契り、と、先代
【契り】
酒を酌み交わし合って、義兄弟の契りを交わした。
これで、黒龍である彼と白龍である私は、より強い絆で結ばれる事になった。
嬉しかった。喜んだ。
彼も私も同じ気持ちだった。
はずだった。
「どうして」
私は彼の、黒龍の変わり果てた姿を見て、胸が締め付けられた。
私は、どうやら、彼の事をわかっていなかった、のだ。
まったく。
(2024.2.16)
【先代】
仙界には、二匹の龍の守り手がおった。
白龍と黒龍である。
代替わりを迎えると、仙界樹の下に黒白の二つの卵が出現し、そこから新たな白龍と黒龍が生まれ、その瞬間から新たな守り手の任に就く事になり、また、隠居の身となる先代の白龍と黒龍から守り手に関するすべてを叩きこまれるのであった。
守り手を務める年数は決まってはおらず、仙界樹の下に出現する黒白の二つの卵が隠居の合図であるが、今までの統計により、およそ千年前後ではないかと考えられていた。
現在の守り手である白龍と黒龍はまだ、百五十歳。
まだまだ、守り手として働かなければならなかった。
「「はあ。嘆かわしい」」
それぞれ異なる場所にて。
先代の白龍と黒龍はとても重い溜息を吐いていた。
何度も何度も何度も。
報告を受けたからだ。
現在の守り手である白龍と黒龍が義兄弟の契りを交わしたという、とてつもなく嘆かわしい報告を。
代々、白龍と黒龍は仲が悪く、顔を合わせれば、喧嘩、喧嘩、喧嘩三昧であった。
しかし、悪い事ではない。寧ろ、喜ばしい事である。
切磋琢磨する上で、仲良しこよしでは困るからだ。
それが。
「「はあああああ~~~。嘆かわしい~~~」」
肩を落とす先代の白龍と黒龍の下に、さらなる嘆かわしい報告が届くまで、あと、十秒。
「「な、な、な、何じゃとおおお!?」」
黒龍がポメラニアンという犬種に変化しただってえええ!?
(2024.2.16)