第71話 黄昏の帝都へ3
帝都アルガルドの地下には、かつて神殿だったという遺構がある。
今はひとけもなく、忘れ去られたその場所へ、蒼真と凛花は地図を頼りに降りていった。
「……ここか」
崩れかけた石造りの礼拝堂。
天井から差し込む一筋の光が、中央の祈祷台を照らしていた。空気は重く、ひんやりと澱んでいる。
「お兄ちゃん、ここ……なんだか、怖い」
「俺がいる。絶対、守るから」
蒼真は凛花の手を握りながら、一歩、また一歩と進む。
しかしその瞬間――
ガキィン!
空間が揺れたかと思えば、祈祷台の奥から石像が動き出した。
「“影の番人”か……!」
巨大な甲冑のようなその影は、魔力を帯びた斧を振り上げ、無言で蒼真に襲いかかる!
「凛花、下がってろッ!」
蒼真は咄嗟に地を蹴る。
《風穿槍》――風の魔力で槍を創り出し、突きを繰り出すが、番人の硬い外殻に弾かれる。
「クソッ、硬い……!」
だが、蒼真の脳裏に、かつてヴァイスから教わった教えがよぎった。
――技を繋げ。型に囚われず、己の命で剣を編め。
蒼真は深く息を吸い、右手に《風穿槍》、左手に《断雷剣》を重ね合わせる。
「……いける!」
《風雷裂穿》――風と雷を重ね合わせた、初の複合技。
槍のように伸びた剣が、雷光とともに影の番人の胸を貫いた。
「……ッ!」
番人の動きが止まり、音もなく崩れ落ちる。
その瞬間、礼拝堂の奥にあった石壁が静かに開いた。
「通れた……?」
だが、そこに広がっていたのは――記憶の光景だった。
蒼真と凛花は気づけば、かつての研究施設の幻影の中にいた。
そこには、まだ幼いクロエの姿があった。研究者たちに囲まれ、泣きながら、叫んでいた。
「やめて……っ、凛花に触らないで!」
クロエは、その身体を盾にして凛花をかばっていた。
「これは……クロエの、記憶……?」
凛花は震えながら、手を伸ばす。
「クロエちゃん……ごめんなさい、わたし、守られてばかりだった……」
そのとき、クロエの記憶が言葉を紡ぐように、凛花の中へと流れ込む。
――凛花。あなたは、私の願い。
――あなたが笑えるように、生きて。
――そして、蒼真くん。どうか、凛花を……ありがとう。
光が溶けていく。
兄妹は静かにその場に立ち尽くした。
「……クロエ」
「……俺たち、絶対に負けない」
記憶の礼拝堂を後にする兄妹の背に、光が一筋、差していた。
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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