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フォーメーションを考えてみる

 それからみんなで、聖騎士がふたりになったら、パーティーでどんな戦い方ができるか議論になった。

 今までは前衛がマルクとレアナ、後衛がニコラくんとオーグスト、私は臨機応変に、みたいな感じだったんだけど。

 エヴァ先輩が加わるなら、先輩は前衛だ。

 どう考えても攻撃は私より強いし、このパーティーで回復は私とオーグストで十分。


 これでもし私が勇者だったらどうすんの、って感じだ。

 勇者が後衛、なんてことあるんだろうか。


「うーん。でも、僕は後衛もやってみたいけどな」

「そうなんですか? せっかく剣の腕があるのに」

「この間、アイスブレイク覚えたからさ。遠距離攻撃、使ってみたいじゃない。騎士団ではそういうチャンス全然なかったから」

「じゃあ、私とエヴァ先輩は、前衛と後衛、かわりばんこにしましょう!」

「いいね、色々試せて」

「俺も結界ばっかり張ってないで、たまには前衛に出たいっ」

「だったら、僕が結界魔法を覚えたらいいのかな?」


 エヴァ先輩はあっという間にみんなに馴染んだ。

 本当に楽しそうだ。

 確かに、騎士団の中では先輩のようなスキルの人は中途半端だったのかもしれないな。

 集団の中では、魔法攻撃バンバン使えないしね。

 意識してなかったけど、レアナとか私なんかは、つくづく冒険者向きなのかもしれない。

 そもそも攻撃魔法と剣スキル、両方使えるのがめずらしい存在だから、集団の戦闘には向かないだろうな。


「あの、なんかこの先に魔力反応が……」


 ひとりだけおとなしかったニコラくんが、何かに気付いたみたいだ。

 

「君は索敵ができるんだね? 何体ぐらい反応がある?」

「……道の両側に10体ずつぐらいでしょうか」

「盗賊かな」

「違うと思う。人間ではなさそうな感じです」

「となると、魔獣か」


 エヴァ先輩が御者に声をかけて、スピードを落とす。

 私たちの馬車の前には、騎士団の人たちの馬車が走っているので、戦闘になるとしたら先に前の馬車だ。

 突然馬が何かに怯えたように立ち止まって、動かなくなってしまった。

 

「アンデッドかよ……」


 わらわらと、ガイコツ集団がこちらに向かってくる。

 こんな森の中にアンデッドがいるなんて。


「とにかく戦闘だ!」


 全員で馬車の外に飛び出す。


「マルクくん、アンデッドは剣がきかないんじゃないの?」

「先輩、マルクでいいっすよ。先輩の出番ですって! 氷紋剣てやつで、アンデッドの頭、全部凍らせちまってください!」

「頭狙うんだね?」


 エヴァ先輩がアンデッドの頭を次々に凍らせると、マルクがそれを片っ端から木端微塵に叩きつぶしていく。


「こうやって、頭粉々にしといたら、やつら襲ってこねえんですよ」

「ほう……そんな戦い方があるんだな」

「ワルデック先生に教わったんっすよ! あとは、オーグストに任せとけば大丈夫っす」

「範囲殲滅浄化!」


 頭のないアンデッドが、一斉に浄化されていく。


「オーグスト、範囲殲滅覚えたんだ!」

「あったりまえだろ? 勉強してんだよ!」

「せんぱーい! 暗いからちょっと燃やしまーす!」


 レアナのファイアーストームがガイコツ集団を包み込む。


「あーあ。消すのは僕なのに……」

「ごめーん、ニコちゃん!」

「よし、どっかにガイコツの親玉がいるはずだから、探しにいこうぜ!」

「君たちは、本当に楽しそうに戦うんだな」


 エヴァ先輩がクツクツと笑っている。


「こいつら、アンデッドなんですよ! 死んでるんだから遠慮はいりませんって」

「パーティーに神官までいるとは、頼もしいな。オーグストくん」

「オーグでいいっすよ、先輩!」


 騎士の人がガイコツに手間取っているのを助けながら、一番前の馬車まで到達する。

 いた! 骸骨騎士だ。


「どういくよ?」

「先に足止めした方がいいよね。雷撃でもいいけど、多分エヴァ先輩の方がいいと思う」

「どうしてだい?」

「雷撃かけた後って、氷紋剣が弾かれるんです。でも逆はいけると思う。凍ってると雷撃通りやすいんで」

「あーなるほど! 水と雷か。 じゃあ僕が先に。 アイスブレイク!」

「先輩さすが! いかづち!」


 完全に凍りついた骸骨騎士に、雷がズドーンと直撃する。

 骸骨騎士は木端微塵に弾け散った。

 いいな、このフォーメーション。

 後衛でも十分戦える。

 エヴァ先輩の水属性攻撃とも相性がいい。


「アンデッドのこんな倒し方、初めて見たぜ」


 オーグストが呆れている。

 しかし、親玉の骸骨騎士を倒しても、ガイコツは後からどんどんわいてくる。


「変だな……どこから湧いてくるんだ?」

「あのダンジョンの時みたいだよね」

「あっちです、たぶん魔法陣が」


 ニコラくんが森の中を指差す。


「行ってみるか?」

「いや、やめた方がいい。深追いは禁物だよ」

「確かに。古代魔法陣があるとしたら、やつらが潜んでる可能性あるよ」

「そうだな……じゃあ、適当に食い止めて、逃げるか」


 前の馬車が先に出発して、私たちが食い止めることにする。

 最後は、オーグストがあたり一帯に範囲殲滅をかけて、馬車に飛び乗った。

 なんとか逃げ切れるか。


「ニコラくん、索敵で黒マントみたいなやつはいない?」

「そこまで強大な魔力は感じないですね」

「じゃあ、逃げ切れそうかな。国境も近いことだし」

「しっかし、やつら、あっちこっちに迷惑な魔法陣置いていきやがるなあ」


 しばらくニコラくんが索敵をかけていてくれたが、どうやら逃げ切れたようだ。

 魔物の気配がなくなったので、ほっと一息つく。

 国境はもうすぐだ。


「君たちは……本当に優秀なんだね。いろんなことをよく知っていて」

「まあ、最近色々あったもんな、俺ら」


 強くなったよね。みんな。

 ちょっと前は、骸骨騎士にもあんなに手間取ってたのに。

 私もちょっとだけ、強くなれたかな。

 


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