表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/192

ブリザードウルフ

 マルクとレアナが調子にのって角ラビをたくさん狩ってきたので、解体して串焼きにした。

 久しぶりの狩りで楽しかったらしい。

 最近デーモンタウロスみたいな強敵が多かったもんね。

 

 騎士団の人たちにも串焼きを持っていったら、すごく喜ばれた。

 魔導士で異空間収納を使える人がいて、その人が食料を運んでいるんだけど、保存食ばかりなんだそうだ。

 交代で見張りがあるし、戦わないといけないときもあるから、立ったままでも食べられるものばっかりなんだって。

 なんだか気の毒だ。


 異空間収納を使える人というのは、それだけでエリートで、仕事に困ることはないらしい。

 ニコラくんはなんとか習得しようと、魔導士の人にコツを教わっていた。

 ニコラくんが異空間収納使えるようになったら、助かるなあ。

 私もちょっとやり方を聞いてみたけど、全然意味不明だった。

 

 騎士団の人も周辺の森などを少し見回りしてたけど、特に凶悪なモンスターは見当たらなかったようだ。

 おかしなモンスターが増えていたのは、王都周辺だけだったんだろうか。

 家族と話したときにも、アデル村には特に変わったことはないとのことだった。

 

 夜になると、外は少し肌寒い。

 ヴァスティアン王国にはそれほど標高の高い山はないし、内陸の国だ。

 四季はあるけれど、雪が降ることはめったにない。

 暖かい季節と、少し寒い季節があるぐらいのものだ。


 私達は自分たちで持ってきたテントを張って、騎士団とは別に休むことにした。

 これも訓練だしね。

 騎士さんたちが見張りをしてくれるし、ずいぶん気楽な訓練だ。


 大きいテントに男子が3人。

 小さい方にレアナと私。

 この旅が始まってから、レアナとは寝る前にいろんな話をする。

 ほんとにレアナがいてくれてよかった。

 男ばっかりのパーティーだったら、こんなに楽しく過ごせなかったと思う。


 「起きろ! 敵襲だ!」


 騎士の声で飛び起きた。

 寝ぼけまなこで飛び出すと、森の近くで騎士団の人が戦っているようだ。

 なんか魔獣が出たのかな。


「うわ、デカい……」

「ブリザードウルフみたいだ。こんな平原に出るのは珍しいんだが」


 騎士団の人が、ブリザードウルフは普通高山地帯にいると説明してくれた。

 スキル持ちで、口から吹雪を吐く。

 下手したら凍らされてしまうので、迂闊には近寄れないそうだ。

 マリアナ正教国は山の多い国なので、めずらしくはないらしい。

 国境の山から降りてきたんだろうか。


「近づけないとなると、僕とルイーズさんは相性が悪いですね」

「そうなの?」

「たぶん、風系のスキルは使えないでしょう。僕の氷魔法も効果が薄いですが」


 だとすると、エヴァ先輩も相性悪いよね。

 氷紋剣使えないし。


 レアナとニコラくんが後方支援に向かった。

 ニコラくんは火魔法が得意ではないけれど、弱点克服中だと言う。


 こういう時、私はいつもちょっと自分にイライラする。

 火魔法も、氷魔法もうまく使えないし、かといってマルクみたいに必殺技もない。

 できることは、雷撃剣で相手を麻痺させることぐらいだけど、近寄れないんじゃ意味がない。

 マリアナにブリザードウルフが出るなら、必殺技がほしい。


 ふと思いつく。

 雷撃ってカミナリだよね?

 水分に電導するよね?

 ブリザードって水分じゃない?


 だったら、離れているところからも、狙えるんじゃないだろうか。

 高出力で雷を剣先から放出できたら。


 よし。試そう。

 じっとしていても仕方ない。

 騎士団の人たちに当たったらいけないので、ブリザードウルフの真横に回り込む。


 ブリザードウルフの周辺の木は、ブリザードで凍っている。

 狙いを定めるのに、ブリザードウルフのすぐ後ろにある高そうな木を目標にする。

 魔力を循環させて、雷撃剣を放つ瞬間の感覚を思い出す。


「雷撃っ!」


 剣の先からほとばしるように、稲光が飛んでいく。

 ズバーンと轟音とともに、大木に雷が落ちてまっぷたつになった。

 当たった!

 

 なんかすごい威力出たな、と思ったら、騎士団の人が全員唖然として私のほうを見ている。

 あれ? ブリザードウルフにも当たったかな?

 後ろの木を狙ったんだけど。


「一撃ですね……」

「一撃だったな……」


 騎士さんたちが確認して『討伐完了』と手をあげたので、みんな戻っていく。

 近寄ってみると脳天にカミナリが落ちて、頭が黒焦げになっていた。

 当たってよかったけど、これ、周囲に人がいるときは危ないよね……


 スキル『いかずち』ゲット。

 そういう名前のスキルだったんだ。

 

 でも、これ、使えそうだ。

 火属性とか氷属性の魔物にも関係なく使えるもんね。

 私は雷属性を極めるのがいいかも。

 

「もしかして、なんか面白いスキル覚えた?」


 エヴァ先輩が興味深そうにニコニコしながら近寄ってくる。


「いかづち、っていうスキルみたいなんですけど、こう剣の先からびゅっと……」

「おいおいおい! 危ねえだろっ」


 マルクに剣を奪い取られてしまった。

 うかつに再現したらダメだよね。反省。


「なるほど。雷撃剣って遠隔でも飛ばせるのか。ということは僕の氷紋剣も飛ばせるのかな」

「どうでしょう」

「氷紋 !」


 エヴァ先輩が剣を抜いて、びゅんっと振ると、剣先から青い光のようなものがほとばしって、飛んでいった。

 当たった木がピシピシと凍りはじめて、ガシャーンと音を立てて粉々になる。


「うわ、できた」

「すごいじゃないですか! 先輩!」


 エヴァ先輩も新スキルゲット。

 『アイスブレイク』だって。

 なんか格好いい。


 もしかして、勇者スキルって、剣の先から出すのが特徴なんだろうか。

 魔導士の杖みたいに。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ