第70話 黄昏の帝都へ2
翌朝、帝都は霧に包まれていた。
静かな霧の向こう、兄妹は地下街へと向かう。
ゼクスが指定した「情報屋」がいるという場所――《影の集会所》。
「この扉の向こう……だと思う」
蒼真は木扉に手をかけ、凛花の方を見た。「怖くないか?」
「お兄ちゃんと一緒なら、大丈夫」
その一言で、蒼真の胸にかすかな力が宿った。
ギィィ、と扉を開くと、そこには…驚くほど静かな空間が広がっていた。
ろうそくの火がゆらめき、壁には古びた地図と巻物。中心に座っていたのは、目元に刺青を持つ中年の男だった。
「……ゼクスの紹介か」
「はい、蒼真と、妹の凛花です」
「なるほどな。噂は聞いている。……“記憶の継承者”の兄妹、だろ?」
蒼真は息を呑んだ。なぜ、その言葉を知っているのか。
「帝国はな、凛花の中に眠る“記憶の書”を求めている。世界を動かしていた大いなる記録、それを封じる力が……妹に宿っている」
「……記憶の書……!」
「それを暴き、使おうとしているのが《皇帝エゼリウス》だ。あの男はもう人ではない。魔術と機械に魂を縛られた“記憶の亡者”だ」
男は古びた写本を差し出した。そこには、帝国が過去に“記憶”という概念に対し行ってきた数々の実験、そして《鍵》の存在が記されていた。
「その《鍵》とは、凛花の深層記憶。そして、君自身の“強き願い”だ」
「願い……」
「戦う力だけじゃない。お前が何を守りたいのか、それが問われる」
男は立ち上がると、隠されたルートの地図を差し出した。
「地下礼拝堂……そこに、君たちが追う真実の断片がある。だが、そこには《影の番人》が立ち塞がる。クロエも、それに触れた者のひとりだった……」
クロエ――。
凛花の目が潤む。「クロエちゃん……」
「彼女の最後の記憶も、礼拝堂の奥に封じられている。君たちなら……それを継げるだろう」
その夜、兄妹は再び静かな屋根裏で寄り添っていた。
蒼真は、静かに語る。
「凛花。お前は何も悪くない。力を持っているだけで、世界に否定されるなんて、おかしいんだ」
「でも……みんな怖がるよ?」
「なら、俺たちで世界を変えればいい。お前の優しさを、ちゃんと伝えられる世界に」
「……うん、お兄ちゃん……」
凛花はそっと、蒼真の腕に身体を預けた。
その瞳に、炎のような決意が宿っていた。
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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