フリーナルクエストが外道なるクエストになるまで
<配信開始>
『フリーナルクエスト』
『勇者として魔王を倒す』というプレイヤーがなんやかんやして魔王を倒すシミュレーションをバーチャルで体験出来る、所謂VRのRPGゲーム。
設定は陳腐だけど、これは案外楽しかった。何故なら……
「アハハハハハハハハ!燃えてる燃えてる、映えるねぇ!」
眼下で魔王城が燃えている。
城内は空だけど、堅牢で棘々しい城が上空からのビーム一斉掃射で壊れるのを見るのはとても楽しい。気持ちイイ。
「外道め!魔王たる俺を下し、お前は勇者に成った筈だ!俺の敗けだ!なのに何故こんなことをする!?」
パッケージに描かれていた魔王が私の後ろに居る、磔にされて動けないけど。
私は今、魔王城上空に居る。
古代文明の遺物、『天使の戒弾』。魔力があれば空を飛び続けられる空中都市で、同時に地表を光線で焼く封印された古代兵器でもある。
私は今、本作魔王を都市の動力源にしながら魔王城を壊している。
「このゲームってさ、本ッ当に自由なんだよね。
王様からお金貰って冒険の旅に出るだけじゃなくて、王様にナイフ突き付けて国庫を自分の物にして、姫様に爆弾を括り付けて騎士団を脅して手駒に出来る…… はい/いいえ しか選べない頃とは大違い。」
下で爆音が聞こえた。あ、城が崩れ始めた。
「何が、いや何を言っている?」
「本来なら魔王倒した後にしかゲット出来ないこの都市も人海戦術のお陰でゲット出来たし、途中の魔王軍幹部は根城に毒撒いて弱体化して騎士団とやり合わせて私の手は綺麗だし、魔王城付近で偽札をばら撒いたねー。」
このゲーム、やりたいと思った事が本当に出来ちゃう。しかも、現実の様な感覚で。
「だからさ……君のやり方がつまらなく思えたんだよね。」
「?」
「悪役黒幕やるんならさ、勇者の故郷の二つ三つ、王城の十や二十くらいぶっ壊しなさいよ!
設定が冷酷非道なクセに温いの、やり方が!
どうせ悪役やるなら…」
『天使の戒弾』を操作する。
空中都市全体が震え、吠え、光り輝いて、その光が魔王城とその城下町を跡形も無く消し炭にした。
「……おま、お前……お前ぇぇぇぇぇぇえええええええ!」
「えへへエヒヒ、ハハハハハハハハハハハ、アーッハッハッハッハッハ!これこそ悪党!これでこそゲームってもんでしょ!」
笑い声と悲鳴が木霊する。あぁ、気持ちがイイ……
<配信終了>
全年齢向けだったフリーナルクエストはこの配信を境にR15になった事は言うまでもない。
『巽さんに高笑いをしてもらって、下野さんに断末魔を挙げて欲しい。』
この願い、届け!
いや、届いて欲しくはないですな。