設立され、暴走した魔術研究と虚無の力の全容が明かされた。
蒼真と凛花はその席に呼ばれることなく、静かに帝都を去る準備を進めていた。
ヴァイスは二人を見送りに来た。
「剣の扱いはだいぶ様になったな、蒼真」
「あんたの教えのおかげだよ。……ありがとう」
「礼など要らん。……だが、もし今後剣を振るうなら、守るべきものを忘れるな」
「ああ。俺は、どこまで行っても“お兄ちゃん”だからな」
笑って答える蒼真に、ヴァイスもまた微笑み、背を向けた。
一方で、凛花は城下の広場で小さな子どもたちと話していた。
「ほんとに凛花ちゃんが、あの魔物倒したの?」
「ううん。倒したのはお兄ちゃん。でもね、わたしも負けなかったよ。ちゃんと、お兄ちゃんの隣に立ってた」
その言葉に、子どもたちは歓声を上げた。
凛花が笑う。その笑顔は、ほんの少し大人びて見えた。
旅立ちの朝。
蒼真は凛花と共に、小さなリュックを背負って城門を出る。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「これからは、ふたりで、どこに行くの?」
蒼真は空を仰ぐ。
「……行きたいところに、行こう。凛花が“見たい”って思う世界を、俺が見せてやるよ」
「うんっ!」
笑い合って、兄妹は再び歩き出す。
戦いのない世界へ。
誰かの決めた運命ではなく、自分たちの選んだ未来へと――。
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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