煌めく空の下で
私はあなたに魔法をかけた。
「ソレ」を見たら、必ず私を思い出してしまう魔法を。
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部活終わり、少し混んでいる電車に二人で乗り込む。カタンコトンと心地よいリズムを刻んで進む電車は、私達をどんどん人気の少ない町へ連れていく。いつもの駅で降りて手を繋ぎ、いつもの公園へ向かう。
誰もいない、暗い芝生の公園。いつも私達が寄り添い合う場所。
「わ〜!疲れた〜!」と言い、制服でもお構い無しに芝生の上に寝転がる。
私達がここに来る理由は、そう「星」を見るため。
「私、星を見るのが好きなの」
初めて言った時、あなたは目をぱちくりさせて「星?」と繰り返した。
田舎は町の明かりが少ないから、その分星が綺麗に見えること。冬になると空気が澄んでさらに綺麗に見えること。夏に見える星座のこと。よく見ると星には様々な色があること。そして、寂しい時に星空を見上げれば少し安心できること。
沢山、いろんなことを教えてあげた。
初めてちゃんと星空を見たと言うあなたは「すごく綺麗」と、目に月の光を反射させながら言った。
そう、この時、あなたは魔法にかかった。
この魔法が解けないように、私はあなたの手に指を絡ませて、そっとロックをかけた。
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あれから4年。
私は今日も夜空を見上げている。でも、私の隣にあなたはいない。
星空を見ると、時々あなたを思い出してしまう。不器用な私は、あなただけに魔法をかけたつもりが、自分にもかけてしまっていたみたい。
「まだ、好きなのかな」
ううん。違う。
思い出の中の、制服を着た、あの時のあなたが好きなだけ。
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「お待たせ!ごめんね〜」
「ぜんぜん大丈夫だよ。今日もお疲れ様」
「今日は晴れてるから星が眩しいくらいだね」
「ほんとだね〜」
今隣にいる彼は、私の一番大好きな人。
付き合って約1年半。
私は大学3年生で、彼は今年から社会人。彼が社会人になってから、会えるのは夜がほとんどだ。
今日も手を繋いで、二人並んで星空を見上げる。
今が一番幸せだ。心からそう思う。
でも、この夜空に浮かぶ星と同じくらい、あなたとの思い出が私の心の中でキラキラと輝き続けている。
あなたもきっと、ふと星空を見上げた時、私のことを思い出すだろう。
だって私は「思い出」という魔法を、こっそりとあなたにかけたから。
☾ おまけ ☾
キンと肌を刺す空気。
乾いた芝生。
空に浮かぶ数え切れないほどの星。
隣には、制服姿の君。
「あの星はシリウスって言うんだよ」
私は彼に教えてあげた。
「星がこんなに綺麗だなんて、知らなかった」
と彼は呟く。
「冬は空気が澄んでるから、星がよく見えるんだよ」
私にとっては当たり前のことを、彼は新鮮そうに噛み締めていた。
「夜空なんてちゃんと見たことなかったけど、こんなにも綺麗なんだね」
「そうだね」
と呟いた私自身、こんなに綺麗な星空は初めてだった。
好きな人と見上げる夜の空。
「この時間が永遠に続けばいいのに」
と、この宇宙のどこかで流れている星にそっと願った。
忘れられない思い出が、あなたを苦しめるものじゃなくて、あなたを照らすものとなりますように。




