表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/81

第37話 記録の守人たち6

アストレアの渓谷――風がつねに唸りを上げるこの地の奥、岩壁の間を縫うように進んでいくと、不自然に風が静まる場所があった。


そこに佇むのは、巨大な石門。


まるで古代の神殿のような荘厳さを湛えたその門の中央には、風を模した紋章が刻まれている。


クロエは静かに歩み寄り、懐から記録石片のひとつを掲げた。


「ここが“風の記録”が眠る場所です。“風の試練”と呼ばれる結界が張られており、原記録を穢す者は決して中へ入ることができません。あなたたちの“心”が試されます」


「心が……?」


蒼真が眉をひそめたその瞬間、門の前に突如として霧が立ち込め、渓谷の風が静まりかえった。


そして現れたのは――


少年だった。


年は蒼真と同じくらい。

どこか懐かしさを感じる、けれども明らかに“人”ではない、そんな存在。


「“記録の守り手”か……」


蒼真が警戒しながら短剣を構えたその時、その少年は口を開いた。


「問う――君は、なぜ戦う?」


風の精霊のようなその少年は、まるで魂の奥に直接語りかけるように、蒼真の目をじっと見つめていた。


「俺は――」


言葉を探すように口ごもる蒼真。その袖を、凛花がそっと引いた。


「お兄ちゃん……言っていいよ。私、知ってるから」


蒼真は、静かに目を閉じ、そして正面を見据えて答えた。


「俺は……凛花を守るために戦う。

誰かに決められた運命でも、使命でもない。俺の“家族”は、俺が守る。

それだけは譲れない」


その言葉に、風の少年はふっと微笑んだ。


「――では、見せてみろ。君たちの“絆”が、風を越える力かどうか」


突如、空間が揺れ――周囲に六体の“風精型魔獣”が出現する。


翼のある獅子、双頭の蛇、風を纏う猿……いずれも異界の空気を纏った存在だ。


「来るよ、凛花!」


「うん!」


蒼真は影を伸ばし、三体の魔獣の動きを封じる。《影縫い・連結陣》


凛花は両手を合わせて、空中に緋色の陣を展開した。


「《燈火の結び》!」


周囲の魔力を束ね、兄の影術に一時的な“魔力耐性”を付与する。

この技は、以前の旅で覚えた《陽焰の導火》と《魔脈律動》の組み合わせによる新術だ。


蒼真は一歩踏み込み――風魔獣の前へと突っ込む。


「“斬烈・裂風双断”!」


短剣から放たれる二重の風刃が、双頭の蛇を断ち、後方の猿へと迫る。

しかし、風魔獣は俊敏だった。猿が風をまとい、蒼真の背後へと瞬時に回り込む――


「――っ!?」


その瞬間、凛花が再び手をかざした。


「《記録共鳴・陽焔陣》!」


地に残っていた兄の影から、凛花が“記録の火”を呼び起こす。

蒼真の体がふわりと輝き、記録の力による加速状態に入る。


「“嵐穿・斬影”!」


蒼真の斬撃が、風の魔獣を正確に捕らえた。

兄妹の連携が、完璧に決まった瞬間だった。


やがて、すべての風魔獣が消滅すると同時に、風の少年の姿も薄れていく。


「……見事だ。君たちの“絆”は、風の試練を越えた。

ならば、記録の門は、開かれよう――」


石門が、風の音と共に開かれていく。

その奥に広がるのは、まるで空そのものが広がっているかのような、光と風の神殿。


蒼真と凛花は、互いの手を握りしめたまま、その神殿の奥へと踏み出していった。

読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ