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レアナと魔導士団

 転移メモの試作品ができた。

 素材はレアナといろいろ話し合ったんだけど、結局カード型にして、メモ帳のように綴じることに。

 燃えたり濡れたりする可能性があるので、学生証に使われているカード素材を使うことになった。

 結構な値段がしたけど、これからずっと使うものだしね。

 各カードの端に色をつけて、誰のカードかわかりやすいように工夫した。

 1ページ目は受信用の魔法陣。

 2ページ目から後ろは宛先の魔法陣だ。

 これを持ち歩いていれば、連絡のメモを受け取ったら自動的に受信のページに挟まっている。

 超便利。


 ニコラくんは、スワンソン先生と連名で、特許のようなものを申請するそうだ。

 私のアイデアだから、と申し訳無さそうだったけど、全然オッケー。

 作ったのはニコラくんだもの。

 スワンソン先生も、教師同士の連絡にさっそく取り入れるみたい。


「明日は騎士団休みだから、王宮にこない?」


 さっそくエヴァ先輩から連絡が届いた。

 この間使者の人がきたときに、転移メモは渡してある。

 すごく喜んでくれて、結構マメに連絡を送ってくれるようになった。


「明日、久しぶりにカフェに行かない?」


 今度はレアナだ。

 隣の部屋にいるのに、わざわざメモで送ってこなくてもいいのに。

 コンコン、とノックしてレアナの部屋へ行く。


「明日さあ。実はエヴァ先輩に王宮に来ないかって誘われてるんだ」

「もしかして……デートっ?」

「違う違う。一応訓練ってことで、いつでも来ていいって言われてるの」

「そっか。じゃあ、仕方ないね」

「レアも一緒に行く? たぶん騎士団の訓練所は、ふたりでも入れてもらえると思うよ。帰りにカフェに寄ったらいいじゃん」

「いいの? 行く行く! 行きたい!」

「待ってね、エヴァ先輩に聞いてみる」


 レアナが目を輝かせた。

 王宮に行くときは、エヴァ先輩が行き帰りの馬車を手配してくれる。

 あまりウロウロするなと言われてるけど、騎士団ならスワンソン先生も何も言わないよね。


 エヴァ先輩からはすぐに返事があって、OKだった。

 前回会ったときに、レアナが親友だということと、騎士だけど火魔法が使えることも話してある。

 

 

 翌日、王宮の正門に馬車がつくと、エヴァ先輩は迎えに来てくれた。

 レアナは初めての王宮で、目を輝かせている。


「よく来たね。キミがレアナちゃん?」

「えっは、はいっ! お招きいただいて、ありがとうございますっ!」


 レアナがぎこちない仕草で、ちょこん、と膝を折った。

 そうか。エヴァ先輩、貴族だっけ。

 正式な挨拶の仕方なんて、全然忘れてた。

 普通に日本人的なおじぎしてたよっ。


「あ、いいんだよ、そんなにかしこまらなくても。キミだって騎士なんでしょ? よろしくね」


 エヴァ先輩がキラッキラの笑顔で、握手の手を差し出す。

 レアナは顔が真っ赤だ。

 私は中身が普通の会社員だと知ってるけど、レアナにとっては貴族の王子様だよね。


「レアナちゃんが一緒に来るっていうから、魔導士団の知り合いに連絡を入れてあるんだ」

「ま、魔導士団ですか?」

「ルイちゃんに聞いたら、なかなか強力な火魔法持ってるんでしょ? 卒業後は魔導士団に入れるかもしれないよ?」


 なるほど。レアナは今のところただの騎士だから、王宮に入れる可能性はあっても、せいぜい侍女ぐらいにしかなれない。平民だしね。

 体格が小柄なレアナだったら、騎士団よりも魔導士団っていうのは、いい選択肢かも。


「先輩、ありがとうございます。あのう、私も魔法使えるんですけど、私が魔導士団っていうのはアリですか?」

「ああ、残念だけどルイちゃんはダメ。たぶん、自動的に第一騎士団所属だよ。僕もそうだったから」


 そうなのか。ちょっと残念。

 王国騎士団に就職したら、レアナとは別々になってしまうのかなあ。

 私は別に魔導士団でもいいのに。


 エヴァ先輩は騎士団の建物の一角にある、ドーム型の大きな訓練場に連れていってくれた。

 魔導士の訓練のため、建物自体が大きな結界になっていて、それでそんな形なんだって。

 入り口で少し待っていたら、中からスワンソン先生みたいな魔導士ローブを来た人が出てきた。

 エヴァ先輩より少し年上に見えるけど、イケメンだ……

 王子様がふたりになった!


「王国魔導士団、第一師団長のクロードと申します。見学したいという方は、あなたたちですか?」

「火魔法が使えるのは、そっちの子だよ」

「あ、あのあの、急に来てすみません。レアナ・オルゴットと申します」

「ということは、もう一人は例の聖騎士ですね?」

「そうです。ルイーズ・デイモントと申します」

「では、ついてきてください」


 エヴァ先輩と違って、口数の少ない物静かな人だ。

 無言で廊下を歩いて訓練場に出ると、そこでは多くの魔導士が魔法の練習をしていた。

 その中に、火魔法を練習しているグループがある。


「オルゴットさんが使えるのは火魔法だけですか? どんな種類を?」

「えっと、ファイアーボムとファイアーストームだけです」

「ファイアーストームを使えるのですか?」

「はい。あ、だけど2、3回ぐらいが限界なんですけど」

「まだ学園の1年生ですよね? そうですか」


 クロード師団長の目がキラッと光ったような気がする。

 口調は静かだけど、なんだか威圧感のある人だ。

 

「よければ、あのグループで訓練を受けていくといいでしょう。こちらに」


 有無を言わさずレアナは連れ去られてしまった。

 大丈夫かな?


「魔導師団は人手不足だからね。貴族以外の魔導士はたいていスカウトされるんだよ」

「レアナもその可能性が?」

「あるよ。キミと一緒にいるんだもの。だけどね、変な貴族に囲い込まれるぐらいなら、今のうちに師団長に紹介しておいた方がいいと思って。あの人は力があるから」

「先輩、ありがとうございます! レアナのために」

 

 おおお!エヴァ先輩、結構世渡り上手なタイプ?

 前世ではもしかして仕事のできる人だったんだろうか。

 エヴァ先輩と話していると、遠くでレアナがファイアーストームを放ったのが見えた。

 魔導士団の人たちから、どよめきがあがる。


「ふふっ。話には聞いていたけど、すごいじゃない。あれなら大丈夫だな」


 レアナの火魔法ってすごいのかな。

 友達が褒められてちょっとうれしい。

 

 エヴァ先輩が、レアナは師団長にまかせて、騎士団の訓練場に行こうと言う。

 第一騎士団は休みだから、訓練場に人は少ないんだって。

 レアナは帰りにまた迎えにくることになった。


「それにしても、コレ、優れものだねえ」


 ふと、ポケットから転移メモを取り出して、うれしそうなエヴァ先輩。

 前世ではメールという連絡方法があるのが当たり前だったので、この世界に来てから寂しかったそうだ。

 騎士団に入ってから、友達となかなか連絡がとれなくなったらしい。

 だから、1日に何回も連絡してきたりするのか。

 エヴァ先輩、寂しがりなんだろうか。



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