表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/81

第20話 追手の影と凍れる谷9

アステリアの地下には、都市の繁栄とは裏腹に、忘れ去られた路地が迷路のように広がっていた。

人の記憶すら売り買いされる“黒市”――そこには、記録図書館の管理下を逃れた「闇の記録」が集まっていた。


その市場にひとりの男が現れる。


漆黒の外套に銀の縁取り。顔の下半分を覆う仮面――

“記録狩り”の異名をもつ、“鏡の協会”の一人、ヴァール。


「……星の巫女が目覚めた、というのが事実なら、対となる“守護の記憶”も近くにあるはず。すなわち、兄の記憶だ」


ヴァールは黒市の一角にある、記憶蒐集屋へと足を踏み入れた。



「“蒼真”という名の少年。彼の記憶を、探してほしい。できるだけ幼少期の深い記録を」


カウンターの奥で笑ったのは、爬虫類のような眼をした老婆だった。


「フフ……あいよ。“強い想い”のある記憶は高く売れる。なにせ、奪えば心そのものが揺らぐからねぇ」



一方その頃――


蒼真と凛花は、記憶図書館の一室に泊まっていた。

長旅の疲れが少しずつ癒え、二人でようやく落ち着いて過ごせる時間。


「お兄ちゃん、これ。図書館の人がくれた“記憶石の手帳”だって」


「記憶石……ってことは、思い出を記録できるってやつか?」


「うん。書いたことを、声で思い出すこともできるみたい」


蒼真は手帳を受け取ると、少し考えたあと、短く書きつけた。


 ――妹を守る。それが、俺のすべてだ。


「……へへっ。かっこつけてる」


「やかましい。お前も書いてみろよ」


凛花は少し悩んでから、震えるような文字で一行、記した。


 ――わたしが大事なのは、お兄ちゃんだけ。


 


そうして微笑み合った時間――それこそが、記憶狩りにとって“狙うべき輝き”だった。



その夜、静かに記憶図書館に侵入した影がひとつ。

彼は封印結界の隙をつき、凛花ではなく“蒼真の記憶石の手帳”を盗み出す。


 

「大切なものを少しずつ剥がせば、人は簡単に揺らぐ……兄の記憶が揺らげば、巫女も傾く」


仮面の男――ヴァールは、手帳を開き、記憶石に記された文字を読み上げる。


だがその瞬間、光が弾けた。


「……これは、封印文字か」


手帳には、凛花が書き加えていた“もう一文”があった。


 ――兄の記憶に触れる者、ここに“星の加護”を受けし封を授ける。



ヴァールは一歩下がり、目を細めた。


「なるほど……巫女の力で“記憶を護る結界”を貼ったのか。やるじゃないか、妹のくせに」


彼は舌打ちし、姿を闇へと消した。


 


翌朝――


図書館の守り人・カストルが、蒼真にそっと告げた。


「昨夜、記憶を狙う影が現れた。記録は守られたが……“敵はすでに近くにいる”」


蒼真は凛花の手をしっかりと握る。


「もう、ここも安全じゃないな……」


「次は、どうするの?」


「移動する。もっと先へ――“星を巡る六つの遺跡”のうち、次の“炎の地”に向かう。そこに、またひとつの記録があるはずだ」



そして兄妹は、再び旅支度を整える。


――黒市の闇が迫り来るなか、蒼真の記憶は一度守られた。


だが、鏡の協会の狙いはまだ終わらない。

兄妹を揺さぶるのは、記憶そのもの。


“奪われた時、心はどうなるのか”――その問いは、確かにこの先に待っている。


読んで頂きありがとうございます。

『星の守り人 〜妹と歩む異世界の旅〜』は別の小説投稿サイトにて初めて投稿したものです。

ぜひ感想や応援などもらえるととてもうれしいです!

これからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ