第76話 黄昏の帝都へ8
神殿の地下から地上へ戻った蒼真たちは、帝都の外れにある古い宿屋に身を寄せていた。
すべてが明日決まる。
世界の行方も、凛花の運命も、そして兄妹の旅の終わりも。
夜の帳が下りるころ、蒼真は剣を背負って外へ出た。
空は薄く星を宿し、どこか静かすぎるほどに澄んでいる。
「……明日が、来なければいいのにって、思ったことあるか?」
背後から声がして、振り返るとそこにはヴァルトがいた。
蒼真は苦笑する。
「……そんなこと、何度も思った。でも、凛花を抱えて逃げて、ここまで来て、今さら逃げたら、俺は“兄”じゃない」
「……そうだな。だが、明日はお前たちだけで戦う必要はない」
ヴァルトは小さく何かを取り出す。
それは、蒼真が幼いころに母からもらった、白銀の羽根のペンダントと同じ形をしていた。
「これは?」
「お前の母は、かつてこの世界の“希望”だった。そして今、その意志はお前たちに託されている。この羽根は、最後の“鍵”だ」
「鍵……?」
「選択の瞬間、これが道を示す。たとえ、光と影が裂かれようとも」
蒼真はそれを受け取り、強く握りしめた。
そのころ、凛花は宿の屋根裏で空を見上げていた。
膝を抱えて、ただ静かに空を見ていた。
「……怖くないって言ったけど、本当はすごく怖いの」
小さな声で、空に囁く。
「でもね、お兄ちゃん。わたしね、幸せだったよ。ずっと、お兄ちゃんと一緒で……ずっと、守ってくれて……」
ぽろりと、涙が頬を伝う。
「明日、どんな結末でも、わたしは、お兄ちゃんを信じるから……」
その声が夜に溶けて消えるころ、蒼真は屋根裏へと登ってきた。
「凛花」
「……お兄ちゃん……」
凛花が顔を上げると、蒼真は隣に腰を下ろし、夜空を見上げる。
「……世界がどうなろうが、お前を一人にはしない。絶対に、だ」
「うん……」
「お前を守るのは、俺の剣だけじゃない。――俺の心だ。覚えておけ」
凛花はそっと蒼真の腕に寄り添う。
「お兄ちゃん……ありがとう。わたし、最後まで一緒にいるよ」
「……ああ」
星の瞬きが、ふたりを優しく照らしていた。
夜が明ければ、すべてが決まる。
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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