第69話 黄昏の帝都へ
「……ここが、帝国の中心地……」
夕暮れの空に、黒く鋭く突き立つような尖塔。
灰色の石で組み上げられた城壁と、機械仕掛けの監視塔が立ち並ぶ帝国の首都
《アルガルド》――蒼真は、凛花の手を握りながら、その不気味な威圧感に喉を鳴らす。
「お兄ちゃん……ここ、怖い」
凛花の小さな声が震えている。無理もない。
街全体に漂うのは、人の温もりよりも監視と秩序、冷えきった空気だった。
「大丈夫。俺が、絶対に守る」
蒼真は優しく頭を撫でると、フードを深く被りなおし、門を潜った。
追手をかわしながら旅を続けてきた兄妹が、ついに帝国の心臓部にたどり着いた。
街の通りは賑わってはいたが、どこか空虚だった。
華やかな市場や噴水広場も、その背後には必ず“帝国騎士”の姿があった。
「偽名は通用するが、長居はできない」
そう警告したのは、街の地下組織《風の目》の一員、青年。
彼はかつてクロエとつながりがあった人物で、兄妹の潜入を助けるべく動いていた。
「ここに来たってことは、覚悟はできてるってことだろ?帝国の“実験施設”、その座標を渡す。だが中に入るには鍵がいる」
「鍵?」
「《選ばれし記憶》の欠片……君たちの中に、それが眠ってるはずだよ」
ゼクスの言葉に、蒼真は息を呑む。
――あの、夢の中で見た炎の剣。
――凛花が泣きながら何かを叫んでいた記憶。
「……思い出す必要があるのか」
「ただ戦うだけじゃ、終わらない。これは……お前たち自身の“記憶”の物語だ」
ゼクスはそれだけ言い残し、地下通路へと姿を消した。
その夜。借りた隠れ家の屋根裏部屋。
凛花は眠れずに窓の外を見つめていた。
「お兄ちゃん……この街、すごく綺麗だけど……綺麗なだけで、冷たいよね」
「……ああ。人の笑顔が、全然ないな」
「凛花が力を持ってるせいで……こんなふうに、みんなに怖がられるのかな」
「それは違う。凛花は、誰よりも優しい。だから、俺がこの世界にそれを証明してみせる」
月明かりの下、蒼真は凛花の小さな手をそっと握る。
その絆は、決して折れなかった。
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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