表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/81

第34話 記録の守人たち3

山道を抜けた先に現れたのは、清らかな湖と共に佇む美しい町だった。


“ティラナ”――水鏡の町と呼ばれ、湖の水面が空と同じ色を映し出すことからその名がついたという。


町の入り口では、年配の門番が柔らかく笑いかけてきた。


「珍しいねえ、旅の子供なんて。どこから来たのかい?」


「少し北の……山を越えて。休める宿を探してるんです」


蒼真が簡単に答えると、門番は頷いて町の中を指さした。


「だったら湖のほとりに“水紡ぎ亭”って宿がある。温かいスープがうまいぞ。……気をつけてな、最近この辺にも“妙な気配”があるって話だから」


「妙な気配……?」


蒼真が問い返すと、門番は言い淀みながらも口を開いた。


「ほら……水面に影が映るんだよ。“本来そこにいないもの”のな。記録を歪めるような、そんな影が」


蒼真と凛花は顔を見合わせる。


“記録を歪める影”――まさか、再び“記録喰い”が?


それでも、今は休息が必要だった。


二人は町に入り、宿へと向かった。



 


夕暮れ。


“水紡ぎ亭”の窓からは、湖面に映る空の色が見えた。

凛花はカップを両手で包み込みながら、じっと外を見ている。


「……綺麗だね、ここ」


「うん。久しぶりに……安心できる空気だ」


蒼真はスープをひと口啜ってから、凛花に目を向けた。


「でも、油断はしない。あの門番が言ってた影の話……気になる」


凛花は小さく頷き、声を潜めるように言った。


「昨日、倒した“記録喰い”。あれに似た気配を、ほんの少しだけど……この町でも感じるの」


蒼真は視線を外の水面へ。


「この湖、ただの自然の水じゃない。……“記録の水”かもしれない」


凛花が目を見開いた。


「……水に記録が宿るってこと?」


「この世界では、炎も、風も、水も、“記録”の媒体になるって前に聞いた。

もしこの湖が“水の記録”と繋がってるなら……何かが封じられてる可能性がある」


その時――


カン……カン……!


町の中心から鐘の音が鳴り響いた。


異変の知らせだった。



 


広場へと急いで向かった二人の目に映ったのは――


湖のほとりで、倒れる住人たちと、淡い青光をまとった“人ならざる者”。


それは、ひときわ大きな水の傀儡だった。


「また……!」


蒼真が剣を抜き、凛花が後方に立つ。


その時、傀儡の目が凛花を見据えた。


「火の……巫女……」


それは確かに、言葉を発していた。


「記録の秩序を、乱すもの。……浄化する」


「お兄ちゃん……!」


蒼真は凛花を庇うように前に出る。


「来るぞ!」


水の傀儡が両腕を振り上げ、町の噴水が一斉に跳ね上がる。


次の瞬間――


《水禍・氾濫すいか・はんらん》!


放たれた水流が渦を巻きながら広場を襲う。


蒼真は駆け、剣で水流を断ち切るように一閃!


だが水は形を変えて、何度も襲いかかる――


「凛花、力を……貸してくれ!」


「うん!」


凛花が記録に語りかけ、蒼真の剣が再び赤熱する。


「――これで終わらせる!!」


《焔衝・破結陣えんしょう・はけつじん》!


火と水が激突し、熱気が空を裂いた――!


次の瞬間、傀儡の身体が蒸発し、蒼真の剣がその中心を貫いた。


静寂が戻り、広場には薄く霧が立ちこめる。


凛花が蒼真の元へと駆け寄った。


「……ありがとう、お兄ちゃん」


「こっちこそ。……でも、やっぱり、誰かが俺たちを……“試してる”ような気がする」


その言葉に凛花はうなずいた。


「きっと、“記録の守人たち”が動き始めてる。私たちを……見てるんだよ」



町に灯る灯火の中で、二人は新たな覚悟を胸に抱いていた。

読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ