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第43話 風を越えた約束5

夜明け前の山の空気は澄み渡り、どこか凛とした緊張感が漂っていた。


「今日は、模擬戦をやるぞ。お前が、どれだけ“風”を身につけたか。……剣で示してみせろ」


ガライがそう言った瞬間、蒼真の背筋が自然と伸びる。


相手はもちろん、師であるガライ自身。

これまでの鍛錬の集大成――一切の妥協が許されない“真剣勝負”だった。


「やります……!」


木剣を手に、蒼真は構える。


流れるような構えは、修行前とはまるで別人のように洗練されていた。

重心は低く、意識は“風の道筋”を追うように澄んでいた。



 


ガライが一歩、静かに踏み込む。

その動きは老剣士とは思えない、しなやかさと鋭さを兼ね備えていた。


風が、ざわりと揺れた瞬間――


「来い!」


その声とともに、ガライの剣が閃く。


蒼真も、すかさず反応した。


「“風斬――型一、流破!”」


振り下ろされた一撃を、蒼真は風の流れに身を委ねるように受け流し――

そのまま、逆方向へと“返す”斬撃を繰り出す。


(力で押さない。流れを読んで、受けて、返す!)


木剣と木剣がぶつかり合う音が、谷に響いた。


ガライは瞬時に退き、次の構えを取る。

蒼真も、攻めの型へと移行していた。


「“風閃・影返し”!」


影のように素早く踏み込むと、踏み出した足に合わせて風を巻き起こす。

その流れに乗せて剣を滑らせるように――


ガライの脇へと突きを放つ!


「――面白い!」


老剣士の目に一瞬、喜びの光が宿る。


咄嗟にそれを受け止め、反撃に転じようとしたその刹那――


蒼真の剣が、不意に光を帯びた。


「……!?」


それは、剣の鍛錬だけでは説明できない現象だった。

蒼真自身も、気づいていた。


(これ……“記憶”の力……クロエさんの、記憶が……)


それは、クロエがかつて見た“未来の戦い”の一部。


誰かを守るために剣を振るう“覚悟”と、それに宿る“想い”が、

一時的に蒼真の身体を通して“力”となっていた。


「――“風閃・刃交差はがさね”!」


彼の剣筋が、風と記憶を帯びて、ガライの太刀筋と真正面から激突する!


一瞬の沈黙――


木剣が宙に舞い、ガライの手から落ちた。




 


沈黙の後、ガライは静かに口を開いた。


「……勝ったな」


「……!」


「技は未熟だ。だが、心と剣が重なった。

その一撃は、もはや“流派”を越えていた」


「ガライさん……」


「今のお前の剣に、名はまだない。だがいつか、“己の剣”になるだろう。

“守るための剣”という、ただ一つの信念がある限り――」


蒼真は、木剣を胸に抱くように立ち尽くしていた。


剣を振ったのは、己のためではない。

凛花を、誰かを、傷つけさせないため。


――それが、兄としての“決意”だった。


 

 


その日の夜。

凛花は焚き火の前で、静かに蒼真の手を取った。


「お兄ちゃん……すごくかっこよかった」


「そ、そうか……?」


「うん。……凛花、もっとがんばるね。お兄ちゃんの“後ろ”に、ずっといたいから」


蒼真は、言葉にならず、ただ微笑むしかなかった。


だが心の中には、確かに一つの“灯火”がともっていた。


――明日が、来る。

戦いが待っていようと、悲しみがあろうと。

この手を離さず、進んでいく。


 


風は、まだ吹いている。

兄妹の旅は、確実に“前”へ進んでいた。

読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

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