第47話 風を越えた約束9
朝焼けの光が、石畳の路地を照らしていた。
昨夜の騒動が嘘のように、町は静けさを取り戻している――だが、蒼真の胸の中には、確かな緊張感が残っていた。
「やっぱり……守人は、“凛花”を見て何かを思い出してた」
「うん。あのとき、確かに“詠み人”って……そう言ってた」
二人はリオの元を訪れ、遺跡の場所と、そこに隠された“言い伝え”について訊ねることにした。
リオは、町の古文書を管理する家系に生まれた少女で、蒼真たちと同年代ながらも知識と聡明さを持つ、頼れる相手だった。
「“月祈りの遺跡”……うん、聞いたことある。ずっと前、この町がまだ『リュフタ村』と呼ばれていた頃の遺構よ」
「リュフタ……?」
リオは古びた本を一冊、二人の前に広げた。
そのページには、かすれた絵とともに、こう記されていた。
――月が祈る夜、詠み人は記憶の扉を開く。
闇の中に沈む真実は、風と光が導くだろう。
「これって……」
「ええ、多分だけど、“詠み人”って凛花ちゃんのこと。
記憶と光の力、それがあの遺跡を開く鍵なんだと思う」
蒼真は思い出す。
あの夜、凛花の手に浮かんだ魔方陣。沈黙の守人の反応。そして残された碑文。
「……行くしかないな」
「でも、遺跡の場所は森の奥の“霧の谷”よ。モンスターも出るし、気をつけて」
蒼真は小さくうなずいた。
「ありがとう、リオ。準備が整い次第、出発する」
その日の午後。
兄妹は町の外れの小さな店で、最後の準備を整えていた。
「お兄ちゃん、これ……買ってもいい?」
凛花が手にしたのは、小さな鈴のついた首飾りだった。
魔除けとしても使われる品で、旅の無事を祈るものだ。
「……いいよ。それ、似合ってる」
少し頬を赤らめながら、凛花はそれを首にかけた。
「お兄ちゃんにも、いつかおそろい買ってあげるね」
「そっか、楽しみにしとくよ」
それは、ほんの小さな日常の一幕。
だが、この兄妹にとっては、かけがえのない温もりだった。
そして夕方。
準備を終えた二人は、リオに見送られながら霧の谷へと歩を進める。
リオが最後に手渡してくれたのは、もうひとつの古文書の断片だった。
“霧の結界は、詠み人の記憶と同調して開く。
だが、その記憶が“痛み”を含むならば――封印は試練へと姿を変える。”
「凛花……無理は、するなよ」
「うん。でも、大丈夫。お兄ちゃんがいてくれるから」
霧の中に足を踏み入れたとき、風の流れが変わった。
この先に何が待ち受けているのか――
それはまだ誰にも、わからない。
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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