表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/81

第72話 黄昏の帝都へ4

帝都アルガルドは今、静かな嵐の中にあった。

帝国上層部の中で何かが動き出している――それを街の空気が告げていた。


「……兵士の数が増えてるな。道を封鎖してる通りもある」


蒼真は、頭巾を深くかぶって街の様子を探っていた。

凛花はその隣で、小さく囁く。


「お兄ちゃん、わたしたち……見つかったのかな……?」


「いや、まだだ。だが時間の問題かもしれない」


兄妹が礼拝堂で得たクロエの記憶は、ただの思い出ではなかった。

それは“記録された魔術”でもあり、帝国の中枢が何をしようとしていたのかを知る鍵でもあったのだ。


蒼真は短剣を懐に仕舞い、目を細める。


「クロエが命を賭けて残してくれたもの……絶対に無駄にはできない」


だが、そんな彼らの前に、突然ひとりの男が現れた。


「よう。あんたら、少し急ぎすぎたんじゃないか?」


フードをかぶった長身の男。

片目に眼帯をつけ、腰には二振りの細身の剣。

年の頃は二十代後半か、だがその空気は歴戦の剣士のものだった。


「誰だ?」


「名乗るほどの者じゃないさ。ただ……帝国があんたたちを狙ってるのは事実だ。

手を貸してやれるかもしれん」


蒼真は警戒の色を解かずに言葉を返す。


「“貸し”ってのは、どんな条件だ?」


「条件? ああ、そうだな。今すぐじゃなくてもいい――だが、あんたに剣の“本質”を教えてやりたい。それが俺の望みだ」


「……剣士か」


蒼真の目が細まる。

その一瞬の目つきで、男もまたニヤリと笑った。


「俺の名はヴァルト。帝国にいた剣の教官だ。もう抜けたがな」


その名に、蒼真は小さく目を見開く。

かつてヴァイスから聞いたことがある――“ヴァルト”、帝国最強の剣士のひとりと謳われた存在。


「なんで……そんな奴が俺たちに?」


「お前の剣筋が面白かった。あいつ――ヴァイスの弟子だろ? なら、見過ごせねぇよ」


その瞬間、背後から爆音が轟いた。

兵士たちがこちらに迫ってきている。魔導兵が混じっているのか、魔力の気配が尋常ではない。


「選べ。ここで戦って散るか、俺と来てもう一度立ち上がるか」


凛花が蒼真の腕をぎゅっと握る。


「お兄ちゃん……!」


蒼真は静かに、頷いた。


「案内しろ。俺たち、まだ終わってねぇからな」


ヴァルトが笑い、背を向ける。


「そうこなくちゃな。始まりの剣は、まだお前を見放しちゃいねぇ」


帝都の裏路地を走り抜ける三人の姿。

その背後で、帝国は着実に包囲網を狭めていた。


――だが、それでもなお、兄妹の目に宿る光は、消えることはなかった。

読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ