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17.学園のランチタイム(ライオット目線)

夜会でルシアの入学が楽しみだと口にしたライオットであったが、さすがにその頃には決着がついているだろうと予測しての言葉だった。

全ての問題が解決し、サリエラと平穏な学園生活を送れると思っていた。


しかし彼の予想は外れ、黒幕が見つからないままルシア入学の時を迎えてしまった。


解決の糸口すら見つかっていない以上、侯爵は今回の事件を王家へと報告せざるを得なかった。


幸い、王家の血を引く者たちは成人していたり、まだ幼かったりで、ルシアと世代が被ることはないものの、放置できる問題ではない。


そこで王家はライオットにルシアの監視役を命じたのだ。


ルシアはライオットの婚約者であるサリエラの妹だ。将来の義妹を気にかけるのは義兄としておかしなことではない。

ライオットがまじないに長けたユシベル家の次期当主であることも手伝って、彼が適任とされてしまった。


王家の命でルシアを監視しろと言われた以上、個人の感情は捨てなければならず、ライオットは可能な限り、彼女と学園生活を共に過ごさなければならなくなった。



もっともデメリットばかりでもなかった。


ルシアはサリエラの妹なのだから、サリエラも一緒にいなければ辻つまが合わなくなる。

つまりライオットは大手を振ってサリエラのそばにいられるのだ。


今までは交友関係を広げるべしというサリエラの提案で、ライオットはあまり彼女と一緒に過ごすことはなかったのだが、今は王命という免罪符がある。



本当のことを言えば、ライオットは、婚約者同士で過ごしている者たちが少し、羨ましかったのだ。


彼らは、登下校を共にするのはもちろん、ランチとそのあとの休憩時間、そして放課後のひとときすらも離れようとしない。


ひと気のない教室で口づけをしているカップルに出くわしたときはひどく驚いたが、自分たちも婚約しているのだからこれくらいは許されるのだということに気づいた。


哀しいかな、気づいてしまうと次は実行に移したくなるものだ。


サリエラの口元ばかりぼんやりと眺めてしまい、彼女に不審がられてしまった結果、結婚するまでは不埒な真似はすまいと心に決め、適度な距離を保つよう心掛けていた。


ある意味、ライオットがサリエラのそばに四六時中いるというのは非常に危険なのだが、幸か不幸かルシアがストッパーとなり、彼は文字通り、サリエラとの平穏な学園生活を送ることができた。



「サリエラ、早く食堂に行こう」


ライオットは堂々とサリエラを誘い、今日も彼女とのランチを楽しむ。


「お待ちしてました!」


向かった先にはルシアが待っていた。

彼女がいなければ最高のひとときなのだが、ルシアがいてこそのサリエラとの同席だった。


やかましく話し続けていたルシアがいなくなり、サリエラとふたりになった。


一口大に切られたフルーツタルトを美しい所作で口に運ぶ自身の婚約者を堂々と見つめていてもなにも言われない。


ライオットにとっては至福の時間であった。



ランチの終わりにルシアを呼びに来たふたりの女生徒はユシベルの用意した協力者だ。


同じ学年の彼女らはライオット以上にルシアと行動を共にしてもらっているが、その成果は芳しくない。

学園でルシアにそれらしい人物が接触してくる様子はなかったのだ。


学園でなければカガル邸内でやり取りをしているのかと思い、サリエラに聞いてみたのだが、彼女はよく知らないという。


それはそうかもしれない、貴族の子供たちは幼い頃からそれぞれに役割が与えられる。


ライオットは侯爵家の跡継ぎとして早くからその教育を受けていたし、彼の姉はユシベル家の為、より良い家に縁づかねばならないと厳しい淑女教育を受け、常に自身を磨いていた。


それはサリエラとルシアも同じで、それぞれに学ばねばならない多くの事柄があるのなら、互いのことなどかまってはいられないだろう。



「入学後、勉学に忙しくなる前に、と考え、いろいろな集まりに参加して広く交流していたようです」

「それはどんな集まり?」

「わたくしは存じませんが家令ならある程度は把握しているかと思います」

「そうか」


ライオットはちらりと壁際に控えていた従者に目をやり、彼は主の命を受け、その場を離れていった。


ルシアの不在中ならばカガルの家令もいくらか正気かもしれない。

最悪、侯爵令息の命だとでも言えば、素直に教えてくれるだろう。



少しの押し問答はあったものの、ルシアの参加していたという集まりは把握することができた。


が、それも空振りに終わった。




永遠に進展しないかのように見えた調査も、突然の急展開を迎えた。


ライオットの子を身ごもった、とルシアが訴え出たのだ。

次回はルシアから見たストーリーとなります、お読みいただきありがとうございます

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