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第55話 記憶の迷宮7

光の扉を抜けた先に広がっていたのは、淡い霧が立ち込める不思議な森だった。

静寂の中に、小さくさえずる鳥の声や、かすかな水音が響いている。


けれど――何かが「おかしい」と蒼真はすぐに感じた。


「……どこか、現実味がない」


木々の葉は同じ形で揺れ、水面の波紋はまるで繰り返しの映像のようだった。


凛花は手を握りながら、不安げに蒼真の顔を見上げる。


「ここって……さっきまでと、時間の流れが違う気がする」


蒼真は小さく頷いた。

「ここは、意識を欺く“幻影”の森だ。きっと、また俺たちの記憶や感情が試される」


数歩、森に踏み出した瞬間――。


風が巻き起こり、霧が弾けるように晴れた。


そして、木々の間から現れたのは――


「……クロエ!?」


そこに立っていたのは、確かに彼らの命を救い、自らを犠牲にして散ったはずの少女だった。


凛花が息を飲み、蒼真は無意識に一歩前に出る。


だが、彼女は微笑みながら言った。


「どうしたの? 二人とも、そんな顔をして」


彼女の声も、しぐさも、すべて本物のクロエそのものだった。


だが、蒼真は剣に手をかけた。


「……やめろ。クロエは、もう……!」


しかし凛花が小さく声を上げた。


「お兄ちゃん、でも……本当にクロエだったら……どうするの……?」


揺れる感情と、鋭く刺さる問い。


蒼真は目を伏せた。


あの日――クロエの手を離した自分を、ずっと責めてきた。


その後ろから、再び別の影が現れる。


今度は――蒼真の母だった。 


「……あなたたちは、いつまで怯えて逃げているの?」


「母さん……!?」


凛花は完全に動きを止めてしまった。


(――違う、これは幻だ。俺たちの記憶や心の隙間を突いて、揺さぶってきてる)


蒼真は、凛花の手を取り、強く言い切る。


「凛花、これは試練だ。俺たちの“信頼”を試す幻なんだ」


「でも……でも、どうしてそんなに本物みたいに……」


「それだけ、俺たちが“本当の気持ち”から目を背けてきたってことだ。だから……乗り越えよう」


その言葉に、凛花の目に涙が浮かんだ。


「うん……! お兄ちゃんと一緒なら、きっと大丈夫……!」


蒼真は剣を抜き、母とクロエの幻影に向かって構える。


「たとえどんなに似ていたって、本物じゃない! 俺たちは、前に進む!」


剣から光が溢れ出し、凛花の魔力と共鳴して広がっていく。

兄妹の“絆”が力となって、幻影を霧のように吹き飛ばした。


すべてが消えたあとの静寂の中で、凛花がぽつりとつぶやく。


「……私、ずっとクロエさんのこと、後悔してたの。もっと早く、ちゃんと伝えればよかった」


「でも、それを認めたなら、前に進める。俺も同じだ」


彼らの言葉を肯定するように、森の奥に再び扉が現れる。


その上には、次なる試練の名が記されていた。


「地竜の眠る洞窟」――試される“力”と“誓い”


「次は、戦いが来るな……」

蒼真が目を細めて言う。


「もう迷わないよ」

凛花も、決意を込めて前を見据える。


兄妹は、次なる試練へと歩み出す――。

読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

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