表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/81

第30話 星の巫女と炎の記録9

夜が明け、風は再び穏やかな音色を奏でていた。


村の人々は、昨夜の戦いの爪痕を修復しながらも、希望に満ちた表情を浮かべていた。

そして、村の広場の中央には、巫女として村を守った凛花と、共に戦った蒼真とナイルの姿があった。


「凛花ちゃん、本当にありがとう。おかげで、村は無事だったよ」


ナイルの母親が、籠にいっぱいの焼き菓子を手渡しながら笑う。

それを照れくさそうに受け取った凛花は、ぺこりと頭を下げた。


「わたし、ただ風を少し読めただけだよ。みんなが戦ってくれたから……」


「いや、凛花がいてくれたから皆がまとまれたんだ。ありがとう、妹」


蒼真が優しく頭を撫でると、凛花はほわっと頬を染める。


その様子を、広場の一角で見守っていたマーヤが歩み寄ってきた。


「凛花ちゃん、蒼真くん。ちょっと、私の庵まで来てくれるかい?

君たちに見せておきたい“記録”があるのさ」



 


マーヤの庵は、村の中でも特に古い家だった。

壁一面に刻まれた風の模様と、奥にしまわれた木箱の中から、彼女は一冊の古文書を取り出した。


それは羊皮紙に丁寧に書かれた、風の巫女の記録書だった。


「これはね、百年前にこの村を訪れた“星の巫女”の記録。

その巫女も、あんたたちと同じように、この地に吹く風に選ばれて記録を継いだ子だったよ」


蒼真が目を細めてその文章を見つめる。

そこには、こう記されていた――


『風が語る。記録とは、ただの知識ではない。

それは人々の生きた証であり、想いの連なりである。

もし、この記録を継ぐ者が現れたなら――その者もまた、風に試されるだろう。』


「……これ、あたしが言ったみたいなことだ」


凛花が小さくつぶやいた。


マーヤはその言葉に静かに頷く。


「記録というのはね、受け取った瞬間から“その人のもの”になるのさ。

あなたの心が、それを真に理解したなら……前任の巫女と通じ合うのも、不思議じゃない」


蒼真は、ふと視線を落とす。


「……この前任の巫女は、何を守って、どこへ向かったんですか?」


マーヤの表情が少し曇る。


「彼女は、“封印の環”のひとつを開いたあと、記録の一部を“炎の都”に託したと伝えられている。

そこは、風とは真逆の“熱”の記録を司る地。……だが、それ以降の記録は、残っていない」


「炎の都……?」


凛花が首を傾げると、マーヤは小さく息をつく。


「この地の南、火山帯の向こうにあると言われている、今では“失われた都”。

でも……君たちなら、風の導きで辿り着けるかもしれないねぇ」 


庵を出た帰り道、蒼真と凛花は、再び風を感じながら歩いていた。


小道の先にはナイルが待っていて、手を振っている。 


「よお、ふたりとも。マーヤおばあちゃんに“行き先”聞いたか?」


蒼真は頷く。


「ああ。“炎の都”だ。次はそっちに向かう」 


ナイルは少しだけ寂しそうに、それでも笑顔を作った。


「そうか。……そっちは、オレじゃ案内できねぇけどさ。

風がつながってる限り、また会える気がするんだよな」 


凛花は名残惜しそうに頷いた。


「うん。また風が連れてきてくれるよ。だから……その時は、また一緒に風車、作ろうね」


「約束だ!」


ナイルが指切りの手を差し出し、ふたりも笑顔でそれに応える。


その瞬間、谷の風が一層やさしく吹いた。


三人の髪をふわりと揺らし、どこかに確かに“つながる未来”を告げているようだった。


 


そしてその夜。旅の支度を終えた兄妹は、村の高台から風に包まれて出発した。


蒼真は肩の荷を確かに背負い、

凛花は“記録の書”を胸に抱えながら、静かに前を見据えていた。


「お兄ちゃん。行こう、次の風へ」


「ああ。俺たちなら、どこへでも行けるさ」


夜明け前の風が、彼らの背を押した。

読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ