魔王と勇者のみちのく温泉反省会
ここはとある人間界の山奥にある温泉。
「魔王さま、いい湯ですねぇ。戦いの疲れをお忍びで癒すのも良きですねぇ。」
ほくほく顔でくつろぐ側近アビサルの横で、
「ちくしょうぅ……また負けた……あの女ぁ……」
立ち上る湯気の水面に角だけ残して少年が顔を沈める。
ブクブクブク。
「魔王さま!魔王さまが盛大に空振りされたのは、あんな綺麗に華麗に躓かれるような場所に落ちていた石が悪うございます!」
あたふたとフォローするアビサル。
「お前、絶対ディスってるだろ!」
魔王と呼ばれた少年は盛大にアビサルの顔面目掛けて湯をかける。
「わわ、おやめください!」
あたふたと慌てるアビサルを後目にざばっと立ち上がり、
「今日こそはあいつを跪かせて、俺様から、こ、ここ告白してやろうと思っていたのに……!」
と魔王は仁王立ちで拳を握りしめた。
「魔王様……丸見えでございますー!」
アビサルがあたふたと主の股間を手で隠す。
「あと、耳が真っ赤でございますが、のぼせましたか?」
「うるさいっ!」
一方その頃、女湯では。
「なんだか男湯が騒がしいですわね、姫様。」
「……またやっちゃった……あんな目の前で隙見せられたらつい体が勝手に反応しちゃって、攻撃しちゃうのよね……ヤダヤダ、私絶対お転婆って思われてる……顔合わせる度にのしちゃう女なんて絶対嫌われてるぅぅぅ」
金髪の長い髪を揺らめかせて少女がブクブクと湯に顔を沈める。
「姫様、今日も最高にカッコ良かったですよ!」
「ハンナ、それフォローになってない!」
ぷいっとそっぽを向く姫。
「今日こそはちょっと可愛げあるところ見せて、「俺のものにならないか?」とか言われちゃったりなんかしてみたかったのに!」
「姫様、魔王のことお好きなんですか?」
「ちがっ、別にそんなんじゃないわ!」
「ま、いいですけど、耳真っ赤ですよ。のぼせないうちに上がりましょ」
ニコニコ顔のハンナに促されて姫は湯から上がった。
服を着て、長い髪を整える。
女湯の暖簾をくぐって、外へ出た時、同時に男湯の暖簾からも人影が出てきた。
「あ!」
「あ…!」
魔王とアビサル、姫とハンナがお互いの姿を認めて、両者が固まる。
Ready……Fight!