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閑話 闇夜に燃える牙

静かな夜だった。


炎の都の神殿を出た後、兄妹は山の中腹にある簡素な宿で休んでいた。

崖のすぐそばに建てられたその宿からは、下界の街灯が星のように瞬いて見える。


「ねぇ、お兄ちゃん。ユナさん、ちょっと笑うとき目が優しかったね」


「そうか?」


「うん。最初は怖い感じだったけど……ちゃんと、誰かを守ってきた人の顔だった」


蒼真は焚き火を見つめながら、頷く。


「……ああいう顔になりたいなって、思うよ」


その言葉に凛花は微笑んだ。

だが――そのとき。 


遠くの闇から、低く響く唸り声が聞こえた。


「っ……! 今の……」


蒼真が即座に腰の剣に手をかける。

焚き火の影が、何か異様なものを映し出した。 


「凛花、下がってろ」


ゴゴゴゴゴ……ッ!


地鳴りのような音と共に、森の奥から何かが這い出してくる。

赤黒くただれた皮膚、異様に長い手足――それは“魔物”だった。


それも、ただの獣ではない。

“記録”を喰らい、力を増す「呪喰い(のろいぐい)」の種族だ。


「巫女の記録の匂いを嗅ぎつけてきたってわけか……!」


魔物は低い唸り声とともに、凛花へ向かって跳躍した――その瞬間。


「させるかよッ!」


蒼真の剣が、焔のように輝いた。


火の記録に触れたことで、剣に宿った“炎の刃”。

それは一瞬にして魔物の爪をはじき、体を斬り裂く。


――ガッ!


だが、魔物は怯まない。

再び地を這いながら、低く構える。


その動きに合わせて蒼真も体勢を整え、呼吸を深くした。


(こいつ……以前の獣とは格が違う。だけど、逃げ場はない。なら――)


「凛花。俺の動きを見ててくれ」


「……うん!」


魔物が突進してきた。


蒼真は避けず、前へと踏み込んだ。


「――《焔斬・逆月えんざん・ぎゃくげつ》!!」


剣が、弧を描く。


それは月のように鋭く、流れるように美しかった。

地をえぐり、空気を灼き、炎をまとう刃が魔物を貫く。


咆哮が夜空に響いた。

赤黒い血が、火花のように弾け飛ぶ。


魔物は立ち尽くしたまま、やがて崩れ落ちた。


「……ふぅ」


蒼真は肩で息をしながら、剣を下ろす。


凛花が駆け寄った。


「お兄ちゃん……!」


「大丈夫だ。怪我はない。……お前は?」


「平気。お兄ちゃんが守ってくれたから」


蒼真はその言葉に小さく笑って、妹の頭を撫でた。


「……怖かった?」


「ううん。でも……やっぱり、悔しいな。わたし、何もできなかったから」


その言葉に、蒼真は少しだけ真剣な顔をする。


「凛花。お前が“記録”を守る限り、俺は何度でも剣を振るう。

でも、もしその剣が折れたとき――そのときは、お前の“声”で俺を支えてくれ」


凛花の目が見開かれた。


「声……?」


「記録ってのは、力だけじゃない。お前の言葉が、誰かを動かす。

今の俺だって、お前の記録があるから前に進めるんだ」


凛花はそっと手を握る。


「……うん。わたし、言葉でお兄ちゃんを守る。

だって、わたしたちは家族だもん。兄妹で、ひとつの旅をしてるんだもん」


蒼真は、深く頷いた。


闇夜に、焚き火が揺れている。


その中で、兄妹の影は強く結ばれていた。

読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

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