第21話 追手の影と凍れる谷10
アステリアを後にし、蒼真と凛花は南東に位置する“カルセオン”を目指した。
そこは火山地帯に囲まれた乾いた土地。伝承によれば、かつて“星の巫女”の一柱――炎の巫女が眠った場所だという。
「炎の巫女の記録……本当にそこにあるの?」
凛花が問いかける。
蒼真は頷いた。
「ああ。カストルからもらった“記録の羅針盤”が示している。次の記録の座標は、まさにその遺跡の中心部だ」
赤黒く乾いた大地に、熱風が吹きつける。
「うぅ……暑い……」
凛花が汗をぬぐうと、蒼真は自分の水筒を差し出した。
「少しずつ飲め。もう少しで街に着くはずだ」
ようやくたどり着いたのは、火山都市。
ここは遺跡探索者や鉱山労働者が集う、粗野だが活気のある街だ。
宿に荷を降ろすと、まずは市場で補給を整えることにした。
アステリアに比べて物価はやや高めだったが、干し肉や保存パン、冷却用の魔法石などを手に入れた。
その途中――
「お前たち、見ない顔だな」
声をかけてきたのは、二人と同じ年頃の少年だった。肌は小麦色に焼け、火山鉱夫らしき赤いスカーフを巻いている。
「俺、ラグって言うんだ。遺跡に向かうんだったら、あの谷の気候に気をつけたほうがいいよ。突然、熱砂の嵐が来ることもあるから」
「ありがとう。ラグは、遺跡に行ったことがあるのか?」
蒼真の問いに、ラグは少しだけ目を伏せて答えた。
「……兄貴が行った。でも、帰ってこなかった。だから俺は、まだ行けてないんだ」
「……そうか」
どこか、蒼真と重なる姿。
“兄”の喪失と、“妹”を守る決意。
ラグは、ふたりの雰囲気を見て、静かに言った。
「お前たち、強いんだな。なんか、ただの旅人には見えない。妹さんを守るために戦ってる感じがする」
「……そんなに見えてるか?」
「うん。なんか、目でわかる。……無理すんなよ、兄ちゃん」
そう言って去っていくラグの背に、蒼真は小さくつぶやいた。
「……無理してない。してたまるか」
その夜。
蒼真は宿の一室で、手帳に新しい記憶を書き加えていた。
――新しい街。新しい仲間(かもしれない誰か)。けど、守るものは、変わらない。
凛花はベッドで毛布にくるまりながら、ぽつりとつぶやいた。
「炎の巫女って、わたしと似てるかな……?」
「似てるかどうかじゃない。もし会えるなら、きっと教えてくれる。どうすれば、力を怖がらずに生きていけるか」
「……会えるといいな」
「必ず、会える。俺が一緒に連れてくからな」
翌朝、兄妹はラグの言葉を思い出しながら、赤き谷を抜けて“星の炎遺跡”へと出発する。
そして、まるで待ち構えていたかのように、灼熱の嵐が彼らを襲った――
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『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。
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