第41話 風を越えた約束3
遺跡の奥へと進んでいく蒼真の足取りは、徐々に重たくなっていった。
剣を握る手は汗ばんでおり、心の奥で何かがざわめいている。
(……息苦しい……これは、魔力の影響か?)
だが違った。これは――彼自身の“記憶”が揺れている。
静寂のなかで、ふと聞こえてくる声があった。
「――にい……ちゃん……」
「!? 凛花……!?」
思わず振り返る。だが、そこに妹の姿はない。
代わりに、霧の向こうに立っていたのは――自分自身だった。
いや、それは“かつての蒼真”だ。
今より幼く、怯えた目で剣を握っていた少年。
その隣には、傷だらけで倒れるクロエと、血を流す凛花の姿。
「お前には守れなかった……誰も救えなかった。
それでも剣を振るうのか? また、大切なものを壊すために?」
その声は、自分自身の心の奥底から響いていた。
蒼真は剣を構えることができなかった。
(――違う……! 俺は……!)
だが、影の蒼真は構わず踏み込んでくる。
その剣は迷いなく振るわれ、恐ろしいまでに的確だった。
まるで、蒼真の思考と行動のすべてを読み切ったかのように。
「お前は、恐れている。大切な妹を、また失うことを」
ズバッ!
影の剣が頬をかすめ、赤い線が走る。だが、それ以上に胸を裂くのは“言葉”だった。
「お前に、凛花は守れない。クロエのように、また誰かが犠牲になる。
だったら最初から、誰とも関わらなければよかった!」
「黙れぇっ!!」
初めて、蒼真は声を荒げた。握った剣が音を立てて震える。
「……あの日、何もできなかった。それは事実だ。
でも、俺はそれでも凛花を守ると決めた。クロエの命の意味を、無駄にしないって……誓ったんだ!」
心に火が灯る。
剣を振る。影の剣と交わるたびに、霧が晴れていく。
その剣は、技術でも力でもない――ただ、凛花を守りたいという“意志”から生まれた剣だった。
「俺は……恐れていた。失うことが怖かった。
でも今は、それ以上に“守りたい”。俺の剣は、そのためにあるんだ!!」
その瞬間、蒼真の中に風が吹き抜けた。
彼の剣が微かに光を帯び、刃に風が巻き付くように揺れ動いた。
――新たな剣技、《風閃・影断》。
風を纏い、記憶の幻影を断ち切る技。
その一閃が、影の自分を貫いた瞬間、遺跡の空間が光に包まれていく。
気づけば、遺跡の外に倒れていた。
傍には、心配そうな顔をした凛花がいた。
「お兄ちゃん……! よかった、無事……!」
蒼真は、微かに笑った。
「……大丈夫。いつもと逆だな。」
凛花が抱きつき、その腕の中で蒼真は誓った。
もう二度と、恐怖に負けない。
――この命が尽きるその日まで、凛花を守り抜くと。
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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