第75話 黄昏の帝都へ7
帝都の最深部、かつて“神殿”と呼ばれた遺構の地下。
そこに、今は帝国皇帝が隠れ住むという。
蒼真と凛花、そしてヴァルトはその場所へと足を進めていた。
空はどんよりと曇り、街の人々は息を潜めるように日々を送っている。
帝国の中枢では、何かが、確実に動き始めていた。
「……ここが“始まりの神殿”」
ヴァルトの声は低く重い。
苔むした石の階段が、ずっと下へと続いている。
二人がその階段を降りるたび、空気が徐々に重く、そして澄んでいく。
やがて到着した大広間。
そこにいたのは――黒きローブをまとう一人の男。
「ようこそ……異邦の子らよ。そして“光を継ぐ者”よ」
男の声は静かで、どこか寂しげだった。
彼こそが、帝国を統べる者――皇帝ルシファレ。
「お前が……!」
蒼真が一歩前に出る。が、ルシファレは手を上げてそれを制した。
「怒るのも無理はない。だが、今は話をさせてくれ。――君たちの“真実”についてだ」
ルシファレは手をかざし、空間に浮かび上がる一枚の光景を見せた。
それは――赤子の凛花を抱いた若い女性。そして、その傍らに立つ、異世界の男。
「……父さん……?」
蒼真が小さく呟いた。
「これは、君たちの両親だ。異世界から召喚され、特別な存在としてこの世界に深く関わった。凛花は、この世界とあの世界、両方の血を引く唯一の存在だ」
「じゃあ、俺たちは……」
「凛花は“光の継承者”として、世界の理を変える鍵。蒼真、お前はその護り手――“影の剣”として、この役割を託された」
皇帝の言葉に、兄妹は言葉を失った。
「この世界は今、崩壊の危機に瀕している。だが、凛花が覚醒し、その力を正しく使えば、全てを繋ぎ直すことができる。――だが、それには対価がいる」
「対価?」
皇帝の目が凛花へと向けられた。
「君の命だ。力を完全に解放すれば、君自身は“存在の境界”に呑まれ、この世界から消える」
「なっ……!」
蒼真が叫ぶが、皇帝は静かに続ける。
「だが、それを避ける方法もある。
君たちが共に、最後まで進み、選択するのだ“再誕”か“破壊”か」
凛花が、そっと蒼真の手を握る。
「お兄ちゃん……大丈夫だよ。
わたしは、どんな選択も、あなたと一緒にする。ずっとそうだったし、これからも」
蒼真は歯を食いしばる。怒りも、混乱も、悲しみもすべてを飲み込んで――
「なら、俺も決めた。凛花を、世界も、どっちも絶対に救ってみせる。
――この剣で!」
そのとき、蒼真の背後に黒い風が渦巻き、剣に宿った影の力が形を成す。
「これは……!」
「“影の剣”が本当の姿を現したな。兄妹よ。お前たちの旅は、いよいよ最終の扉へと至る」
皇帝が静かに腕を広げ、光と影の二つの道を示す。
「さあ、選べ“終焉”か“再生”か」
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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