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葉牡丹  作者: 藤泉都理
5/9

暗闇




 夢を見た。

 私もポメラニアン化して、仙界樹の下に出現した新たな卵から白龍と黒龍も生まれた事から、仙界から追放。

 ポメラニアンとして、黒龍と一緒に地上で暮らす事になるのだ。


 仙界の守り手としての使命があるのだ。

 何としてでも、元の姿に戻って、仙界へも戻り、新たな白龍と黒龍の指導役になれずとも、仙界の守り手として、何かできる事はしようと、もがくつもりだった。

 のだが。


 あろう事か。

 夢の中の私は、黒龍と一緒に、食糧や寝る場所の確保、人間の子どもや動物、妖怪、天災に追われ逃げ回るなど苦労をしながらも、悠々自適に暮らしていた。

 いつも、笑っていた。

 腹の底から。

 全身全霊で、生きていた。

 黒龍と一緒に。






 白龍が目を開けると、目元と頬が濡れている事に気づいた。

 揺り椅子に座っている間に、転寝をしていたようだ。

 涙を手の甲で拭い視線を下げると、太股の上でうつ伏せになって眠っている、ポメラニアン化した黒龍の寝顔が見えた。


(………肩肘を張った。背伸びをした。自分の為に。仙界の為に。あなたに認められる為に)


 一歩と言わない。

 半歩でもいい。

 あなたの少し先を歩いて、認められたかった。

 尊敬の眼差しに、ずっと、ずっと、応え続けたかった。




『他に証明する為だけのものだと思っていた。義兄弟の契りを交わそうが、交わすまいが、私の心に変わりはないと思っていたが。やはり違うな』




 ああは言ったが、それだけではない。

 自らを奮い立たせる誓いでもあったのだ。

 ずっとずっと、黒龍に見続けてもらう為に。


(………そうやって。囲んだのだ、私は。黒龍に窮屈な気持ちを抱かせ続けて。黒龍は精神的な重圧に耐えきれずに、こんな姿になってしまったのか。私の。所為で)


「すまない。黒龍」


 白龍は自身の、そして黒龍の目を片手でそっと覆えば、光が差さず暗闇だけが広がる。




 こんな風に、閉じ込めてしまいたかったのか。











(2024.2.20)




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