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第26話 星の巫女と炎の記録5

リュミナの高原を越えて、ようやく蒼真と凛花は目的の地、「風渡りの塔」に辿り着いた。


それは、高原の端に聳える、古の遺跡だった。


白い石で築かれた高い塔は、地上からまるで空へと吸い込まれるように、どこまでも伸びているように見える。

塔のてっぺんに向かって風が渦を巻き、絶え間なく吹き荒れていた。


「……あれが“塔”か。まるで、空に刺さってるみたいだな」


「すごい……風が生きてるみたい。お兄ちゃん、あれが“共鳴器”に反応してる場所?」


凛花は首から下げた金属のペンダントをそっと手に取り、見つめた。


表面に微細な光の模様が浮かび上がり、淡く震えていた。

記録の欠片が、間違いなくそこにあることを示していた。


 

塔の入り口は、風に押し返されるように閉ざされていた。

その扉の前には、まるで門番のように、石造りの獣像が二体並んでいた。


「これ……なんか、見られてる感じがするな」


「試されてるのかも……」


そのとき――


塔の扉の前に、ふわりと白い光が灯った。

まるで、誰かが“歓迎”しているかのような、柔らかい光。


蒼真と凛花がその前に立つと、光はふたつに分かれてふたりの身体に触れる。


すると、凛花の胸元の“共鳴器”が強く輝き、空間が微かに揺れた。


「これは……!」


塔の扉が、ゆっくりと音を立てて開かれる。


中から吹き出してくる風がふたりを包み、塔の内部へと導く。


 


塔の内部は、静寂と風のさざめきが共存する不思議な空間だった。


石造りの階段が延々と上へと続き、壁には記録の断片が彫り込まれていた。

それは歴史でも、物語でもない――“記憶”そのものの断片。


「これ、誰かの記録……?」


「きっと、過去の巫女たちが残したものなんだろうな」


蒼真は壁に手を触れ、そこに記された“言葉”を読み上げた。


『風は記録を運び、記憶を紡ぐ。巫女の言葉を、この塔は永遠に刻むだろう』


 

ふたりは静かに階段を上がっていった。


途中、風に揺れる幻のような映像がふたりの前に現れた。


それは、かつてこの塔を訪れた“ひとりの巫女”と、“その兄”の記録だった。


「……お兄ちゃん、これって……」


「俺たちに、似てるな」 


幻の兄は、妹に手を差し伸べながら、こう言った。


『どんなに風に流されても、俺はお前を見つける。だって、それが兄だろ』


その言葉に、凛花は目を潤ませながら微笑んだ。


「……この記録も、忘れられちゃうのかな」


「……いや。俺たちが覚えてる限り、記録は消えねぇ」


 



塔の最上層。


そこには、静かに眠る“欠片”があった。


小さな石板に刻まれた記憶の魔法陣――

それは凛花が持つ共鳴器と共鳴し、強く光り始めた。 


「凛花。やれるか?」


「うん」


凛花が手を伸ばすと、石板から淡い風の魔力が広がっていった。


光が包み、風がささやく。



『風巫の記録、これに継がれん。星の巫女よ、その器に応えよ』

 


記録の力が凛花に流れ込み、新たな魔法陣が彼女の意識に刻まれる。


その瞬間――


風の中に、誰かの声が紛れ込んだ。


『君たちは、記録を集めてはいけない。

真理は、祝福ではなく――災いを呼ぶ。』



風の巫女の記録に刻まれた、過去の“忠告”。

だが、それでもふたりの意思は揺らがない。


「俺たちは進む。たとえそれがどんな結果でも、凛花を守るって決めたんだ」


「うん。私は、お兄ちゃんと歩きたいって、決めたから」


塔の風が、ふたりを祝福するかのように静かに吹いた。


そして塔の上から見下ろす高原の光景は、かつてないほど澄み切っていた。

読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

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