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財宝

「では、クレール神官がここへ来たときに、この宝珠をお与えになったのはなぜですか?」

「クレール神官というのは、あのときの坊主か。言いつけは守ったようじゃな」

「はい、剣の守り人となって、一度も手は触れなかったそうです」

「クリストフのような者がまた現れるのを、待っておったのかもしれんのう……ところで、お前は見たところ、異世界からきた者か?」

「……その通りでございます」

「隣にいるお前もか?」

「はい。そうです」

 

 私とエヴァ先輩の返答にみんな少し驚いた顔をしているけど、黙っている。

 

「なぜ、おわかりになるのでしょうか」

「身にまとっている魔力の質が違うでのう。ワシにはわかる。クリストフもそうであったからな」

「えっ? クリストフも異世界人?」

「倒れていたときには、記憶がなかったようじゃがの。前世では『武士』という職業だったことを思い出したそうじゃ。戦で亡くなったと言っておったな」


 クリストフが転生者というのも驚いたけど、まさかの武士!

 なぜ転生者はみんな日本人なんだろう……と思ったけど、RPGって日本のゲームだっけ。


「クリストフがこの山のふもとに倒れておったのも、何かの縁じゃろう。瑠璃の宝珠は、異世界から来た者に強く反応を示す。力にもなるが、両刃の剣じゃ。あの坊主に手を触れるなと言ったのは、普通の人間では宝珠の力に負けてしまうからじゃの」

「そうだったのですね……ようやく謎が解けてスッキリしました。私たちは、やはり封印の祠へ向かうことにします」

「止めてもいくんじゃろうな」

「行きます」

「頑固な者たちじゃて。仕方あるまいの」


 古竜は体を少しずらして、岩棚の奥にある洞穴を指し示した。


「あの中には、お前たちの役に立つものがあるじゃろう。好きに持ってゆくがよい」

「なんでしょう?」

「不届きな人間どもの、置き土産じゃよ」


 中へ入れ、と言うので、皆でぞろぞろと洞穴の中へ入ってみると、そこには金銀財宝や武器や防具などが所狭しと積み上げられていた。


「わー! すごいっ!」


 レアナは目を輝かせているが、みんなあまり元気がない。

 色々ショッキングな話が多かったもんね。

 特にオーグストは幽霊のような顔をしている。

 敬虔な正教徒のオーグストにとっては、辛い話だったと思う。


「エヴァ先輩、その聖剣、ここに置いていきませんか?」

「……いや、持っていこう。両刃の剣だって言ってたけど、転生者の力に反応するとわかっていたら、使い道があるかもしれないし」

「気持ち悪くないですか?」

「僕は封印のやり方を知らないから、クリストフの二の舞いにはならないさ」


 エヴァ先輩は、聖剣は自分が使う、と言った。

 でも、絶対に封印には使わないようにしようと約束した。

 古竜が言ったように、過ちは繰り返してはいけない。

 封印したって、また100年後に同じことが起きるんだもの。無駄だよね。

 

「なあ、ルイーズよ。異世界人ってえのは、なんなんだ?」

「自分でもよくわからないんだけど、前世の記憶があって、前世はこの世界の人間じゃなかった、ってことかな」

「じゃ、今はこの世界の人間ってことなんだな?」

「そうだよ。私、アデル村で生まれたもん」

「ああ、それならいいんだ。俺、宇宙人とかかと思ったぜ。まあ、お前が何か普通じゃないとは思ってたけどよ」


 マルクがホッとしたような顔になった。

 異世界人なんていきなり聞いたら、そりゃ宇宙人かと思うよね。

 私の適当な転生の説明だけで、マルクはあっさり納得してくれた。


「……これなんかレアナさんによさそうですね」

「どれ? あっ短剣だ」

「緋色の宝珠がついてるから、火力が上がると思いますよ」

「ほんとっ! じゃ、私これもらう!」

「ニコラくん、私も使えそうな剣ないかなあ?」

「ルイーズさんにはこれが一番でしょう。ミスリル加工の剣です」

「ミスリル?」

「魔力の伝導率が抜群の金属なんです。ルイーズさんは剣から魔力出すでしょう? それに、これは軽いですよ」


 ニコラくんから受け取った剣は細身で、鋼鉄の剣よりかなり軽かった。

 これ、前に言ってた国宝級ってやつかなあ。


「ミスリル、もう一本ありましたよ。オーグストにいいんじゃないですか?」

「え、あ、ああ。サンキュー」

「封印しないなら、全力で戦わないと、ですね」

「……そうだな! 俺も戦うよ!」


 ニコラくん、優しいな。

 オーグストがちょっと笑顔になった。

 

「ニコラ、お前のはないのか?」

「ありましたよ、とっておきのが」

 

 ニコラくんはニンマリしながら一本の杖を手にした。

 

「藍玉の杖です。水属性にとって最高級の杖ですよ! 国宝級です!」

「おおお! なんかすごそうだな! よかったぜ」

「マルクは、そこの鎧がよさそうだと思ったんですけど」

「ん、これか?」

「豪傑の鎧みたいですよ。毛皮の装飾はたぶんフェンリルです。豪傑にしか倒せない魔獣」

「ニコラのおすすめだったら、間違いねえな! 俺はこれをもらうぜ」


 ニコラくんの鑑定会は、それから数時間続いた。

 財宝は置いておくことにして、とにかく戦闘に役立ちそうな武器や装飾品を優先した。

 今持っている装備は予備としてマジカルバッグに入れて、ほとんどの装備を一新した。

 エヴァ先輩が、装備が頼りないと心配してたけど、全員少しはマシになったかな。

 

 夜になってしまったので、今日はこの洞窟に泊めてもらうことにした。

 古竜が外にいるんだから、ゆっくり寝ても大丈夫だよね。

 

 

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[一言] RPGはアメリカ発祥のゲームです。
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