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煌めく空の下で

作者:

 

 私はあなたに魔法をかけた。

「ソレ」を見たら、必ず私を思い出してしまう魔法を。



 ✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆



 部活終わり、少し混んでいる電車に二人で乗り込む。カタンコトンと心地よいリズムを刻んで進む電車は、私達をどんどん人気(ひとけ)の少ない町へ連れていく。いつもの駅で降りて手を繋ぎ、いつもの公園へ向かう。


 誰もいない、暗い芝生の公園。いつも私達が寄り添い合う場所。


「わ〜!疲れた〜!」と言い、制服でもお構い無しに芝生の上に寝転がる。

 私達がここに来る理由は、そう「星」を見るため。



「私、星を見るのが好きなの」

 初めて言った時、あなたは目をぱちくりさせて「星?」と繰り返した。


 田舎は町の明かりが少ないから、その分星が綺麗に見えること。冬になると空気が澄んでさらに綺麗に見えること。夏に見える星座のこと。よく見ると星には様々な色があること。そして、寂しい時に星空を見上げれば少し安心できること。

 沢山、いろんなことを教えてあげた。


 初めてちゃんと星空を見たと言うあなたは「すごく綺麗」と、目に月の光を反射させながら言った。


 そう、この時、あなたは魔法にかかった。

 この魔法が解けないように、私はあなたの手に指を絡ませて、そっとロックをかけた。



 ✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆



 あれから4年。

 私は今日も夜空を見上げている。でも、私の隣にあなたはいない。


 星空を見ると、時々あなたを思い出してしまう。不器用な私は、あなただけに魔法をかけたつもりが、自分にもかけてしまっていたみたい。


「まだ、好きなのかな」


 ううん。違う。

 思い出の中の、制服を着た、あの時のあなたが好きなだけ。



 ✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆✩*⋆



「お待たせ!ごめんね〜」

「ぜんぜん大丈夫だよ。今日もお疲れ様」

「今日は晴れてるから星が眩しいくらいだね」

「ほんとだね〜」

 今隣にいる彼は、私の一番大好きな人。

 付き合って約1年半。

 私は大学3年生で、彼は今年から社会人。彼が社会人になってから、会えるのは夜がほとんどだ。


 今日も手を繋いで、二人並んで星空を見上げる。

 今が一番幸せだ。心からそう思う。

 でも、この夜空に浮かぶ星と同じくらい、あなたとの思い出が私の心の中でキラキラと輝き続けている。



 あなたもきっと、ふと星空を見上げた時、私のことを思い出すだろう。

 だって私は「思い出」という魔法を、こっそりとあなたにかけたから。






 ☾ おまけ ☾


 キンと肌を刺す空気。

 乾いた芝生。

 空に浮かぶ数え切れないほどの星。

 隣には、制服姿の君。

「あの星はシリウスって言うんだよ」

 私は彼に教えてあげた。

「星がこんなに綺麗だなんて、知らなかった」

 と彼は呟く。

「冬は空気が澄んでるから、星がよく見えるんだよ」

 私にとっては当たり前のことを、彼は新鮮そうに噛み締めていた。

「夜空なんてちゃんと見たことなかったけど、こんなにも綺麗なんだね」

「そうだね」

 と呟いた私自身、こんなに綺麗な星空は初めてだった。

 好きな人と見上げる夜の空。

「この時間が永遠に続けばいいのに」

 と、この宇宙のどこかで流れている星にそっと願った。


忘れられない思い出が、あなたを苦しめるものじゃなくて、あなたを照らすものとなりますように。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  情景描写とても丁寧ですね。回想シーンがあることから、戻らない昨日を思い浮かべ、哀しいラストが待っているのか思いましたが、素敵な今に続いており安心しました。 [気になる点]  特にございま…
[一言] そうですね、きっと魔法かかってますもの。
2024/05/24 23:36 退会済み
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